シブヤ大学

授業レポート

2024/6/15 UP

「今夜は、無礼講。2024」~お座敷あそびは奥が深い!

場所は、「料亭三長」渋谷円山町 円山町といえば、、、
ラブホテル街、ライブハウスやクラブがあるエリア、細い路地と急な坂、正直なところちょっと怪しげなイメージのエリア。 円山町の歴史を紐解くとその始まりは明治時代から始まった街で(上野などから言うと、渋谷はど田舎だった)、明治18年に鉄道が敷かれ渋谷駅が開通、東側の街から西側の開発が進んでいく中、(現在の神泉駅近くに)温泉が開業、料理旅館が出来たことが円山町の始まりだといわれているそう。

さて、週末でごった返している道玄坂を登って道玄坂上の手前あたりで路地に入ってゆくと、角に立派な竹組の塀が見えてきます、趣のある堂々とした門構えの日本建築の建物と、建物の半分にはバーや和食の頂けるお店が入っておりそのエントランスになる小道も素晴らしく、ここは渋谷かな?と思える雰囲気。 そのような雰囲気なので単純に、特別な人が来るところ?敷居が高い?(お食事も)お高いのでしょう?などと様々考えましたが、本日はスタッフなのでそこは気にせず、でも微妙に緊張する、そして建物に入ったらもう背筋がシャンとなる感じ、料亭の中に入って靴を脱ぎ、鶯張で飴色の廊下の床板、薄明るい細い廊下、池のある中庭、角に置かれた黒電話や美人画、急な階段を上がるとお座敷が広がっていて(建築好きにはたまらない空間です)なんだか受付をしていても勝手にお店の人になった気分に。いや、、これはシブヤ大学の宴席?いや講座ですよね?!
すこし時間を過ぎて生徒さんがお揃いになり宴席?いや、授業が始まりました。 まずは本日の講師「料亭三長」三代目髙橋千善さんから、この地域、建物の歴史をご紹介いただきました。(この渋谷の歴史みたいな講座と街歩きみたいなのできそう?もうすでにやっていますか?) お話を聞き、飲み物、先付けなどを楽しみつつ、忘れていた乾杯を。 そして本日のメイン、芸者さんたちの鳴物、唄、舞が始まりました 鼓、舞は喜利家 鈴子さん、喜利家 三吉(みよし)さん、唄、三味線は瓢屋 小糸さん、「鶴亀」から始まり、(2曲目があったかも。。。忘。。) 歌舞伎十八番「助六由縁江戸桜」にちなんだ小唄「春霞引くや」で鈴子さんが助六をキリッと舞っておられて皆さんうっとり、ちなみに鈴子さんのお着物は今夜助六を舞うので夜桜に紫色の帯締めを合わせて来られたそうで、これもまた粋で素敵。
続いて鈴子さん、三吉さんの「木遣りくずし」江戸時代の町火消しや鳶の唄を手持ち行燈を手に舞い、小糸さんの唄声が本当に耳に心地よくどこかにフワフワとタイムトリップしてしまった不思議な気分、雰囲気に酔っていい気分に。 そしていよいよ生徒さんが参加する「お座敷遊び」 その一つ「とらとら」は屏風や襖の影でお互いの姿を見えなくなるようにして遊ぶ体を使ったじゃんけん、じゃんけん同様に「三すくみ」で槍の名手加藤清正(槍)、虎、老母(清正の母)の3種類のジェスチャーがあります。 清正(槍)は虎に勝ち、虎は老婆に勝ち、老母は清正に勝ちます。ジェスチャーと遊び方ををお姐さんがたから教わり、三味線の音色に合わせて「とらとーら とーらとら、とらとーら とーらとら、とらとーら とーらとら」と3度唄い、負けた人が1杯お酒を飲み干すという趣向。三味線の音に合わせて唄って、体を使って行うゲーム、本当に単純なゲームですがこれは酔いが回るほどに面白さが増しそうです。
授業開始時は最初皆さんかしこまった感じでしたが、お座敷遊びを通じて宴会(授業です)の雰囲気が一気に盛り上がりました。 盛り上がったところで、集合写真では皆さんいい笑顔でおさまってらして、楽しかった宴会の余韻を残しつつお開きとなりました。 感想: 建物、お座敷のしつらえ、お給仕の方の立ち振る舞いや、気遣い、お姐さん方の芸や粋な会話を耳にしていると、素直に素敵だなぁと思う一方で、若干の違和感を覚えたのも事実で、なくならないで欲しいなぁとは思うものの、明治、大正、昭和の男女観、社会習慣・風俗的な要素や、戦後の高度成長期、交際費が必要経費で認められて世の中が男性中心の社会で右肩上がりに日本がどんどん成長する時代、羽目を外して遊んだり、接待したり接待されたりして仕事につなげたりする中で栄えた文化だったのかなと思え、こういった遊び方、楽しみ方を知らない、必要としない人が増える中で、時代に合わせて、形を変えて、世代交代し継承してゆくのもなかなか難しいことだなと女性目線で考えると少し複雑な気分にもなりました。そういえば今東京芸術大学美術館で「大吉原展」を開催しているようで、行ってみようと思います。
(授業レポート:Sachiyo Akizawa)