シブヤ大学

授業レポート

2025/2/1 UP

カジュアル防災講座~防災の新しいトレンド、備えない防災「フェーズフリー」を知ろう!~

今回の授業は、「カジュアル防災講座〜防災の新しいトレンド、備えない防災『フェーズフリー』を知ろう!」〜と題し、防災士の佐藤里香さんをオンラインにて講師としてお迎えしました。13名の参加者が集まり、ハイブリッド方式で上原社会教育会館にて開催されました。

まずは、参加者の皆さんからおひとりずつ自己紹介。この授業に参加した理由を含めてお話しいただくことからスタート。
参加していただいた理由は主に2つありました。
1つは日頃から防災に関する備えについては考えてはいるものの何をすればいいのか、揃えてはいるもののこれで良いのか、物ばかり揃えてもいざという時に役立つのか等といった不安を少しでも解消できたらというお気持ちからのご参加。
もう1つは、表題の副題にある『フェーズフリー』というワードに惹かれてのご参加。


〜防災の傾向について〜
講師の佐藤さんからも自己紹介・事業紹介をいただいたところで、佐藤さんから参加者の皆さんへ質問がありました。

質問の内容は、
「防災のイメージとは?」
この問いに対して参加者の皆さんからは
・やらなきゃいけない
・やらなきゃいけないことが多い
・必要だと思うが、かといって要るかわからない
・賞味期限切れなど管理が負担 等々
この質問に対しては、他の機会で尋ねてもほとんど皆さんがネガティブ気味なイメージをお持ちだということでした。

このネガティブ感はどこから来るのか?
・災害と防災がごっちゃになって怖いイメージだからか
・なんだか専門的で難しい、堅苦しいからか
もっと日常の中に溶け込める形でも防災ができるといいな、いうところから、日常使いができて、災害時にも役立つ、おしゃれといった新しいトレンドも取り入れた「カジュアル防災」を伝える活動が始まったということです。

〜フェーズフリーと防災ニモナル〜
佐藤さんが伝える「カジュアル防災」は「フェーズフリー」という言葉(考え方)が中心となります。「フェーズフリー」とは、災害時と平常時という分けられたフェーズを取っ払い、いつでも使えるものを使おうという考え方です。フェーズを分けていると防災のためにわざわざ備えることになりますが、フェーズをフリーにすることで「わざわざ」から解放されます。そういった意味で「備えない防災」とも言われています。
その「フェーズフリー」という概念に共感し、周知活動をおこなっている佐藤さんは「防災ニモナル」という言葉も使い、さらにわかりやすくなるよう工夫されています。
「ボウサイニモナル」、なんだか響きが可愛らしいですね!

フェーズフリー・防災ニモナルは、どなたにもわかりやすい言葉ですと「一石二鳥」。そして、これが三鳥にも四鳥にもなるということを考えるとなんだかワクワクしてきます。

そんな「防災ニモナル」商品をいくつかご紹介いただきました。
・インテリアとしても可愛く、瓶の中をドライフラワーなどでアレンジができる、太陽光で充電ができるソーラーランタン
・普段も災害時も使える、見た目はクッションの毛布&シュラフ
・底面が厚く強力に作られていて、ガラスを踏んでも怪我をしないスリッパ
・食べ物などを温めることができるショルダーバッグ
・災害時にはコンテナごと移動させ被災地で使用することができるコンテナ型ビジネスホテル

本当に色々工夫された商品や施設などの紹介があり、防災のためだけでなく「防災ニモナル」思考にどんどん頭の中が切り替えられていきました。

〜フェーズフリーを考えてみる〜
ここで参加者の皆さんでグループワーク。
「災害時にライフラインがストップしたら何ができなくなる?」をヒントに「こんなものがあったらいいな」というフェーズフリーアイテムについて考えました。

はじめは個々にアイデアを抽出したところで、グループでの話し合いも盛り上がっていました。
色々なアイデアが出てきました。
・洗わなくても清潔な衣類
・暗い時でも見える、ホイッスルにもなるメガネ
・雨水が浄水できる水筒
・火打ち石やテープ、ラップになるベルト
・避難情報が入ってくるイヤホン
・スニーカーの靴紐が強力ロープになる
・蓋をあけると温かくなる缶詰
・充電機能がついたペン
日頃からこうだったらいいなと考えていることを共有されることで、新たな商品が生まれる機会となると感じます。

最後に佐藤さんより、普段使っているモノや普段おこなっているコトの中に「フェーズズフリー」「防災ニモナル」あるというお話しもありました。
例えば、
・キッチンばさみ…まな板と包丁を汚さなくても野菜などをカットでき、洗い水を節約できる
・干し芋…日頃から間食で食べ慣れているし、日持ちもする。災害時に不足しがちな栄養素が摂れる。
・犬の散歩…わざわざ避難場所の把握のために歩くのは抵抗があるかもしれないが、犬の散歩やウォーキングのルートを避難場所までの道にしてみることで一石二鳥!
日々の何気ない暮らしの一つ一つを見直してみると、新たに何かを購入しなくてもできることがたくさんありそうです!

〜まとめ〜
佐藤さんは、「本日お伝えしたことは『正解』でも全てでもなく、防災は人それぞれ、十人十色。備えるモノも量も、備え方も、何に価値を感じるかなども、みんな違う。
防災のイメージが変わったり、背中をそっと押せたり…『きっかけ』や『選択肢』になれば幸いです」と締めくくってくれました。
災害時もなるべく心地良い生活を送れるようにするためには、
【日頃心地良い生活を送ること】からつながっていて、災害時に慌てず過ごせる第一歩なのではないかと感じました。授業をきっかけに、災害時も平常時もより心地良く暮らしていける度合いが高まったのではないかと思います。

(授業レポート:安西仁美、写真:いわぶちいくえ、安西仁美)