シブヤ大学

授業レポート

2013/1/8 UP

子どもたちと弁護士のお芝居から教育虐待を考える。

今回の授業の先生は、篠原芳宏弁護士。
2009年より子どもたちと弁護士でつくるお芝居「もがれた翼」の活動に参加していらっしゃいます。
 「もがれた翼」は、東京弁護士会の弁護士の方々と、公募で集まった中・高・大学生が役者やスタッフとして出演・参加している演劇イベントであり、1994年から毎年上演を重ねて今年で19回目。

授業では、今年上演されたお芝居「もがれた翼Part.19『教育虐待~僕は、あなたのために勉強するんじゃない~』」の映像を鑑賞した後、感想をシェアするとともに、お芝居のテーマである「教育虐待」の原因について教えていただきました。


まずはお芝居の鑑賞。
お芝居では、主人公であるふたりの高校生が、過剰な競争教育の中、
学校や家庭で、プレッシャーに耐えながらもがき苦しむ姿と、彼らを取り巻く様々な大人たちの姿が描かれています。

母親の期待に応えようと必死に勉強する高校生と、彼にプレッシャーを与え続ける母親。
アルバイトで家庭の生計を支えながら定時制に通う高校生と、働き詰めで余裕がなく、放任主義の母親。
そして、父親や祖母、教師、他の生徒とその親たち。

ふたりの高校生は、それぞれ「我慢をこえた教育を押し付けられる」、「家庭の事情や経済的な理由によって学ぶ権利が脅かされる」という「教育虐待」を受けて、もがき苦しんだ結果、子どもシェルター(※)へ。

そこで、弁護士やシェルター職員と共に、今後の進路について考え、
自ら将来を切り開いていくこととなるのです。
「身体的な暴力」でもなく「ネグレクト」でもない、教育を通した「虐待」がどのようなものなのか、
このお芝居を観て初めて知ることができました。


(※子どもシェルター…家庭での親子関係のこじれや虐待によって安全に暮らすことが出来なくなった子どもの一時避難所。)


次に感想のシェア。
お芝居の感想と、登場人物の中で誰が一番印象に残ったかを、参加者同士でシェアしました。

一番多かったのは、「息子の将来を考えるがゆえに過度なプレッシャーを与えてしまう母親」。
息子の将来を考えるが故に激しい言葉で彼を追い立てる母親は、実は、自分も母親から、孫をしっかり育てるようプレッシャーを受けて苦しんでいる―その姿は、確かにとても印象的でした。

また、母親からのプレッシャーに苦しむ主人公が印象に残ったという声も多くありました。
もしかしたら、程度の差はあるにせよ、同じような経験をした方がいらっしゃったのかもしれません。
 

最後に「教育虐待」の原因について。
過度な競争主義的教育、教員統制の強化、教育内容への介入によって、
生徒たちの学びの場である学校がプレッシャーを受け、教師がプレッシャーを受け、
そして子どもや親がプレッシャーを受ける―このような教育システムが、「教育虐待」を引き起こす原因と考えられているそうです。


個人的な感想ですが、このような教育システムについて、教育を行う側である教師の方々がどのように考えているのか、ぜひ聞いてみたいと思いました。


今回の授業は、「教育虐待」について知るとともに、
「家族との関係について」、「子どもとの関係について」、そして「教育について」、改めて考えてみる貴重な機会となりました。



(ボランティアスタッフ  柏 菜穂子)