シブヤ大学

授業レポート

2010/1/14 UP

シブヤ大学のつくり方学科 ~授業づくり編~

全3回にわたる『シブヤ大学のつくり方学科』の講義。今回は、第一回目の「授業づくり編」です。

 会場に集まった55名の参加者の方々。教室に入ったときの第一印象は、「一人ひとりが、すごいオーラを持った人たちだな~」ということでした。
 それもそのはず。最初に行われた全員の「30秒自己紹介」では、北は北海道から南は鹿児島、沖縄まで、全国各地から“○○大学”を創ろうというエネルギッシュな方々が集っていることがわかりました。

 今回は『「○○大学のいい授業ってなんだろう?」を考える』というテーマで、講義を聴くというよりも、ワークショップを中心として授業が進められました。

 まず始めから、3人一組でのワークショップ。できる限り、まだ話したことのない人と話をしよう!ということで、まったく違う地域から来た3人が、テーマだけを与えられて、話を始めました。
 そこでの会話は、まったく初対面同士とは思えないものでした。既に活動を始めている大ナゴヤ大学の高橋さんは、開校に至るまでにどんな準備をしてきたかについて語って下さいました。「thinkナゴヤ」というイベントやオープンキャンパスなどを行って盛り上げてきたというお話や、苦労話など、とても具体的で、他の2人の方々も、自分たちの大学の開校に向けての参考にしていました。
 グループチェンジをしての2セッション目。私が参加した班では、「カルチャースクールや市民講座のようなものはたくさんあるけど、“○○大学”の特徴はなんだろう?」という話になりました。印象に残ったのは、「シブヤ大学は、授業の内容は意外と普通だけど、スタッフが盛り上げたり、参加者同士が感想を共有したりすることによって、満足感を得られる」という意見。生徒として関わり始め、半年前からボランティアスタッフを始めた私にとっても、やはり「学びを通しての人とのつながり」がシブヤ大学の魅力なんだなと実感しました。

 2セッションを終えたところで、最初の講義の時間を迎えました。
 1人目の先生は、原宿表参道キャンパスで裏ツアーなどの授業コーディネーターをされている、松井健二さん。松井さんの授業づくりでのこだわりについてお話を聴きました。
 松井さんが大事にされていることは、「先生との関係性」。一番大事なことは、「この人と生涯の友達になりたい!」と思える街の先生を見つけ、その先生の可能性を引き出しながら、一緒に授業をつくっていくということ。そしてその上で、テーマを絞って生徒さんに伝えていくということだそうです。
 このお話を受けてのワークショップでは、「自分の地域でやっていくときにも、すでに有名な集客力のある人ではなく、地元から光る人を発掘したい」といった意見が聞かれました。

 2人目の先生は、同じく原宿表参道キャンパスで授業コーディネーターをされている、編集者の舩元雄一郎さん。舩元さんのお話は、「今日話す人の中で、僕が一番“ふつう”です。」から始まりました。
お話の内容は、「 “ふつう”の人でもやれる!」ということ。実際に、この夏に行った「よさこい」の授業での体験を語って下さいました。⇒http://www.shibuya-univ.net/class/detail.php?id=384
 この授業に参加したAさん(31歳)は、転職して上京したものの、新しい環境で知り合いもおらず、自信の持てない日々を過ごしていました。しかし、「よさこい」の授業に参加して、毎週末仲間たちとともによさこいの練習をし、飲み会をし…を繰り返しているうちに、2ヵ月後には、別人のように積極的なキャラクターに変わってしまったそうです。
 この体験から舩元さんが学んだことは、「人はコミュニケーションで変われる」ということ。そして、この“コミュニケーション”こそがシブヤ大学のオリジナルであるということでした。
『授業づくりは、生徒さんの背中をそっと押すこと。成長の瞬間に寄り添うこと。』

 3人目の先生は、シブヤ大学学長の左京泰明さんです。
 左京さんは、「授業運営と組織づくりについて」のお話をされました。シブヤ大学が大切にしているものは何なのか?一般の市民講座との違いは何なのか?を考えていきました。
 一言でいうと、シブヤ大学が大切にしているものは“心”です。参加者に対する“もてなしの心”を始め、マニュアルをあえて作らず一人ひとりがよりよい方法を追求していったり、「もっとこんなことができたらいいのに」というアイディアを出し実現していったり…。一人ひとりがシブヤ大学と主体的に関わっていくことで、独自の文化が育っていくのだと思います。
 そのために気を遣っていることは、役割によって意見の軽重をつけず、誰もが手を上げていい雰囲気をつくることと、ルールは必要最低限にとどめ、人を支え活かすこと。ルールで縛るのではなく、あくまでも参加者一人ひとりが主役だから、得るものがあるし楽しめるのです。
 
 3時間にわたる長丁場でしたが、参加者の皆さんのパワーのおかげで、とても中身の濃い時間を過ごすことができました。
 今日たくさんの方々のお話を聞いて、これから全国各地にシブヤ大学のような場所がたくさんできるんだと実感しました。全国に仲間がいるのが当たり前になる日が、とても楽しみです。

(ボランティアスタッフ: 田中 万里子)