シブヤ大学

授業レポート

2023/5/25 UP

はじめての連句会

この世のあらゆるものについて歌い、一つの宇宙を作っていく。
このように形容される連句の一端に、今回の授業では触れることができたかもしれません。

連句とは、最初の句に対して、その情景から次の句を想像する文芸です。
何人かで五・七・五の長句と七・七の短句を繰り返し、繋がりを作り上げていくのです。
600年ほど前から伝わってくるうちに、形式も30種類ほどになりましたが、今回は半歌仙という、基本的な形式である歌仙の半分の長さの形式で楽しみます。

先生の竹田さんから連句についての基本的な説明の後、早速句を考える時間に入ります。

最初の句である「発句」は「あめあがり卒業式坂きらきらし」と先生によって詠まれました。
発句にはその季節の季語を入れなければならないというルールがあり、「卒業式」の語が入っています。ここから連句の世界、もとい宇宙が始まります。
2つのグループに分かれた参加者の皆さんは、この発句から連想しつつも、受けすぎない句を考えていきます。
付けすぎず、離れすぎない。これが連句の難しさであり、面白さなのではないかと感じました。

納得のいく句ができた人から紙に書いて、句を吟味する「捌き」の役である竹田さんのところへ持っていきます。
捌きは集まった句の中から次に続く句として良いものを一つ選び、発表します。
今回は2つのグループに分かれていますので、それぞれのグループから一句ずつ選ばれます。
発句の五・七・五に続く脇句(第二句)の七・七として、Aグループからは「友の手放し食う桜餅」、Bグループからは「自転車通学雀の子と共に」が選ばれました。
これを繰り返し、半歌仙では第十八句まで続けます。

各々机に向かって考えることになるので、普段のシブヤ大学の授業と比べたら静かな授業かもしれません。
前の句から離れつつ、ユーモアも交えながら定められた季節を取り入れた句を考えるのはなかなか想像力も必要とします。
ですが、うまくはまった句ができたときの高揚感、また句が選ばれ一巻の中に組み込まれたときの嬉しさというのは良いものです。
時間の関係で今回は十二句までとなりましたが、A・B両グループの巻をご紹介します(カッコ内は俳号)。

Aグループ チャットAIの巻

あめあがり卒業式坂きらきらし(竹田先生)
友の手放し食う桜餅(ぺこ)
つばめ来るいつもの家に巣をつくり(まつ)
窓からもれるあかり愛おし(狐)
ただの道スマホかまえる秋の月(雪見)
暴走族減りし鈴虫か(柑橘)
法被着るたぬきの装い秋祭り(まつ)
寝言は寝て言えチャットAI(ぺこ)
「あなただけ」どこにでもあるラブレター(雪見)
ビールの泡で泳いでみたい(狐)
無人島あたり一面雪景色(竹田先生)
足跡辿る花の道ゆき(鮎)


Bグループ うなぎの巻

あめあがり卒業式坂きらきらし(竹田先生)
自転車通学雀の子と共に(開)
白い帽風にさらわれ山笑う(朱風)
おなかグーグー妄想中(可津)
考える季節問わない秋の月(まなぶちゃん)
アンドロメダのハイキックかな(朱風)
うなぎ食べアンタダメダときみは去る(まなぶちゃん)
アホなゲームはもう止めたいの(朱風)
その笑顔初めての推しヌートバー(歩)
久々のフェスマスク焼けせず(御月)
手術のふるえる医者の掛け布団(竹田先生)
大滝のしぶき初花長る(鮎)


本格的な形式では、インスピレーションを得るために吟行に出かけたりもするそうです。
また、最近はオンラインでも連句会が開催されているとのこと。
皆さんも連句で今上を詠んでみてはいかがでしょうか。

(レポート:イノウエハジメ、写真:小島知佳)