シブヤ大学

授業レポート

2011/5/6 UP

希望へのプロセス ~過去の震災から学び、これからを考える~

東日本大震災が起きて1カ月半。今回の授業のキーワードは「つながり」。東京の私たちと被災地はどのように繋がっているのか、これからどのようにつながっていく方法があるのか。そして、私たちに何ができるのかを考えました。

まず初めに、被災地の生の声を聞くことで被災地と「つながる」という事をテーマに、三人のゲストの方をお迎えしました。初めのゲストは、福島県県職員で、原発のある大熊町にお住まいで学校の事務で主事をされていた佐久間さん。地震当日は荷物も持たずに急いで逃げたそうです。学校の機能を分散させて、遠隔教育のような形で学校を継続させようと奮闘しておられる姿に、東北のたくましさ・力強さを感じる一方で、「震災以来一カ月が経つが一日も落ち着く日がない」とおっしゃっていたのが心にずしんと響きました。

二人目のゲストは、外資系企業にご勤務で、震災直後に翻訳/NPOボランティアとして現地入りした近藤翔さん。自分は現地に行って何かしたいと思い、すぐボランティアセンターに問い合わせたということで、行動力・積極性のある若者だなと感心!これからも自分のスキル(英語力)を生かしつつ、ライフセーバーの資格を取るなどできることの幅を広げながら、ボランティア活動を続けていきたいとのことです。

三人目のゲストは、福島の実家が被災し、勤務先のケニアから急いで駆け付けた水野谷優さん。兄妹家族も合わせ一家9人を連れて埼玉・神戸に避難し、その後ユニセフスタッフとして岩手で教育支援を行ったそうです。震災以来ずっとのしかかる原発の恐怖、被災者は無くなったものはたくさんあっても欲しいものを言えないこと、一人一人異なるニーズを取りまとめるのは難しい話、被災者の仕事を失った辛さなど、被災者そして支援者として生の声を届けてくださいました。最後に「我慢強さ・優しさといった東北人の気質は希望です、東京の人たちも同じ船に乗っていると思って観光やボランティアをしましょう」と呼びかけていただきました。

そしてようやく今回の先生である上田壮一さんの登場です。上田さんはご自身の阪神・淡路大震災の被災経験からThink the EarthプロジェクトというNPOを創設され、Think the Earth 基金を通してさまざまなNGO活動を支援されています。授業では、上田さんご自身の体験や活動、そして寄付や復興活動ついてのお話を伺いました。

例えば、震災募金には義援金(全額被災者へ。ただし時間がかかる)と活動支援金(全額支援者であるNGO/NPOへ。スピード勝負)の二種類があること、復興段階には緊急支援(~数カ月)と復興支援(数カ月~数年)の2段階あること、ボランティアの種類には、体力系、専門系(ヨガ、体操)、訪問系(話し相手)、情報系(情報を整理して伝える)があることなどを勉強しました。

また既に始まっている震災復興支援活動もたくさん紹介して頂きました。ボランティアのためのネットワーク「助け合いジャパン」「RQ市民災害救援センター」、支援物資を届けるサイト「todoke」「できること」、ことばやアートで被災地を応援するプロジェクト「Messages for Japan」 「復興の狼煙ポートレート」、チャリティイベントを提案する「ぐるなびsave sake project」、避難民と受け入れ先をマッチングさせる活動「ルームドナー」, 地元産業の復興を支援するサイト「東北産」 「5000円レストランプロジェクト」等々…。富士フィルムによる「写真救済プロジェクト」は民間企業の強みを生かした活動と言えるでしょう。

取り組みは大げさなことである必要がなく、身近なことでもよいのです。たとえば、恵比寿でも、少年サッカーチームによる募金活動、絵本を被災地に送るプロジェクトなどコミュニティによる支援活動が始まっています。ただ、このような取り組みが長期的な支援につながっていくためには、震災支援そのものを目的とするのではなく、震災をきっかけとして出会った支援者も被災者がパートナーとなり、一緒に興味を持てる取り組みを長期的にやっていくことが重要です。

その後のグループディスカッションでは、複数のグループに分かれ、これから出来ることについて話し合いました。
● 健康・スポーツ・医療チームによる提案「肩揉み隊、ラジオ体操」、
● ライフスタイル・エコロジーチームによる提案「暗さを我慢する、冷房をやめる、アンペアを低くする努力」、
● アート・文化チームによる提案「郷土料理教室」、
● 子どもチームによる提案「学校や区を超えて体操着の提供等PTAによるボランティア、被災地の子供との交流事業」、
● ボランティア・募金チームによる提案「つもり募金(~したつもり募金)」、
● 観光・仕事関係チームによる提案「ボランティアを含んだツアー(不便さを体験、地元の文化を体験)
など、たくさんのアイディアが出ました。また、「触れ合うこと」、「話を聞くこと」、「被災地と一緒に活動すること」、「継続的に同じ人が行って信頼関係を作ること」、「当たり前を見直すこと」、「楽しむこと」、「情報共有から始めること」、「長続きする支援を心がけること」が重要だと語られました。
この瞬間、会場の体育館には「みんなの何かしたい」という気持ちであふれていたように思います。後は、実際どのようにアクションにつなげていくか、それはその人次第です。
そして授業は、加計塚小学校のPTAの方が震災復興に想いをこめたて作った歌を聴きながら幕を閉じました。

今回の授業は、今後も長く続く被災地とのつながりを考えるためのほんのきっかけに過ぎません。
しかし、復興も行政やNGO任せではなく、まずは一人一人が自分にできることを考え、積極的に被災地とつながって有機的な関係を築いていければ、東北地方の震災からの復興の長い道のりも思いのほか早く進むのかもしれない、そんな風に感じました。

(ボランティアスタッフ:佐々木織恵)