シブヤ大学

授業レポート

2023/2/1 UP

音のしくみ
―スティールパンの響きをもっと楽しもう―

今回の授業コーディネーター、武田さんが演奏するスティールパンの音から授業は始まりました。

綺麗な音だなあと思っていると、武田さんがスティールパンの歴史を説明してくれました。

日本ではあまりメジャーではないスティールパンという楽器は、カリブ海の島国トリニダード・トバゴという国で生まれたそうです。
イギリス植民地時代の政府が、暴動の対策として打楽器を禁止。しかし、黒人たちは身の回りにあるガラクタを叩いて音楽を続け、ブリキ缶の底を叩いて凹ませるといろんな音が出ることを発見し、第二次世界大戦後には、アメリカ軍が廃棄した石油のドラム缶を少年たちが盗み、そこからつくられた楽器が、スティールパンとして広がっていった、ということでした。

綺麗な音と見た目からは想像もできない歴史にびっくりです。
スティールパンという楽器は、音楽を続けたいというトリニダード・トバゴの人々の思いが形になったものだったのですね。

さて、スティールパンの説明があった後は、秋山公良先生の登場です。

音楽の授業で習った音階と言えば、ドレミファソラシ。

ドの音が一番基本のものに思えますが、実は最初の音は「ラ」だったというお話し。
NHKの時報の音も「ラ」、オーケストラのチューニングをするときも「ラ」、赤ん坊のオギャーも「ラ」?
ドレミファソラシは、英語式で表記にすると「CDEFGAB」、日本では「はにほへといろ」。
覚えにくいなと長年不思議だったのですが、「ラ」=「A」=「い」が最初の音だったとわかり、納得です。
ちなみにドレミは何語かというと、イタリア語なのだそうです。知らなかった!

秋山先生の冗談を交えた軽快な語り口に引き込まれながら、ここから授業は本格的な音楽理論の話になっていきます。

ピタゴラスの音の発見、12の音、五度圏、平均律/純正律、音階の成り立ち、和音、倍音、コードの接続、メロディの作り方、と音楽理論初心者の私にとっては目新しい話ばかり。

言葉だけでは理解が難しい内容も、秋山先生がギターで実際に音を鳴らしながら説明してくださったおかげで、なんとかついていくことができました。

ここまで話を聞いて、スティールパンの音盤配列の謎が解けてきます。
五度圏と呼ばれる配置には倍音の理屈が関わっていて、共鳴して欲しくない音は遠くに、共鳴した時に調和する音は隣に、ということだったのですね。

休憩を挟んで後半は、秋山先生のギターと武田さんのスティールパンによる演奏で、習ったばかりのコードを実際に聴いて楽しむ時間になりました。

例えば、「ぞうさん」のコード進行は、C→G→C→F→G→C。
Cは安定、Gは波乱や揉め事が起きている状態、Fは発展や幸せ、と秋山先生は説明をしてくれましたが、そう言われるとそう聞こえてくるから不思議なものですね。
コードと実際の音の印象やイメージが結びつくと、途端にコードが身近なものに感じられます。

他には、日本人だけが好きなコード進行と言われる、F→G→Em→Am。
あの有名な歌謡曲にも、この歌謡曲にも、まさか同じコード進行が使われていたなんて。なんだか騙されたような、コードの奥深さに気づいたような。
難しそうに感じる音楽理論も、こうやってよく知っている曲と照らし合わせて勉強すると面白いですね。

最後の参加者のみなさんからの質問タイムも盛り上がり、お話は楽器ごとの特性や拍子と民族性についてまで及びました。

あっという間の2時間半、音楽理論初心者の私でも作曲や演奏に挑戦できるかも!と思わせてくれる、とても充実した授業でした。

授業に参加された方も、参加できなかった方も、今回をきっかけに、秋山先生の出されている本で改めて音楽理論を勉強してみたり、スティールパンの演奏にぜひ挑戦してもらえたらと思います。

秋山先生、楽しいお話と演奏をどうもありがとうございました!
(授業レポート:鈴木なつき)