シブヤ大学

授業レポート

2012/10/5 UP

SHIBUYA CAMP ~代々木公園に泊まって、本気の避難訓練をしよう~



2013/11/16(土)〜17(日)のシブヤキャンプの
詳細・お申込は以下のページとなります。

http://www.shibuya-univ.net/class/detail.php?id=921


皆さん、本気で避難訓練をしたことがあるでしょうか? 毎年の恒例行事になっていませんか?
本授業は、これまでシブヤ大学で展開してきた授業の中で1、2 を争う過酷な授業となりました。
なぜなら、「本気すぎる」からです。

渋谷で終電を逃しても、24時間営業のお店はいくらでもあって、公園で野宿する必要はありません。
今回、代々木公園で一夜過ごした理由は、避難訓練です。
仕事で、買い物で渋谷に来ているときに大地震に見舞われたら、どのように行動しますか?
昼間と、夜と、早朝、危険だと思われる時間帯、場所をあえて選び、
どういう道を通ったら地震が起きた時、無事に代々木公園まで戻ることができるかを調査しました。
どんな人たちが多いか、割れるであろうガラスの散らかり方、道の明るさなどを予想しながら、
安全に代々木公園までたどり着く経路を設定しました。
また、水や食料を購入できるお店を通るように経路を設定する、
この点も経路設定の難易度を上げる要因の一つでした。

テントを張って、NHK ホール前に宿泊。
深夜になっても人通りは絶えることなく、近くで朝まで酔っ払って騒いでいる人もいました。
また、同じテントに眠るのは今日会ったばかりの人。
さらに、就寝時に何かあったときを想定し、
夜が明けるまでの時間を割り振って各班で必ず起きている人を作りました。
疲れていても、ゆっくり寝られる環境ではありません。
そうまさに、この状況は避難所の環境を模したものです。
プライバシーもなく知らない人に囲まれて、体育館に詰め込まれる。
夜は眠ろうにも、話し声や泣き声で眠れない。
ほかにも、避難所ではあらゆる「不公平感」を受け入れなければなりません。
自分が生き延びるために、誰かを守るために、ボディガードになる。
この方法を学んだ、貴重な2日間となりました。                  


【授業メモ】


1. 被災時の8 原則
 1) 自分の安全が最優先
 2) 休みをとる
 3) ただし、リラックスしない
 4) 使えるものを必要なだけもつ
 5) 使うことのできない(壊れている、使い方がわからない) 道具は持たない*1
 6) 間違った行動をとらない*2
 7) 不快表現を抑える
 8) いい加減な調査をしない*3

 *1: 例として、市販の非常持ち出し袋に入っている、保温に使うエマージェンシーシート。
    使ったことがあるか? このシートは小さく折りたたまれてビニール袋に入っている。
    湿気を帯びやすく、ビニール袋に入れたままだとくっついて、広げようとすると破けることが多い。
 *2: 被災時などひどくストレスがかかった状態では、
    普段では考えられないような奇妙な行動をとってしまうことがある。
    自分がこういった行動をとらないようにするのはもちろんのこと、
    そういった行動をとってしまう人に対しては、理解してあげることが必要。
 *3: 携帯の電源は切ってしまうくらいの気持ちでよい。
    ネットの情報は悪意がなくとも、真実かどうかは分からない。自分で見て、判断したものを信じる。

2. サバイバル3 原則
 1) 体力温存
 2) 体温を保つ
 3) 水分の補給

3. 被災時 (主に地震) の視点
 1) 不安要素を掘り出しすぎない
 2) パニックに巻き込まれる要素*1 を可能な限り見極める
 3) 情報に対してフィルターを持つ*2
 4) 近くに倒れてくるものはないか
 5) ゼロリスクがないことを受け入れる*3

 *1: 被災時に自分がどういった人と居合わせるかも大きなポイントになる。
    あくまで第一はセルフレスキューの視点でみてみると、、、
    ・外国人の方
      地震の経験が少ない場合が多く、パニックを起こしやすい傾向にあると言われる。
    ・小さい子供をつれた母親
      子供を守るために殺気立ったり、子供がけがをした際にパニックを起こすことも。
    ・ヒール、サンダルを履いた人
      割れたガラスで足を怪我をしやすく、そのせいでパニックになりやすい。
 *2: 「~だろう」はあてにしない。 またそういう情報を自分が発信しない。
 *3: どういった選択をしても、必ずリスクは残る。 選択するときはリスクが小さいほうを選ぶ。

4. ケーススタディ 屋内での被災
 1) 入口 (何でできているか、自動ドアか否か)
   百貨店、デパートの入口は、責任が不明確で、担当者が開けない場合も多い。
 2) 安全な場所を探す
   自分が行ったことのある場所から安全な場所を選ぶ。 行ったことのない場所に行こうとしない。
 3) 自分の今いる場所を正確に判断する
   フロアマップなどを活用する。
   目印を見つける。
 4) 避難口を探し、開くかどうかを確認する
   防犯上、避難口の鍵を開けていないところも多い (映画館など)。
 5) 消火設備の場所を確認する
   自分のいる場所の上にスプリンクラーがあったら、水で濡れてしまい、体温を奪われる。
   デパートなどでは、スプリンクラー作動によって商品が濡れるのを防ぐため、
   警報機とスプリンクラーの連動機能を切ってしまっている場合も多い。
 6) 非常階段は建物の中か外か
   何十人と人が殺到するので、外に設置されている場合は特に危険。
   ヒールの靴の人が多いと避難のスピードが落ちる。
 7) 防火扉
   扉はどっちに開くか確認する。 小さなことだが、意外とパニックの元になる。
 8) 非常口の出口はどこに続くか

5. ケーススタディ 野外での被災
 1) 倒れてくるもの (街灯、電信柱など)、車に注意
 2) 周囲の人の種類 (3. 3) 参照) に注意
 3) 風向きを確認する
   なるべく煙や異臭を吸わないように注意する。
 4) 時間
   被災したのは何時か正確に把握する。
   これは、どこまでなら明るいうちに (非常電源が切れないうちに)
   たどり着けるか判断する重要な情報となる。
 5) 道幅
   狭い道は迷いやすいので、特別な理由がない限り避け、広い道を選ぶこと。
   広い道は、救助隊が必ず通るので、避難場所へ通じる。
 6) 水、高カロリー食品の確保
   避難しながら、水や食料を必要な分だけ購入する。

6. 渋谷区の防災への取組み
 1) 帰宅困難者に対して
   小学校、中学校を避難所とする対象は地元の人。
   よって、それ以外の帰宅困難者は一時避難の後、地元企業や大学へ向かってもらう。
 2) 耐震調査や工事手当
   調査は無料、工事は上限 100 万円で支給
 3) 非常食
   3食違うように用意し、ティッシュと水で1セットの袋として支給。
   高齢者用におかゆ、乳幼児用にミルクや離乳食の用意もある。
   また、おむつや生理用品の備蓄している。
 4) 避難所の受け入れ人数
   畳1枚に2人の計算で算出している。
 5) 情報発信
   3.11のときも帰宅困難者を受け入れる準備はあったが、その周知が不十分であった。
   その対策として、大型ビジョンでの発信、
   またエリアメールの配信で対応できるようにしてある (ただし、au は対応2割)。

7. その他
 1) 持ち出し袋
   避難場所へ行くまでの距離から必要なもの、その量を判断する。
   市販の持ち出し袋は重すぎて、持ち運びしにくい。

 <先生の持ち出し袋:斜め掛けバッグで肩が疲れにくいものに以下を収容>
  ・カッパ (コンビニカッパと、本格的なもの)
  ・食料 (高カロリー食品メインに、満腹感の得られるもの)
  ・薬セット (ビタミン剤、頭痛薬、胃腸薬、下痢止め)
   自分にあう薬を用意しておく。
   被災時に下痢を起こすと、命に関わることも。
  ・ライト
  ・ヘッドライト (ストロボ機能あるとなおよし)
  ・ばんそうこうキット
  ・ラテックス手袋と軍手
   ラテックス手袋の上に軍手を重ねて使用する
  ・保護メガネ
  ・マスク
  ・はさみ
  ・メモ帳、ペン
  ・ガムテープ
  ・ストロー型浄水器
  ・鏡 (救助を待つ際に光を反射させるため)
  ・髪の毛をとめるゴム (止血に使用)
  ・手ぬぐい
  ・麻ひもをほどいたもの (火起こし用)
  ・マイクロシールド (人工呼吸用のもので専門的な道具)
 2) 寝袋を新聞紙で作る
   長めのコンビニカッパを着て、腰あたりでその上からひもで縛る。
   服とカッパの間に新聞紙を軽く丸めたものを詰め込む。
   保温効果も高く、寝る時には新聞紙がクッションになって、寝やすい。
 3) そもそも人はストレスに弱いことを理解する
   ASD、PTSD は自分の体を守るために備わっている機能
 4) 朝は体が動かない、会話も減る
   起きていると思っていても、体はまだ寝ている状態。
   朝に被災した時 (例. 阪神淡路大震災など) は思うように体が動かないことを前提に考える。
 5) 駅に向かって避難するときは、一番近い駅を選ばないという手段も考えること。
   また、同じ駅であっても、入口を変えるだけで混雑具合が大きく異なることも多い。
 6) 避難することが正解ではない。
   被災した場所が免震構造の建物のなかで、かつ」安全な場所であり、食料も供給される状況であれば、
   「避難しない」ということが正解になることもある。
   避難ありきではなく、選択肢に「避難しない」ということを含めること。

以上


(ボランティアスタッフ: 伊東 詩織)