シブヤ大学

授業レポート

2023/5/25 UP

生きるためのアナキズム入門
〜もう革命しかないもんね〜

12月17日(土)原宿駅から徒歩15分。ケアコミュニティ・原宿の丘にて、「生きるためのアナキズム入門〜もう革命しかないもんね〜」という授業が開催されました。先生は長崎大学多文化社会学部准教授の森元斎さんをお招きし、14名の方が参加されました。

授業前半は、授業コーディネーターの鈴木さんから、森 元斎さんの著書『アナキズム入門』『もう革命しかないもんね』のご紹介から始まり、アナキズムの思想背景や歴史などの講義に入りました。

そもそもアナキズム(anarchism)という言葉は、単語を分解すると"an(非/否)"+ "arch(支配/起源/統治)"+"ism(主義)"という意味の組み合わせ。無政府主義や無支配主義を意味する単語ですが、罵倒語として貶す意味合いで用いられることが多く、褒める時には用いられづらいよね...(笑)というお話から始まりました。起源は、フランス革命よりも前、ヒエラルキー構造をもった貴族や王国文化の対比として、話し合いの中で自主統治をする文化をもったアメリカの先住民族のことを「アナキスト」と呼んだことが最初だそうです。授業は、そこから啓蒙思想やフランス革命など、民主主義や代議制の成り立ちを振り返りながら、結局「アナキズムとは何なのか?」という問いに至ります。 「アナキズム」は、定義するとその定義に縛られ、その精神に反してしまいます。そんな中、鶴見俊輔氏の言葉を借りると「アナキズムは権力による強制なしに人間が互いに助け合って生きていくことを理想とする思想」とし、その暫定的な定義を出発点として、自分でアナキズムなるものを考えてみようと、私ごととして個人個人へ投げかけられました。

その後、授業は、自分なりのアナキズムの実践者として、森さん自身が大学の非常勤講師で働きながら、田舎で自給自足生活や、地域コミュニティの参加などの体験談へと展開されました。「この世に自由なんてないと思われがちだけれども、自由の隙間を見つけていく作業が楽しい」と言う言葉がとても印象的でした。

授業後半は、森さんと参加者によるおしゃべりタイムです。グループ形式でそれぞれ感想や、ご自身の実践について話し合っていただいた後、森さんへの質問や意見などを発表してもらいました。オススメの本や、森さんの生活に関すること、資本主義や地域コミュニティにおける家父長制の影響など、多岐に拡がるおしゃべりタイムとなりました。森さんのアナキズムの起源は、大学時代に大学内のルールに不条理を感じて、声をあげたらルールを変えてもらった成功体験だそうです。当たり前だと思っていた生活やルールも、もしかしたら権威や慣習に支えられているだけであって、形骸化した社会ルールを中心に生きるより、お互いがもっと支え合っていけるのであれば、もっと人間中心に、もっと自由に、優しく豊かに生きられるのかもしれません。

(レポート:槇 歩美、写真:小林大祐)