シブヤ大学

授業レポート

2007/10/15 UP

           

『全ての映画に音声解説をつけたいわ♪』をモットーに活動中の松田高加子先生の授業。
シブヤ大学での授業は2回目。
今回はワークショップを行いながらの“ゼミ形式”です。
まずは5~6人でグループをつくり、授業の開始を待ちます。

松田先生の自己紹介と音声解説とは何かというお話からスタート。
晴眼者(目の見える人)が映画をみるとき、洋画だったら字幕や吹き替えがつくのはいまや当然のこと。じゃあ、目の見えない人が映画をみたい時にはどうするのか・・。
そこで登場するのが音声解説。音声解説とは視覚障がい者のために字幕の役割をするもの。音声解説は場面の天気・風景、登場人物の表情・動作、また場面転換がおこったことも伝えます。

今回のゼミでは実際に音声解説の台本をつくって、ナレーションをつけるところまで行います。そのナレーションをつけてくださるのが、松田先生と一緒に「子ぎつねヘレン」の音声解説製作に関わっている堀内里美先生。堀内先生はナレーターと音声解説台本執筆の両方をこなす映画人。

ワークショップに先立ち、映画鑑賞。しかし、今日は目を閉じて映画をみます。(作品は「子ぎつねヘレン」)

1回目:目を閉じる+音声解説なし
映画を“聴く”。いつもならスクリーンを食い入るようにみつめるけれど、今日は反対に目をそらす。みんな下をむきながら、聴くことに集中している。

2回目:目を閉じる+音声解説あり
情報量が圧倒的に多い。音声解説が加わることにより風景や人物の動きがぐっと想像しやすくなる。松田先生「聞こえる音の説明よりも、みえない表情の説明をすることが大事。」

3回目:目を開いて鑑賞
目を閉じてるときの想像とは少し違う映像にとまどいながら、こういうことかぁと納得。視覚に頼りながら映画をみているのだなぁとあらためて実感。

次に、松田先生は音声解説をつける上でのアドバイスを教えてくれました。

・主人公の説明(年、身長、など)をする。
・「視覚障がいの人に“見る”という言葉や色の説明をしちゃいけない」なんてことはない。
・最終的にナレーションをつけることを念頭において。
・音声解説に正解は(まだ)ない。→音声解説は現在も発展中!!

さらに、大事なことを2つ。

・ 映画をいじりまわさないで、あるがままを伝える。
・ 主観をいれすぎない。例)「キレイな花畑」→「たくさんの赤い花がある花畑」

「視覚障がい者と晴眼者が同じ映画をみることで近づけて、さらにお互いの映画のみかたや感じ方に発見があったらいい。」この言葉に、松田先生の思いがつまっているのではないでしょうか。

いよいよワークショップの時間。各自で解説を考えながら、グループでひとつの原稿にまとめていきます。活動すること15分。最初は口数が少ないのはあたりまえ。ゆっくりと打ち解けていきます。
次のシーンの音声解説制作へとうつろうとするものの、西日がさしこみスクリーン上の映像がほとんどみえない状態に・・。松田先生が臨機応変に機転をきかせ、最初のシーンの完成に残りの時間を費やすことになりました。この提案には生徒さんも納得の様子。ナレーション完成のために一致団結して作業に取り組みます。

それぞれのグループの音声解説を提出したあとに、先生たちの制作したお手本を拝聴&拝見。
教室内に「おーーーーー」の声。感嘆、納得、驚嘆、ちょっとした悔しさ・・。やはり、プロのお仕事。さすがです。「子ぎつねヘレン」のDVDをみると先生たちの音声解説がきけます!!

次に生徒さんの作品の発表。プロの堀内先生が即座にナレーションをつけてくれる。出来栄えのよさに、「すごい!職を失いそう!(笑)」と先生たちは顔を見合わせます。そして各チームにコメントをくれました。

そして、授業最後の松田先生の言葉。「音声解説って最新作につかないんです。視覚障がいの人の見たい気持ちに環境がおいついてない現状です。」この現状を打破するべく、このゼミが発足したといっても過言ではありません!!ゼミ生のみなさん、映画公開の日を楽しみにしてますよー!!

<オマケ>
松田先生の立ち上げた“虹とねいろプロジェクト”についてのご紹介。

「音色。音は見えないけど色がある 。
虹。色は見えるけど実体はない 。

見える見えないの壁。映画を通して取っ払えたら
映画が好きでよかったぁ、と思えるかと。」
松田先生の活動を通」して、映画を大切に思う人の輪がどんどん広がりますように!!

(ボランティアスタッフ 秋山恵子)

【参加者インタビュー】
坂本美和さん(女性・学生)
「映画が好きだったので参加しました。映画館でのアルバイトをしていて、音声解説付きの映画があることを知りました。そうしたらシブヤ大学のHPで音声解説という言葉をみつけたんです。今後もできれば、ゼミに参加したいと思ってます。」