シブヤ大学

授業レポート

2010/10/27 UP

地図にない街「原宿」を古地図で探検しよう!

今回は特別に、参加してくれた生徒さんお2人に
レポートを書いていただき、また「授業中に写真を撮る」という課題もあったので、
レポート写真も生徒さんが撮影したものを載せさせていただきました。
レポートには生徒さんたちの素直な気持ちが書かれていますし、
写真からも生徒さんたちの楽しんでいる様子がご覧いただけると思います。
ぜひ見てみて、そして読んでみてください!!

レポート:飯野あずみさん、ヤマグチ テッペーさん
フォトレポート:井島正人さん

(授業コーディネーター 遠藤香)



★飯野あずみさんより

学校の授業で歴史が最も不得手でした。
なぜかというとなんかはっきりしないから。
見た人が今もいるわけじゃないのに本当かどうか分からないことをなんで覚えなきゃいけないの!!って思ってたからです。
でも、
古地図を見ながら街を歩いたり、先生のお話を伺ったりすると昔と今がつながってることが身近に感じられてワクワクした一日になりました。


まず、原宿の丘で先生から、
原宿と呼ばれる理由は江戸時代に原宿村があり、表参道は大正9年に造られた明治神宮の参道のこと。明治天皇を祀るにあたり、清正の井戸があるところに明治神宮を造ったこと、
などお話を伺いました。

そして2チームに分かれて、古地図を元にチェックポイントを目指しました。
チェックポイントでは証拠写真を撮るのがルール。
最終ゴールへのタイムとプレゼンでのポイントで対決です。
私がいたBチームはまずは、
「KDDIデザイニングスタジオへ」
原宿表参道辺りに詳しい人が多かったため地図を見ずに進んでしまい、
同行してた先生が「古地図がかわいそうだ。考えます。」とつぶやいて去っていきました。

「原宿駅へ」
若者ばかりの竹下通りを進み、原宿駅へ行きました。
原宿駅前で証拠写真をパチリ。
完璧オノボリさんでした。
古地図がかわいそうなので土地勘が比較的ないメンバーに先導してもらうことにしました。

「隠田の水車跡へ」
ここが第一のゴール地点。
かつてはここから富士山が見えたとのこと。
しっかりと「富嶽三十六景」に描かれています
新たな地図を渡され、ちゃんと古地図を使うようにここでルールが追加されました。
「通ったルートを古地図に記し、ルートにあったものをピックアップしておくこと。」
先生と別れて早速、目印になるような建物をパチリとしときました。

「表参道ヒルズへ」
表参道をはさんでヒルズのはす向かいに石垣が!
かつては一帯あったものを一部だけ残してあるそうです。
いつもただ通りすぎてしまっていたので感慨深くみんなでなでてきました。

「ワタリウム美術館へ」
表参道ヒルズを抜けて次を目指します。
道路も川も縮尺も何もかも今と異なる可能性があるのでヒントは神社仏閣です。
古地図を見つめ、現代の街を見渡し、ヒントの善光寺を探してうろうろうろうろ。
お腹も空いてきたのでご飯どころも探しつつうろうろうろうろ。
その途中、ステキな便箋やさんを見つけて寄り道。
手ぬぐいやさんも見つけて寄り道。

「ランチ」
もう、お腹も時間も限界だったのでワタリウムの近くでランチにしました。
小さめの定食屋さんにわらわらと入ったのでお店の方は大変だったようです。
天ぷらを揚げる音を聞きながら、便箋やさんで買ったカードに先生とコーディネーターさんにメッセージを書きました。

「熊野神社へ」
不思議な狛犬のいる神社。
片方はホイップクリームのような、もう一方はユニコーンのようなものを頭にのせていました。
お参りをして次を急ぎました。

「竜岩寺へ」(龍厳禅寺)
ここが第二のゴール地点でこちらも富嶽三十六景に描かれた場所。
古地図の道と現在の道がずれていて不安に思いながら進んでいくと先生の姿が。
ここのお寺の境内は木漏れ日がとてもきれいでした。
檀家さんしか中に入れないので門からのぞくだけで我慢。
お寺の前の通りは「勢揃坂」で武士達がここで集合したとのこと。

「神宮前2丁目交差点へ」
外苑前マーケットというなんとも昭和なステキな場所を通りぬけて古地図を見ながら迷子です。
古地図上にはヒントとなるランドマークがほとんどなく現在地すらあいまいなまま交差点を発見しました。

「千駄ヶ谷八幡へ」(鳩森八幡神社)
ここが最終ゴール。
本当は交差点を素直に渡って直進すればゴールだったのですが、
数少ないヒントの「仙寿院」の確認をするためうろうろしてたらAチームと合流してしまいました。古地図上にある仙寿院は千駄ヶ谷トンネルの上にあり普通に歩いてると見過ごしてしまいそうでした。
後で調べたら東京オリンピックのために下に道路を通したそうです。
古地図上では「千駄ヶ谷八幡」、現在は「鳩森八幡神社」と名称の違いに翻弄されながら両チームほぼ同時ゴールでした。
鳩森八幡神社では宮司の平野さんから直接お話を伺い、富士塚に登らせていただきました。
富士塚に登ると富士山に登るのと同じご利益があるとのこと。
子供やお年寄り、遠隔地の人など富士山に行けない人のために造られたもので、
昔の人のやさしさと富士山への愛を感じました。
私もやっぱり富士山好きです。
第一のゴール、第二のゴール、そして最終ゴールと
つながりは「富士山」でした。

「J-Cook」
両チームのプレゼンテーションと優勝チーム発表です。
勝者はAチーム!
我がチームは負けました。
お手紙作戦は敗れました。(趣旨とはずれてました。)
Aチームは古地図上にある家が現在もあるのか調査していたとのこと。
それらしきお宅はあったものの残念ながら不在で取材ができなかったそうです。
そんなことしてたなんてそりゃ負けます。

知っている街を知らない地図で歩くのもとても楽しいものでした。
知らない街でも挑戦してみたいです。
きっと私は今も歴史の授業を受けたら寝てしまいそうですが、
街を歩いていて昔のヒトやコトの痕跡を感じられたら絶対ワクワクします。
たっぷり楽しい時間をありがとうございました!

★ヤマグチ テッペーさんより

○「原宿」の歴史を学ぶ

土曜日の朝、授業会場に集まった生徒さんは全部で10名。
ランダムに5名ずつの2グループに分かれ、全員の自己紹介の後、授業が始まりました。

初めに、萱原先生から江戸時代から現在に至る
原宿の歴史に関するレクチャーがありました。

・「原宿」ってなんで「原宿」っていうの?
・「表参道」ってなんで「表参道」っていうの?
・ 原宿を今も流れている川は何?どこを流れてる?

意外と知らない原宿の歴史に「へーっ」の連続。
馴染みのある街、そして原宿のような時代の最先端をゆく街も、
いろいろな歴史が積み重なって今があるのだ、と改めて実感します。

そして、いよいよこの授業の本編、街探検のルール説明です。

古地図上に示されたチェックポイントや複数のゴールを通って、
最終目標地点までの所要時間を競います。

更に、探検の途中で、歴史の痕跡が見えるポイントなど気付いたことを
写真などで記録すればボーナスポイントになる、という説明がありました。

○江戸時代から現代の原宿を「行き来」する

ガイダンスの後、いよいよ、両チーム意気込んでスタート!です。

1枚の古地図を5人で眺めながら、
目的地であるチェックポイントが今の原宿のどこなのかを考えます。

「この道はあっちじゃない?」
「いや、こっちじゃないですか?」
「この場所に書いてあるお寺は昔こっちにあったんじゃない?」

といろいろ話しながら街を歩きます。

「地図」といってもやはり江戸時代のもの。
縮尺が実際と異なっていたり、現在の道と異なっていたりします。

なので、そんなにすんなり地図の道通りには歩けません。目的地はなかなか見つかりません。

「この道じゃない?」と。普段は入ったことがない裏路地に入ってみて、
地図にあるお寺や神社を手掛かりに、現在の街並みを比較しながら道を進みます。

そして、表参道沿いにあるブランドショップの壁面に残る石垣など、
歴史の痕跡を少しずつ手繰りよせていきます。

でもその道すがら、不意に見つけたオシャレな雑貨屋さんにふらっと入ってみたり、
昭和の面影が残るマーケットを見つけて入ってみたり。

「へーっ、こんなところにこんな店があったんだー」と、
歩きなれた原宿で、いくつも新しい発見があります。

まるで、江戸時代から現代の原宿を「行き来しながら」街を探検する感覚です。
そんな街歩きをしながら、予め指定されたチェックポイントやゴールに到達すると、
全員で古地図を手に記念写真を撮影!します。
さながら「おのぼりさん」。まるで修学旅行生気分です。

ゴール毎に待ってくださっている先生からは、その地点から描かれた浮世絵を見せていただきます。
田園の広がるのどかな江戸時代の原宿の風景と、ブランドショップが立ち並ぶ現在の原宿の風景は、
にわかに同じ場所とは思えませんが、場所の持つ歴史の深さを更に感じざるを得ません。

○「富士山」という視点

約3時間歩き続け、たどり着いたゴールは千駄ヶ谷にある「鳩森八幡神社」。

ここで先生から、今回の探検のテーマが「富士山」であると説明がありました。

鳩森八幡神社には、都内最古といわれる「富士塚」があります。
江戸ではかつて、富士山を信仰することがとても流行し、
その人々が集まって「富士講」という集まりになったほどでした。

「富士塚」とは、そんな人々にとって富士山と同等の御利益がある山のこと。
静岡まで行かずして、その御利益が得られるという存在です。
実は、都内各所に富士塚はたくさんあって、信仰がいかに広まっていたかが分かります。

各ポイントで先生に見せていただいた浮世絵にも、実は富士山が描かれていました。
江戸の人々にとっての富士山の偉大さが推察できます。
ここで、鳩森八幡神社の宮司、平野さんから富士塚や神社の歴史に関するご説明を頂いたのち、
我々もいざ、富士登山!です。本物の富士山を模して造られた塚は、
実際に登ってみると意外と急な勾配で驚きました。
「登頂」したあかつきに、山頂できちんとお参りもしてきました。

○目の付けどころで、街の風景は変わる。

授業の締めくくりとして、私たちはカフェに移り、
それぞれのグループの廻ったルートを報告しあいました。

両グループは似たルートを歩いたのですが、それぞれ目の付けどころはバラバラ。

同じ原宿という街を歩いても、目の付けどころや興味によって、
街は全然違う風景に映るものなのだなぁ、と驚きました。

長く住んだり勤務しているような馴染みのある街でも、
ちょっと視点を変えれば、これまで気付かなかった魅力が見えてくるのかもしれません。

ちなみに両チームの対決の結果ですが、タイムはほとんど一緒だったため、
先生とスタッフの協議の結果、ボーナスポイントの差で
我々のチームは負けてしまいました(泣)

でも、勝ち負けは二の次。この日に初めて会った人たちと、
まるで修学旅行生のように地図を睨みながら街を駆け巡る経験は童心に返ったようであり、
馴染みのある原宿という街を舞台を「時空を超えて」歩けたことは本当に楽しかったです。

朝に集合し、解散する頃には既に日も暮れて真っ暗となるくらいの長丁場でしたが、
本当に充実した時間を過ごすことができました。

これからは、自分の住んでいる街、勤務している街を、
ちょっと違った視点から観て、もっともっと楽しもうと思います。


鳩森八幡神社
http://www.hatonomori-shrine.or.jp/index.php?id=5/

J-Cook
http://j-cook.jp/

古地図は人文社の復刻古地図を使わせていただきました。
http://www.harajuku.jp/com/kichen/jcook/jcook.htm