シブヤ大学

授業レポート

2010/2/19 UP

香りの記憶ゲーム ~初春の「香道」体験~

「やったー!」「よしっ」「あぁ~くやしいっ」。。。

意外かもしれないですが、これ、すべて香道の授業の中で生徒さんたちから思わず漏れた言葉。

香道っていうと、みなさんどんなイメージですか?伝統とか、着物着てとか、格式があって、高貴な感じで・・・などなどいろいろあると思うのですが、やっぱり品があって厳かで、とかなイメージじゃあないですか?!

香道、伝統美や厳粛な雰囲気はもちろんあるのですが、意外や意外、+エキサイティングな体験もできるのです!

まず香道の説明ですよね。とても奥が深いので、今回体験した授業に特化してお話しますと、香道とは、まず何種類かの香を聞き(嗅ぐことを香道では聞くという、嗅ぐ←不粋!)、その香をなんとか必死に覚えておきます。さらに次に順不同で出てきた香が、先ほどの何番目に出てきたものなのかを当てるという、記憶と嗅覚を使ったゲームなんです!

これが当たれば非常に嬉しいが、外れると非常に悔しい。

その香(かおり)はとても微妙な差で、さっきのはシナモンみたいで、これは生クリームのようで、と何か近いものをイメージして必死に違いを聞き覚えるんですが、もうなかなか当たらない。今回も5種類の香を聞き分け、すべて正解した生徒さんはなんとお一人だけ。

集合場所は明治神宮の大鳥居前、ほとんどの生徒さんはおひとりでの参加。明治神宮の普段はなかなか使用する事の出来ない御苑内の隔雲亭という茶室(http://www.meijijingu.or.jp/midokoro/2.html)をお借りしての授業。その茶室は総檜作りで、今ではなかなか見ることの出来ない繊細な模様のすりガラスも美しく、 先生方はみなさんお着物で、授業を行う部屋は障子がぴたりと閉まり、ほの暗い明かりと静寂に包まれ・・・

って、もうこれだけで期待は高まるし、緊張はするし、背筋はのびるし、もう雲の上のお方がするようなお稽古で~って気がしませんか?!

でも香道、当たりと外れがあるので、すごくすごく興奮するんです、おもしろいんです。

しつこいですが、すべて伝統に彩られた美しさがあるんですよ!ひとつひとつの所作が決まっていて、形式美というのでしょうか、きっとこれらの動作がすべてスムーズに出来るようになると優雅で気品ある人に近づけるんだろうなという美しさが。

でも、静寂の中で香を聞き、そして答え合わせの時間が来ると。。。冒頭のような歓声やらため息が聞こえてくるのです。

静寂と興奮。

これは他の道(みち)、華道や茶道にはない楽しさです。

私、修行好きなので華道も茶道もちょっと嗜むのですが(いや、すみません、ほんのちょっとです) 。香道、実におもしろくて素敵ですー!もともと男性の愛好者が多かったのもうなずける道です。

案外生徒さんの中にも男性は多くて、いかがですか?と聞いてみたら「予想以上に夢中になるし、外れるとほんとうにくやしいですねー、またやりたいな」とおっしゃっていましたし。クセになりそうな楽しさでしたよね。

そんなこんなで、朝集合した時、私に「一人だし初めての参加で緊張してます」とおっしゃっていた女性も隣の方といつのまにかうちとけて、いくつ当たったか!など楽しそうに話していらっしゃったし、他の方も先生方に熱心に質問されていたりといつの間にか和気藹々な空気になっていて場が和んでるんですね。これぞ、和の心、日本の心という感じで、もう香道のパワーってすごい!

そんな皆さんの様子を見て、戦ばかりしていた昔のお偉いさんも、こんなひと時で癒されたり、信用できる仲間を見つけていたのかもねーなどと、ひとり妄想しつつ勝手に感動したりしてました。

そして、授業が終わり、別室へ移動。今度は障子すべてが開け放たれ、御苑の森と気持ちのよい太陽の光が私達を迎えてくれました。美味しい和菓子とお茶をいただきながら、そこでも、生徒さんたちは先生に夢中になって質問をされていたり、仲良くなった方と香道談義で盛り上がっていたり。私達スタッフにも、「楽しかったよ」とか、「また和の授業やってね」と暖かい声をかけてくださって。


香道という、美しくて厳かで粋で洒落感のある日本人らしいコミュニケーションツールを使って、生徒さんたちがうちとけて仲良くなってくれた。私は、そこに今回の学びの意味があるのかなと感じました。

生徒さんの中にはイタリア、アメリカ、韓国からいらした方もいましたが、とても楽しんでくださったようで、このコミュニケーションツールは諸外国の方にも通じるかと思われます。。。

ある生徒さんが、「日本人って、ほんとうは昔からお洒落で素敵なのよね」っておっしゃっていましたが、私も、私の中の、日本人としてのDNAがびりびりしびれるようなこの感覚、すっごい大事にしたいです。そう思わせてくれる授業でした。

(ボランティアスタッフ 遠藤 香)