シブヤ大学
街の先輩訪問街の先輩訪問レポート

街の先輩訪問レポート4(寺井 元一)


先輩:寺井元一さん
訪問者:高橋一巴
訪問日:2009年12月26日
訪問内容:一日同行


寺井さんにぶつけてみよう
次世代のクリエータが社会で活躍できる場を作りたい。でもそれを事業化する必要があるのだろうかと悩んでいた最中に、街の先輩訪問という企画を目にし、応募することになりました。

AM10:30 KOMPOSITIONの事務所訪問@KOMPOSITION事務所
寺井さんが小仕事をされた後、KOMPOSITIONの経緯について伺った。
現在のKOMPOSITIONは、ルーチンのタスク量や固定費など、非常にミニマムな運営状況になっているという。このシンプルな状態になるには、紆余曲折があった。KOMPOSITONもかつては、スタッフを雇用していた。しかし、ルーチン業務をこなすだけの組織になりがちだという問題を抱えていた。そこでプロジェクトが集まり、それぞれが稼働する形態になったという。

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PM12:00 オーシャナイズ(タダコピ)の太田さんとのランチ@WIRED CAFÉ 360°
話す場を設けるのは初めてである太田さんとのランチに同行した。ここでは、太田さん、寺井さん各々の未来について盛り上がった。世界中にネットワークを持って、場所で制限されることなく誰かのために役立つことをしたいといった話や宮古島の独立運動をしたいといった話という話が出てきた。異なる世代のビジョンについても耳を傾けることを怠らない寺井さんの姿勢を垣間見ることができた。

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PM2:00 MAGNETICS打ち合わせ(開始30分前)@SunshineStudio
「何話しましょう?」という言葉で始まった打ち合わせ。ホストのUNPLUGの吉岡さんとアークウェブの中野さんと共にネタ出しを始めた。景気、東洋経済、働き方、ソーシャルメディア等それぞれの思う所がある言葉を挙げて、簡単な流れをおさらいして終了。気づけば会場は、お客さんでいっぱいになっていた。

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PM3:00 MAGNETICS meet up 4good! @SunshineStudio
初仕事として、私は突如事業紹介の司会を任された。ぎこちなくスピーカーにマイクを手渡し、そのマイクのコードを解く傍ら、R水素から保育園のコンサルティングまで幅広い事業の話を聞くことができた。
MAGNETICSは、はじめは砂鉄のようにバラバラと「ゆるい感じ」でスタートし、同じ関心を持つ人が、まさに磁石のように強固になって何かプロジェクトが生まれる場であった。主催者の寺井さんも、事業構想で必要なアイデアや人が自然に集まってくる場となってよかったと満足されていた。

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PM6:00 移動中
移動の合間に、寺井さんにぶつけたい質問であった「事業化すること」について伺うことができた。
KOMPOSITIONも同じ壁に当ってきたそうで、とても理解を示してくださった。事業は、徹底的にシビア、シンプル、エゴを追求することだという。誰でも歓迎ではなく、従事してくれる人材を厳選しなければならない。そして、事業として利益を出せるようなビジネスサイクルを生み出すことも求められる。一方で、自分が納得いく形になれば事業化しない選択もある。本当に事業化するのかどうか、仲間と決めることが必要なのではというアドバイスをいただいた。

PM7:00 コピーライター主催忘年会@渋谷区某所
寺井さんネットワークとしてフリーのコピーライターさん主催の忘年会へ向かった。
動けないほどの人で、目の前にいる方(全員初対面)に声をかけては話が盛り上がるといった、とても不思議な空間だった。しかしそこにいた誰もが、「自分の好きでやりたいことに向かって突き進む」姿勢を持たれていた。
ここでは、寺井さんの現在取り組まれるマチヅ・クリエイティブの背景を知ることができた。
これまでのKOMPOSITIONでもクリエータとイベントを開催してきた。しかし、単発イベントをやってもクリエータは食べてはいけない。彼らが貧しくてもお金を出す先は、食べ物や家。つまり生活の場を支えなくては、クリエータを支援することにならない。そこで生まれたのが、マチヅ・クリエイティブでの不動産事業である。松戸市を選んだ理由は、タイミング。コンサルタントも交えて街全体が興奮状態の時は入らずに、街に活気が薄れ始めた時にコミットする。こうした細かい状況の変化を察知することも重要なのだという。

PM10:00 流れ解散
寺井さんについて回ることが不可能なほど、会場がカオス状態になった頃、「先に帰りますね、楽しんで!」と言って寺井さんは会場を後にされた。

1日を通して
常に誰かを訪問して話をしていたので、街の先輩である「寺井さんを訪問した」感覚はありませんでした。しかし、同じ空間やネットワークを通して起業家としての寺井さんから多くを学びました。そこで行きついた結論は、「自分」が何をしたいのかということです。
徹底して、自分のやりたい事を考え抜くことで人は賛同して事業が進んでいくのだと思いました。そしてできるだけ多くの人に会って、思いやビジョンを伝える。この地道とも思える行動が、事業を生む最大の仕掛けだったのだと気づかされました。今回は寺井さんご自身がこうしたいと熱く語られる場面はそれほど多くありませんでした。しかし寺井さんのネットワークで出会った方々は、聞き手が事業の展開を鮮明に描けるほど明確なビジョンを持たれていました。誰とどうつながってどこで事業を進めていくのかについて考え抜かれていることが伝わってきました。
寺井さんがされている仕事は、形があるものではない分、人やアイデア勝負だったりします。またやり方も大企業のように定まっているわけではなく、信じられるのは自分の経験と感覚で、それらをもとに意思決定をしていく。正直とてもリスクの高い仕事だと感じました。でもだからこそ、他の人が何に興味・関心を持っているのかを常にインプットして外の感覚をたたき込む事が大事で、寺井さんはどんな世代や分野の人でも耳を傾けて常に事業の種・仲間を探す場を自ら作り、出向くのだと思いました。
そして何より寺井さんの姿勢には、人やアイデアを引きつける力があるのだと1日を通して見えてきました。決して相手を押しのけることはないが、自己主張はしっかりする。また勢いに乗ってくれる一方で、堅実に取捨選択する姿勢を持ち合わせている。こうした姿勢が結果として、会う人会う人が「これやりましょうよ」と話を持ちかけてくるのだと思いました。事業化する上で、どう自分が関わることが巻き込む人々にとってベストなのかを意識することは事業の成否を分ける要素だということを学びました。
1日訪問で学んだことをもとに、「自分」のやりたいことを突き詰め、事業化に踏み出すならば的確なタイミングとスタンスを見極めて仕事に取り組んでいきたいと思います。
本当にありがとうございました。