シブヤ大学

授業レポート

2008/5/14 UP

『毎日の政治学』

「檀上が高すぎて距離を感じてしまうなぁ。いっそ輪になってやりたい!」と開口一番お茶目な発言で場を一気に和ませるあたりさすがだなと思うと同時に、平等意識の高い方だなと思った。

「マニフェスト」とは「政権公約」と訳され「選挙公約」とは似て非なるものである。「選挙公約」とは例えば「美しい街を作ります」といったいわゆるスローガンでありイメージだけの無責任や約束である。なぜなら「美しい街」とは抽象的であり人によって判断が異なるため検証不可能だからだ。一方「政権公約」は具体的な数値目標、財源、期限などを明記しており客観的に検証可能な責任ある約束のことである。税金=公金なのだから政権を担うものが責任ある約束をすることは当然のことであると北川先生は言う。

私自身もイメージに流されることが多いと実感する。政策の中身よりもまず表情や話し方、着ているものなどに目が行ってしまう。映画「選挙」(http://www.laboratoryx.us/campaignjp/)を見ても分かるように日本の選挙活動は候補者の名前の連呼や握手が主流となってしまっている。

そして今、日本の借金は800兆円に膨れ上がり環境問題も深刻になってきている。難しい問題や面倒な問題を先送りにしてきた政治家達のツケが今我々に覆いかぶさっている。北川先生は「民主主義は脆いもの」だと言う。多数決のため政治家は国民にどうしても迎合してしまい目先の良いことばかり言ってしまうためだ。また北川さんは「民主主義は民意のレベル以上には上がらない」とも言う。目先の利益に捉われず10年先、100年先を見越した判断が我々に求められており、その際に重要になってくるのが「価値前提の考え方」である。つまり志や理想を掲げて今あるものを壊して新しいものを創造する、いわゆる革命だ。それに対して「事実前提の考え方」では単なる改善でしかなく抜本的な解決方法にはならない。

北川先生は三重県知事時代に地方行政を変革してきた、いわゆる「改革派知事」の人だ。従来の地方行政は「機関委任事務」のもと国からの補助金で成り立っており談合体質や官官接待が横行していた。これが「地方分権推進法」により「機関委任事務」が廃止され、国が財源を握る中央集権から「補完性の原理」(公的責務の分担に関して、個人、家族、地域で解決できないことを基礎自治体(市町村)が担い、次いで広域自治体(都道府県)、さらに国が担うべきものとする考え方)と「近接性の原理」(補完性の原理と同様に、問題はより身近なところで解決されなければならないとする考え方)のもと地方分権が推し進められた。三重県でも談合体質や官官接待が横行していたが北川先生はマニフェストで選挙を行い、知事となってからはトップダウンで11億6千万円の弁償や責任者への刑罰も辞さず改革を進めていった。

北川先生は現在、マニフェスト型の政権選択選挙を実現すべく活動中であり、是非ともマニフェストを読んで投票してほしいと呼び掛けている。

北京で一羽の蝶々がはばたくとニューヨークでハリケーンが生じるという「バタフライエフェクト」の話を例にして革命を起こすためにはまず「気づき」があり「誘発」⇒「相互作用」⇒「共振」⇒「爆発」という順路で世界はガラッと変わるという。

私はこれまでマニフェストを読んだことがない。印刷枚数やWebへのアップが制限されているため目につきにくいということもあるが一番の理由は面倒くさかったからだ。しかし今回のお話を聞いて次の選挙ではイメージではなくマニフェストを読んで投票してみようという気持ちになった。そうしないと面倒くさいことを先送りしてきた政治家達と同じになってしまう気がするからだ。

今回の授業で得た「気づき」がこのレポートで「誘発」されて世界が変われば良いと思う。

(ボランティアスタッフ 厚沢英俊)