シブヤ大学

授業レポート

2008/1/9 UP

時代と場所を越えて

普段はあまりお目にかかることのできないような美術館の応接室。
そこにあるのは、まさに美術館ならではと思えるような重厚さのあふれる机と椅子。ある種、美術館は存在自体が、僕らの日常生活からすると時代と場所を越えている。

授業開始の時間になるとともに、もうおなじみとなった戸栗美術館の中島先生が登場。シブヤ大学定番の授業として根強い人気を誇る連続講座「やきもの鑑賞入門編」も、もはや12回目となるが、授業の根強い人気を支えるのは、なんといっても、中島先生の初心者・上級者それぞれに併せた丁寧かつわかりやすい授業スタイル。

今回の「やきもの鑑賞入門編」のテーマは、“唐草”。
この連続授業ではじめて今回ワークショップを取り入れた授業。

授業の前半は唐草というテーマについての、中島先生からのレクチャー。

「唐草といったとき、どんな模様を思い浮かべますか??そう、一番わかりやすいのは泥棒の風呂敷ですね。」
渦を巻いている泥棒の風呂敷。

「唐草の語源は諸説がありますが、今日は2つの説を紹介します。1つは、『からむ草』という模様自体の見た目の特徴からきたという説。もう1つは、『唐からきた草模様』という、中国伝来の模様であるからという説。」

唐草文様が日本でも非常に普及した江戸時代の初期の唐草文様は、ブドウや朝顔といった、模様のモデルが具体的にわかるものと、渦巻きや雲や波のような模様という風に具体的なモデルがわからないようなものという分類ができるのだという。

唐草へとつながっていく文様の起源としては、地中海で描かれていた葉っぱの連なったような曲線の模様や、幾何学的な文様を特徴としたアラベスクのようなものが考えられるという。それらのエネルギーの象徴といえるような模様が、唐草における渦巻きのような文様につながっていったのだという。

その後、伊万里焼における実際の唐草文様の使われ方を拝見し、ついにワークショップへとうつる。今回のワークショップでは、1枚のお皿をイメージした円形の枠のある用紙にそれぞれが唐草文様を描いていった。

「昨日試しに家で描いてきてみたよ」という方や、見本になるような文様のコピーを持ってきていただいている方、参考として先生にご用意頂いた食器を食い入るように見つめる方。様々なスタンスで臨んだワークショップではあるものの、一旦用紙に文様を描き始めたら、真剣そのもの。首をかしげ、試行錯誤しながら文様を自ら描くということに熱中する生徒達。ふと一人一人の描いた文様をながめてみると、とてもエネルギーのある文様があふれている。唐草というエネルギーのあふれる文様。

30分のワークショップの後、展示室に移動し、伊万里焼に描かれたそれぞれの唐草を鑑賞。実際に文様を書いたゆえに感じる職人の描き方の工夫や筆を入れるタッチや細かい手つき、意図、一つ一つにかける職人のエネルギーに想いをめぐらせながら、展示を眺め、説明に耳を傾ける。

聞いて、理解し、書き、感じる。
文様は時代と場所を越えて、感じられるエネルギーのカタチの一つなのかもしれない。

(ボランティアスタッフ 増沢輝)