シブヤ大学

授業レポート

2022/4/17 UP

「継承の場面 その2」見守ろう里見家の継承~家族会議に立ち会ってみよう!~



 里見さんが16代目館主を務める温泉旅館「古滝屋」は創業が元禄8年(1695年)というから、300年を優に超える老舗中の老舗旅館です。ひとくちに「継承」と言っても、そこには動かしがたい歴史の重圧が加わってきます。

 里見さんは子ども時代、お祖母様から「学校に行かなくてもいいから旅館を継ぎなさい」と言われたそうです。ですが
、父親からは一度も言われた記憶がないといいます。とはいえ、そこで暮らしていれば子ども心に後を継ぐことを意識しないではいられない、その経験から「息子には自分と同じ思いをさせたくない」と、あえて旅館から離れた場所に自宅を構えたそうです。

 息子の滉介さんは、現在、地元を離れ東京で会社勤めをしています。旅館とも観光とも縁のない他業種です。「(大学進学時も、就職時も)何も言われていない。いまも自由にやらせてもらっています」と屈託なく笑っていました。2グループに分かれての参加者との対話で、滉介さんから「旅館から離れて育てられたけど、もし旅館の中で育っていたら別の学びが得られたのではないかと思うことがある」との発言もありました。隣のグループに入っていた里見さんの耳に届いたかどうかは分からないですが、その場合「旅館を出ていたら、もっと別の世界が見えたかも?」と思うのではないでしょうか。正解はない、とはそういうことであり、だからこそ対話が必要になってくるのだと思いました。

 おそらくみなさんが知りたい(聞きたい)と思っている事業継承についての結論は今回聞くことはできませんでした。里見さんグループの参加者から「外から、是非『古滝屋』を継ぎたいという人が現れたらどうしますか?その人がとても優秀なMBAホルダーだったら?」という質問がありました。里見さんは「売上や利益より、地域への貢献度を大事にしたい。親としては、事業継承よりも(弟もいるので) 兄弟仲良く が望みです。」と答えていらっしゃいました。その姿には揺るぎがなく、東日本大震災を契機に考え方が変わったそうです。
 
 里見さんの目下の関心事は「事業づ
くり<地域づくり<社会づくり」。その眼差しは、従来型の旅館業に縛られない、旅館というスペースを使った「公民館業」とでもいった社会活動に関心が向けられているように思いました。(註)最後に、ある参加者から「継承は、事業や財産などにらない。き方や考え方なども継承の対になり得るということにづかされた。」とのコメントがあり、みなさんがいていた光景が印象的に残りました。
(レポート:今井久夫

休題
(註)Furusato on Strikingly (mystrikingly.com)
里見さんは年3、災と向き合い考えるきっかけになればと、が進める「害伝承館」とは別に旅館の一に「館」を開設しました。この「継承の場面」シリの後は、この考館を会場にして開講してみたいと勝手妄想きながら里見さん親子と別れました。