シブヤ大学

授業レポート

2008/6/4 UP

「まずは知ること」

~あなたはアフリカの最も貧しい国にうまれました。
あなたと一緒に小学校に入学した同級生は30人。
そのうち、10人はとてもお腹をすかせていて、3人は栄養失調で死にそうです。
2人はエイズ感染しています。
17人は両親の仕事を手伝うため、卒業する前に学校を辞めてしまいます。
15人の家は電気もガスも水道も通っていません。
6人は小学校に入学する前に死んでしまいました。
本当なら同級生は36人のはずでした。~

今回の授業は、国連開発計画(UNDP)横井水穂先生の、こんなお話から始まりました。
日本にいるわたし達には、なかなか身近な問題として捉えることができませんが、世界には、何億という人々がこんな過酷な状況下で生きています。

シブヤ大学HPの授業解説をご覧いただくとわかる通り、
世界の国々が貧困をなくそうと、2000年の国連ミレニアムサミットで8つの目標を掲げました。それが『ミレニアム開発目標 MDGs(Millennium Development Goals)』です。
2015年を達成期限とした『MDGs』について、世界で最も深刻な状態である地域、アフリカの状況を中心に考えていくのが今回の授業です。

途上国が抱える、貧困や教育、医療、環境など数々の問題。
貧困問題を例にとってみると、世界の穀物生産高の合計は、実は全人口を養える量があります。世界で生産される食料を平等に分配することができれば、飢餓に苦しむ人はいなくなると言えるのです。しかし、紛争などの様々な問題によって全ての人に食料が行き渡らず、一部の人に飢餓の被害が降りかかることになっているのが現状です。
また、先生がおっしゃっていったのは、日本の世界に名だたる民間企業が年間で上げる売り上げ利益で、途上国が抱える問題の解決に大きく貢献することができる。一企業の資金力はかなりのものだ、と。経済支援という面において、ODA(政府開発援助)と併せ、ここに大きなヒントがあるのかもしれません。

『MDGs』の8つ目の目標は、世界中が助け合う仕組みをつくろうというもの。
資金だけでなく、技術、モノ、人。日本の企業、そして世界中が本気になって取り組めば、『MDGs』の達成は決して不可能なことではないのです。
では、その達成のために、わたしたちが実際にできることはなんでしょうか。

先生はお話の中で、それは、世界の貧困問題について「自分」で
① 知識を身につけること ②考えること ③行動すること
だと、お話してくださいました。
「この問題について数学のように正しい答えはない。その国に行かなくては何もできないなんてことはありません。世界の貧困問題について、今、この時間で知ったことをあなたが友達と話すだけでもいいんです。そして、民主主義の国で生活するわたし達にはもうひとつできることがあります。それは、
④選挙に行くことです。『MDGs』を推進する候補者に投票することも私たちにできることのひとつです。」


授業の最初の、アフリカの本当なら36人だった同級生のお話。
この話を聞いてもピンとこない、という方もいらっしゃるかもしれません。けれど、何かがおかしいことは感じられるのではないでしょうか。わたしたちが今、生活している日本であれば余程のことがない限り、36人全員で小学校を卒業できるはず…。
小学校入学前にその命を失われた6人の同級生はもしかしたら、あなたの友人や恋人だったかもしれない。より早く、より多くの人々が、同級生全員と笑って小学校を卒業できる平和な世界にするために『MDGs』は今、達成されなければならない目標です。

溢れている場所、足りない場所。世に存在する様々な不平等な出来事。
同じ命が、生まれた場所によってあまりにも違った人生を辿る現実。
今、日本にいる私たちに当たり前のことは、この地球のどこかでは当たり前のことではないのです。

生まれてくる場所を、人は選ぶことができません。
わたしたちが生きる世界は海を越え、国を越えつながっています。
自分にできることは、そんな世界で起こっている現実を知ること、自分で考えること、そして自分でいいと思うことをもとに行動すること。まず「自分」ができることから。

自国のみでは解決できない地球規模の問題を、世界の国々と共に。
世界をつくる一人である自分のできることを始めることが、世界を変える一歩になるはずです。
『MDGs』は2015年という達成期限と、具体的数値目標を定めた点が画期的であると言われています。どんな数値目標が設定されているのか、というところからでも、これを機に『MDGs』を自分なりにもっと知ることから始めてみませんか。

(ボランティアスタッフ 中里希)