シブヤ大学

授業レポート

2009/5/27 UP

      

「外国人が、部屋を借りにきたらどうする?」

シブ大で投げかけられる質問は、いつも唐突な感じがします。
だけどそれは、私たちの身の回りではなかなか見えてこないけど、毎日、どこかでアタリマエのように投げかけらている疑問なのでしょう。

今日の先生は、外国人専門不動産仲介をしている、トランスボーダーズの田中佐紀子先生と早稲田大学の留学センターで働く安永修章先生。
「不動産仲介」と、「大学運営」という2つの切り口から、外国人と、日本、渋谷、シブヤ大学、これらのつながりを考えていく授業でした。

<第一部:日本における外国人への不動産仲介の現状~外国人が部屋を借りにきたらどうする?~>
さて、冒頭の質問からはじまった、疑似体験。
グループに分かれてのロールプレイングでは、さまざまなシチュエーションが用意され、部屋を貸したい大家さんと、部屋を借りたい外国人の方の役に、それぞれがわかれて、話し合いを始めます。

【ケース例】
<大家さん役>
ひとりで暮らしている70歳、女性。日本語しか話せない。
自宅の2階を貸しており、空き部屋が3部屋ある。外国の方の居住は今までにない。今借りている他の方々は、すべて社会人。賃料6万、共益費3千円で貸したい。
<外国の方役>
20歳の留学生。チュニジア出身、アラビア語、フランス語、英語を話せますが、
日本語はまだ挨拶程度しか話せない。日本が大好き。
両親の仕送りで日本へ来て、生活する。アルバイトはしていない。「就学」ビザを保有。
賃料は5万くらいがよかったが、アクセスがいいので6万3千円でもオッケー。学校が連帯保証人になってくれる。

このような場合、どうなるでしょうか?

試行錯誤しながら、どんな不安があるか、どんな疑問がでるか、お互いに話し合いをはじめる生徒さんたち。スタッフ側では予想しなかった疑問が次々と出てきたりもして、みんな初対面とは思えないくらい話し合いはひとしきり盛り上がりつつ、どんどん興味深い話し合いに発展していきました。

平成19年末で、日本の外国人登録者は215万2,973人と、過去最高を記録。
ここ数年で、日本の行政では、観光や留学、雇用などの側面から外国人の誘致が奨励されてきました。
例えば2010年までに訪日外国人を1,000万人に、という観光庁の政策目標。
留学生30万人計画という福田内閣総理大臣の施策方針など・・・。
「グローバル化」は、行政でさんざんうたわれています。

政策上、外国人が日本を訪れること、日本で勉強すること、日本で働くこと、日本で暮らすこと。それらを一挙に推奨する宣言や目標などが掲げられる一方で、「不動産仲介」という、「外国人が日本で暮らす」ための第一の現場が、その流れについていけないというのが現状。
連帯保証人の問題、言語の問題、外国人は門前払いされることがある、など・・・。現状、外国人を全面的に歓迎するような環境はほとんどありません。

先生が外国人登録証やビザの読み方を細かく説明すると、教室から「へぇ~」という声がもれます私が大家さんの立場であって、今まで、そう目にしたこともない証明書を差し出され、自分の資産である家を借りたいといわれたらどう思うだろう?そんな驚きと同時に、その疑問は常に生徒さんたちの心のどこかにもあったかもしれません.

<第二部:高等教育市場の国際化~早稲田大学を事例として~>

世界的に競争が激しくなる昨今、さて、大学の国際競争力とはなんだろう?
その最前線をいく早稲田大学には、現在あわせて約89カ国からの留学生がいます。その81,5%がアジアの国からきています。
ところが一方で、早稲田から留学派遣をする人の割合は、北米/ヨーロッパがあわせて80%近くを占めます。
受け入れはアジア寄り、日本から渡るのはヨーロッパ/アメリカ寄り。
さまざまな偏りがある中で、早稲田大学は、欧米の著名大学と連携したり、アジアにおいての地位を確立するなど、エリートだけではなく、さまざまな立場の人にも来てもらえる大学を目指しています。

「そもそも、『グローバル化』が死後消滅することが一つの到達点」と、安永先生は言います。グローバルが当たり前な状態まで引き上げたい。だけど今はまだ制度も、人もついていけてないのが現状。
その後、シブヤ大学の国際化を考えるという時間では、シブヤ大学ももっと、外国人の方々を受け入れる授業を増やし、環境を整えていくべき、という声が多く挙がりました。
シブヤ大学には、さらに広がる余地がまだまだありそうです。わくわくしますね!
ちなみにシブヤ大学には英語版のページがあります。これもシブヤ大学の国際化に向けての大きな一歩となるのかもしれません。
短い時間で二つのテーマとなかなか忙しい内容ではありましたが、
生徒さんたちは、日本語学校の先生や、在日の方に仕事を仲介する職業の方等...外国の方とのつながりがある職業の方であったり、学生さんであったり。幅広い年齢層ながら、息つく間もない濃厚な授業に、みなさん本当に熱心です。質疑応答の時間は絶え間なく手が挙がる、熱気ムンムンの授業なのでした。

さて、皆さんへの宿題です。

『「国際化」ってそもそもなんなのでしょう?』

さあ答えがわかった人、手を挙げてくださいね。


(ボランティアスタッフ 天野 咲耶)


【参加者インタビュー】
お名前:シラカワさん

-Q.シブヤ大学にはどのくらい参加してますか?
-A.5回目くらいです。その時々で、興味のある授業を見つけたら参加しています。

-Q.この授業に出たいと思ったきっかけはなんですか?
-A.授業のテーマが、自分の考えたことのなかったことだったので、どういうものか興味がわきました。日頃考えようと思ったこともなかったことを知れるのがシブヤ大学の魅力だと思います。

-Q.今日の授業はどうでしたか?
-A.事前のホームページでの告知と少し違う内容だったかなと思いました。一つのテーマにしぼられていたほうがゆっくり聞けた気がします。
でも日本での外国人の方々の生活事情など、とても興味深くて、面白かったです。