シブヤ大学
しごと課の授業

奈良ツーリズムのレポート(4)



◆1月10日(月・祝)ーーーーー

あっという間に最終日。
授業が終わった後も、色々考え事をして眠れなかったという人も。
(かくいう私もノートに向かってもんもんと書き物をし、すっかり寝不足)
ちょっと早めに会場に到着して、
昨年のゲスト隅岡樹里さんの朝カフェを楽しんだり、
壁に張り出してあるゲストへのコメントを読んだり、
2階にある図書館で本を探してみたり・・・
思い思いの時間をすごしつつ、3日目がスタート。


09:30~12:00 皆川 明(ミナ ペルホネン代表、デザイナー)

陸上部での体験や魚市場のアルバイトで学んだ
忍耐強さ、長期的な目線、素材へのこだわり...
皆川さんの生き方=作るものという一貫性を感じました。
陸上や魚のたとえ話がユニークでわかりやすく、会場にはよく笑い声が。
"ブランドを所有しない"という姿勢は、
今だけを見たら謙虚で、
人生全体で見たらとても欲張りなのかもしれないと思いました。

「不器用さや覚えの悪さが今は自慢。
すぐにできないから飽きずに一生できるかもと思った。
学生時代は、お金を貯めたら旅行に行っていて、気がついたら除籍になっていた。
課題はできずに、あわよくば友達が作ってくれないかなと思っていた。
やめちゃえば?と言われていたけれど、
まだ2、3年しかやってないからなあと思っていた。」

「自分の考えは魚市場で得た。
仕入れと技術は一貫している。
素材選びが物作りのスタート。」

「自分が仕事をやる意味を考えたとき、
価値が下がらない物を作っていきたいと思った。
セールに疑問を持っていた。
4ヶ月たったら価値が半分に下がってしまうものって?
そもそも発信者側が、半分の価値の物しか作ってないんじゃないか?
変わらない価値としてやっていきたい。」

「簡単に手に入る物は、簡単に捨てられる。
着る人が違うがわかるうちは、素材にこだわる価値がある。
高くても毎日ヘビーローテーションしてもらっても大丈夫な物をつくる。」

「一人の人生だけで完成しない物を作りたい。
そう考えると嬉しいし、自分の人生の時間は短い。
だからメールは使わない。図案も文字も感情も書ける
自分のよさ、自分の持ち時間に対して一番いいものを選んでやっていく。」

「頭の中で描く着地点に対して到達するまでの時間が足りない。
うなぎのタレみたいな感じで、継ぎ足し、継ぎ足しやっていきたい。
最初にせめて100年と決めた。
ブランドに価値があるとしたら、経験値の蓄積とシナプス同士のようなつながり。
規模は大きくなくていいから深めたい。
大木になるより、細いけど年輪が詰まっていて
堅くて倒れない木みたいなブランドをつくりたい。」

「ひとつ出した物が、長く価値を持っている。
一回の大量生産ではなくて、時間をかけて、結果として大量生産になる。
そうすれば、多くの人に届けることができると思っている。」

「自分で話すときミナに入った頃は・・・という話し方。
自分の為に働いてもらっている訳ではない。
ミナ ペルホネンの為にみんなが働いている。」


13:30~16:00 伊藤 ガビン(編集者、ディレクター)

「ガビンさん、まじめにやってください。」
「わかりづらいです。」と西村さんに突っ込まれつつ、
掛け合いが面白かったガビンさん。
"マイ・ファーストチェーンソー"などの展示物をはじめ
CDのジャケットやパラッパラッパーなど制作物を
紹介しながらお話は進みました。
ご自身では"あまのじゃく"だとおっしゃっていましたが、
社会の事象や常識をひとつひとつ自分の目線で見て
編集しなおしているともとれる発言に
私は逆にものすごくまじめな方なんじゃないかと思いました。
(個人的には、一番共感できる方でした笑)

「3分間で飽きて捨てられるものが好き。
ずっと新しいことをしていたいし、
自分も飽きてしまう。」

「まちがい発注が多い。
自分ができることじゃ無い物が降り掛かってきて
でもそれが面白かったりする。」

「"履歴書に一行増える仕事"じゃないと、
何もしてなかったことになる。
どんなにそうでない仕事が面白くても。
雑誌のライターってたくさん書いても、
書籍になるまでは履歴書に書ける仕事にならない。
おもしろいライターでも本が出ない人っていますよね。
僕はそういう人に影響を受けてきました。」

「新しい"ジャンル"を作りたい。
たとえば、パラッパラッパーだと音ゲーとか。
そうすれば社会的に楽しめる。
自分が神様だったら、新しい味覚を作りたい。
そうすれば、料理の数が増える。」

「答えが知りたいわけじゃない。
答えが無い事を考えるのが好きだし、矛盾が大好き。」

「たとえば、"生きている価値はない"っていう設定で生きている。
自分が生きることに意味は無いけど、
その上でどう生きるのかっていう問題提起の方が楽しい。」

「アンバランスを保ち続けていたい。
どこから見ても"他のジャンルの人"。」

16:00~乾さん×西村さん

今回が最終回という事で、
この企画を西村さんにオファーした図書館職員の乾さんと
西村さんのお話が少しだけ設けられました。

「こう働こう、じゃなく触発するものを発信していく。
皆の中にそれぞれの答えがある。
それをみつけて貰えたら嬉しいです。」と乾さん。

「こういったイベントを通して
いちばん大事だなと思ったのは、温かい場をつくること。
冬寒いとき、人はちじこまってしまうけど
温まったら、動き出す事ができる。
ひとりひとりは小さいけれど、集まればあったかくなる。
ぜひみなさんが動き出して、新しい場を作っていってください。」と西村さん。


ゲストの生き方や働き方は、
それぞれに一本芯が通った見事さがあり、
涙がでそうになることもしばしばありました。

最初はさぐりさぐりだった
まわりの人たちとの会話も、回を増すごとに白熱して、
様々な発見があったり、感動したりしました。

すこし日常から距離をおいた奈良で、
温かな会場の空気に身をゆだねた三日間。
身体にも心にも栄養を補給する、大切な時間でした。

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東京に帰ってきて1週間がたちました。
毎日は慌ただしくて、あの3日間は、
まるで遠い夢のようです。

今回の授業を通して
自分なりに考え続けている事が3つあります。

◎自分を知り、自分なりのロジックを確立する。
何をしたら自分は満足なのか。
自分は何が得意で何が不得意なのか。

◎社会通説を鵜呑みにせず、自分で見て・聴いて・触れて判断する。
常識を鵜呑みにしない。
評論家にならず自分で体験して判断する。

◎アクションを起こし、言動や行動に責任・覚悟を持つ。
ビジョンを持ち、それを実行に移している。
自己決定権を持っている。

この文章を読んでくださったあなたは、
何を思いましたか?

働くとは、なにか。
こうすればいいとか、
こうしたら誰々がこう思ってくれるとか、
全く関係ないところで。
ちょっと立ち止まって、「自分の仕事」について考える。
そんな貴い時間を、是非持ってみてください。

文責/花輪むつ美