シブヤ大学

授業レポート

2008/6/4 UP

「野菜は自分の代わりに農家さんに作ってもらってます。
~農家さんの個性によって、野菜の育て方も味も個性が出るんです~」

授業は日本料理屋「SAKURA」で行いました。
お店の雰囲気もとても素敵で、「デートで使えそう」なんて声も。
実際早く来てランチをした人からは「卵かけご飯がすごく美味しかった」等お料理の味も大好評。お店の方々もとても温かい雰囲気です。

そんな中、満員御礼で授業が始まりました。
講師の伊藤先生は30歳のとき、1年間農村の山小屋に住んでいたという女性の方。
そのときに「自然の中で人間が出来ることは何だろう」と考えていたそうです。

「なんで最近野菜のことが気になるんですか?」の先生からの質問に、
「スーパーと直売では味が全然違うのはなぜだろうと思って」「自分でもベランダで野菜を栽培していて」「体に優しいものを食べたくて」「以前は千葉の八百屋で働いていたけど、若い人が来なくて」「体に悪いとわかっていても、お金がないと安いものを買ってしまう。いい値段でいい野菜が買えるのが一番いいんだけど」
と様々な答えが出てきました。皆さん日々の生活の中で野菜に対して色々な思いを持っていらっしゃるんですね。皆さん色々考え、感じていらっしゃるんですね。

現状日本の野菜の半数以上が外国からの輸入。
昭和35年では、79%だった自給率が平成18年では39%になってしまっている現状。
日本にある農家の数は減り続けていて、しかも高齢化が進んでいます。
なんと、日本の農家の約60%が60代以上とのこと。
肉体労働である農業を受け継ぐ若い世代がいないと、この先どうなるんだろう。

さらに海外の農産物の輸出規制が始まっている中、この先、もしも輸入がストップしたら? 
私たちの体をつくるためにとっても大切な野菜。どうしたらいいんだろう。

消費者代表として、事前にスタッフ2名が「安全な野菜でカレーを作るため」に
それぞれスーパーとオーガニック専門店に材料を探しに行きました。
その中での感想。
スーパー担当:有機野菜のコーナーが中々見つからない。
店員さんに聞いてもよく知らない。理由は「そんなこと気にするお客さんはあまりにない」
オーガニック専門店担当:野菜の産地や作った人の名前などが、手作りのポップに書いてある。それぞれの野菜のことをよく知ったスタッフがいつも近くにいてくれるので、安心。
「近隣に住んでいる方でそういうことを気にする人が最近多いんです」

絶対有機野菜じゃないと、というわけではない。全部変えるのは大変。ちょっとずつでもいい。
まずは、私たちの食べる野菜を変わりに作ってくれている人たちに感謝するところから始めるのが大切なのです。“野菜は買うものではなくて、変わりに作ってもらうもの”

1人の農家が成立するためには、50人のお客さんがいればよいとのこと。
自分たちの未来のために、自分たちが農家を支えていくことが大切です。
まずは自分自身で農家を体験してみるものひとつ。
“wwoof” “ボラバイト” “野良仕事” “エコツアー”こんな仕組みがあることを先生に教えていただきました。

先生からの授業を聞いたあと、2人1組で「今回の授業を聞いてどう思ったか、今後どうしていきたいか」
について話し合うワークショップを行いました。
皆さん、色々な想いがあったのでしょう。
会場が声で響きわたるほど、皆さんそれぞれにお話をされていました。
ただ受講するだけではなく、そのときに感じたことをその場で言葉にして、共有することはとても大切なのだな、と実感しました。

その中の何名かの方に発表していただきました。
「生活もあるし、費用もあるから、パーツパーツで有機野菜を取り入れていくのが大事」
「アンテナを高くすれば東京でもいい野菜が食べられる。東京原産の野菜もある」
「野菜の自給率低下を言われているが、室内での栽培などの技術も発展していくのでは」
「作っている人の顔が見える野菜を買いたい」
本当に様々な感想をいただきました。

~先生より~
「農家の皆さんは、美味しい野菜を私たちみんなに食べてもらいたいと思って下さっています。
農作物のやり取り=気持ちのやり取りでもあります。
有機野菜じゃないといけないということはないけれど、
自分が食べるものを、ただ与えられるがままに依存するのではなく、自分で選ぶことが大切です。
農家さんの個性によって、野菜の育て方も味も異なります。」

有機野菜の取り入れ方も、どんな野菜を食べるのかも、自分に合うものを自分で選択していくことが大切なんですね。
作った人の愛情を感じとりながら、野菜を食べられる機会が増えてきたことは、とても幸せなことだと思います。心と体にいいものを、出来る範囲で取り入れていけたらいいですね。

(ボランティアスタッフ 中川直美)

【参加者インタビュー】
1.後藤真知子さん
「今回の授業は、最近自分で料理をすることが増えてきて、野菜に関心が向いてきたのがきっかけで参加しました。自炊すると体にいいと言うけれど、元々の素材がよくなかったら、自炊=体にいいというわけではないと思っています。安いのがいいけれど、体にいいものが食べたいと思っている中で今日はヒントを得られました。今回の参加者の中には野菜関連の仕事についている人も多くて、びっくりしました。」

2.出山友康さん
「今回は意見が飛び交った活発な授業だと思いました。実家が農家なので、消費者と作り手の両方の視点を持って参加することが出来ました。将来自分が定年して野菜を作ることになったとき、今日の皆さんの意見を参考にしたいと思いました。」