シブヤ大学
しごと課の授業

奈良ツーリズムのレポート(2)



◆1月8日(土)ーーーーーーーーーー
1月特有の凛と澄んだ空気に包まれて、奈良駅に集合。
「前日から観光してました~」という前乗りの方、
「ちょっと緊張しています!」という初参加の方、
「フォーラム参加3回目!」の着物の常連さんなどなど。
自己紹介を簡単に済ませて、会場となる奈良県立図書情報館へ。

フォーラムの進み方は、一方的に話を聞くのではなく
「自分にとってどうか」をしっかりと考えられるよう配慮されたものでした。
まず、配布された事前インタビューを読んで、何を感じたか参加者三人組で話し合う。
その後に、ゲストの話を聴く。
またさっきの三人組で話す時間がある。
西村さんがファシリテーターとして入り、ゲストとトークセッション。
今度はさっきと違う参加者、3人ないし2人で会話。
最後に会場からの質問や感想を取り入れながら、
会場全体へフィードバックしていくというもの。

ゲストが話すのは、仕事「論」ではなく、
・自分はどんな仕事をしてきたか
・その中で何を大切にしてきたか/しているか?という2点。
一般論ではなく、ゲストも参加者も「自分はこう思う」と話し、聴き、考える内容でした。

ここからは、ゲストの方の紹介と、私が心に残った言葉を簡単に紹介したいと思います。
「絶対こうすべきだ」と鵜呑みにするのでも、
「自分とは違う成功者の金言だ」と突っぱねるのでもなく、
フラットに、自分にとってどうなのかを考えてみてください。

言葉とともに少しでもあの場の空気感が伝わって、
読んでくださる方の気付きや刺激になれば幸いです。

09:30~12:00 広瀬 敏通(ホールアース自然学校創設者)

マイクを通さず話す声を大切にしているという広瀬さん。
インドに村を作ったり、洞窟へ探検に行ったり、川で3日間流されたり。
肉声で語られるお話はどれも面白く、
"人の判断ではなく自分の判断で動く"
広瀬さんならではのエピソードだと感じました。

「お金がなければ使わなければいい。
何かをするのにお金が必要だとは思わない。
自分という労働力があるし、行動すれば何かができる。」

「こだわりがないのがこだわり。決めた事を覚えていない。
その瞬間やりたい事をやってきた。3年後生きてるかわかんないんだから。」

「ミッションは後から作られる。
あらかじめ決めた物はあえて変えてみたい。」

「いい家庭、いい会社、いい学校に可能性がないと思っている。
自分自身に可能性がないと思うのなら、ドロップアウトしてみればいい。
それはとても魅力的なことだから。」

「思えば人がいないところを目指してきた。
有名どころには行っていない。
過疎地は居場所がある。
田舎は仕事ないっていうけど、そんなことはなく、
必要な事をやっていればいつの間にか仕事になる。
田舎は多業。とりあえず便利屋さんになってみればいい。」

「社会に対して世の中は変えられると思ってきたし、行動してきた。」


13:30~16:00 坂口 恭平(作家、建築家、 『0円ハウス』著者)

マイク一本で30分以上一気に話した坂口さん。
まるで一曲の音楽を聞いているような
なめらかに人を引き込む話の上手さと、独特の視点が印象的でした。
ゼロ塾をはじめ、ビジョンが多くの人に支持されるのは、
物事や人に対する関わり方が深く、
真剣だからなのではないかと感じました。

「普段と見ている景色を変えることを、レイヤーを変えるって呼んでいる。
たとえば、塀の上を歩く、しゃがむ。
109のしゃがんでるギャルたちも、
そういう風にして社会を見ているってことだろ」

「行動している人の言葉を信じる。
自分でやるって決めたことをやっている人を信じる。」

「正しくなくてもいい。カッコ悪いことはできないと思っている。
迷ったら、"お前それ、自伝に書けんの?"と自分に問う。
それに、偉い人の自伝とかだいたい10年は食えないんだから。
今食えなくても大丈夫。」

「江戸川乱歩を読んだとき、この人は小説家ではなく"空間家"だと思った。
空間で見ると、料理本も小説も同じ。
この人は画家っていわれているけれども、
本当は音楽家なんじゃないかって思う事がある。」

「inspiration is gift。
本を読んで受けたインスピレーションは先人からもらったもの。
先人たちから受け取ってきたギフトを、今度は自分が次の人に渡したい。
アイスホッケーみたいなもの。」

「ゼロ塾は自分からは教えないけど、徹底的に、厳密に聴く。
"あなたよりオレの方が本気だ"っていうのを伝えると、"あなた"はやめられない。
忘れない人はその人に対して緊張感を与える。」

「成功したいと思うから失敗する。
成功という概念はない。実現しかない。」

「スーパーマリオが好き。
コインをいくつ集めたとしても物を買えないところがいい。
100コインで1アップ。それって、もっと生きろってことだろ。」

「本当にやりたい人は、何を言われてもやめない。」

16:30~19:00 川口 有美子(アドボカシー、『逝かない身体』著者)

ALSの母の看病をきっかけとし、
病のパラダイムシフトを目指して活動している川口さん。
"自己実現"とは何か、"働く"とは何か、考えるきっかけになりました。
その人が居る事が働き、という言葉が印象的でした。

「息ができなくなって、口から物がたべられなくなったからといって、最期ではない。
終末期と言われて17年目の人が居る。
息ができなくても、呼吸器をつけて生きている人が居る。」

「病気になったら、家族が介護すべき?
自律(自立)できない人は施設で暮らすしかない?
寝たきりでは働けない?
そういった、常識や通説に対し、
ナラティブの書き換えを行っていきたい。」

「哲学や社会学の本をたくさん読んだ。
"生きる意味"とかではない。
呼吸器をつけてまで生きているのは、
自分が勝手にかわいそうだと思っていただけ。
考え方を変えたら顔の赤らみとか、非言語コミュニケーションから
気持ちや体調を受信できるようになってきた。」

「病気になったからって不幸ではない。
家族の中での自分、地域の中での自分。
病気の人であっても、そのひとの働きがある。
例えば、その人がいるおかげで地域の医療制度が見直されたり。
それはまるで転職のようにとらえる事ができる。」

「稼ぎが伴う働きと、稼ぎが伴わない働き。
"仕事"には二つあるように思う。
その人が居ることで、その場が上手く回ったりする。それも働き。」

「ALS患者の家族に、情報はできる限り提供する。
それから選択してほしい。
悪い情報ばかりでなく、いい情報も与えたいと思っている。」

「呼吸器をつけてあげないという選択は、
その人を殺してしまう事になる。
つけてあげたら、
15分おきにタンの吸い上げをしなければいけなくて、24時間介護に。
どっちにしても家族に傷がのこる。
だったら、社会化してしまう。
仕事としてヘルパーを雇う。」

「自己実現とは何か。
自分の願いを実現するのではなく、何かが自然と現れてくるもの。
仕事が無いではなく、自分が何かをはじめれば仕事になる。
自己実現できないと自分を苦しめるのは、自分の思考。」

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この日は、奈良だからこそ食べられる食事を、昼・夜みんなで楽しみました。
お昼は、やさしい味付けの「うとうと」のお弁当。
出し巻き卵やお漬け物がとても美味しかったです。
(うとうとのお店にお邪魔すると、芸術家の野村さんご夫婦が長屋の一室でお迎えしてくれるそう。昼食・夕食、各一日一組限定だそうです。)

夜は「玄」のお蕎麦を堪能しながら、
ならまちで地域活性局という会社を経営している藤丸さんのお話や、店主、おかみさんのお話をお伺いしました。
自家製粉とのことで、
蕎麦がき、蕎麦豆腐、そば湯まで、とても風味豊か。
極細打ちの田舎そば・せいろ蕎麦の食べ比べもでき、とても贅沢な時間を過ごせました。
老舗ならではの趣ある店内や、作り込まれたお庭も素敵で、
みんな思わず写真を撮りながら帰路につきました。


→レポート(3)へ続く