シブヤ大学

授業レポート

2021/6/18 UP

 【オンライン開催】
みつけよう!いまのわたしが踏み出せる一歩
~きみトリプロジェクトから学ぶ、対話と場~

 5月22日、高橋ライチさんと舟之川聖子さんを先生にお招きし、開催されました。

 きみトリとは、先生方を含む3人の市民により執筆された本、『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』の通称です。大人と子どものはざまの時期を生きる10代と、かつて10代だった大人に向けて、「社会のトリセツ(取扱説明書)を作って生きる」というアイディアを手渡すというコンセプトで書かれています。また、この本をもとに場づくりや場を広げていくプロジェクトを「きみトリプロジェクト」と呼んでいます。

 まず、先生方より自己紹介と本についてお話しいただいた後、10代だった時の気持ちを探るために「10代の時に聞いた忘れられない一言」を学生さんにチャットに書き込んでもらいました。傷ついた経験にハッとしたり、じんわりと感動したり、言葉が心に響いてきました。

 次は、先生が実際につくった場をご紹介し、どうして場をつくるのか、つくってみてどうだったか、などをお話しされました。高橋さんは銭湯でゴスペルを歌う会や、子育て中で自分の食事しか食べない時期に、人が作ってくれた食事を食べてみたいということでお互いに手料理をふるまい合ったり(その名も「給食」!)、ユニークな場づくりをされていました。また、舟之川さんは短編をその場で読んでその場で話すという読書会をされていました。活動報告をWebにアップしてどんな雰囲気かわかるように伝えていたそうです。

 他にも、雑談ではなくまじめな話ができる場のつくり方や、告知方法など、場づくりに必要な具体的かつ実践的なお話を聞くことができました。学生さんも感想や考えを先生に投げかけられ、その場で出た質問に先生が答える貴重な時間でした。

 そして、いよいよグループに分かれてワークの時間です。テーマは、「あなたの声をきっかけにした場を作るなら?」。何について、どう呼びかけて、どんな人と話したいのか、をグループごとに話し合います。皆さん初対面同士で緊張されていたかと思いますが、どのグループも心の声を打ち明け合い、考えを深めていきました。発表の内容を少しだけご紹介します。


・バラエティ豊かなトピックが出てきたことから、対話の目的はいろいろあるんだなと気付いた。たとえば、自分のプラスの気持ち(ワクワクするものなど)を話したい人や、逆に自分のモヤモヤを共有してその状況を打開したい人など、様々な目的を持って対話の場を作っていけるのが面白いと思った。

・自分のアイデンティティを認知する場づくりをしたい。アイデンティティの形成においてメディアは大きな影響を与えるが、メディアにつくられた美や幸せなどのイメージが蔓延し、自分と比べて自己否定してしまう人も多い、という話をしたら、他の学生たちからも感想や質問が出て、グループ全体で盛り上がり対話することができた。

・実践的な相談が多かった。読書会を実際に開いているが人が集まりにくい、と相談した人がいたら、版元のイベントから人を引っ張ってこられると人が増えそう、などとアドバイスし合うことができた。


 最後に、ワークを終えた後の、素直な今の気持ちを教えてもらいました。なかには「転勤で引っ越しを控えていて、こういう時こそ自分で場をつくるという発想に転換して頑張りたいと思った」という方もいました。また、授業の中だけでなくもっと多くの人に声を届けたい人のために、ハッシュタグもご用意しました(ご興味のある方は、#きみトリ #これが大事 で検索してみてくださいね)。

 授業に立ち合って感じたのは、自分の思いや考えを声に出し続けることの大切さでした。「自分が大事なものは絶対手放してはいけないんだ」と舟之川先生が仰いましたが、そのために自分の大事なものを旗に書いて「旗を立てる」、もし自分に合う場がなければ「自給自足」すればいい、という言葉が印象的でした。そのメッセージを受け取って、それぞれが自分なりの一歩を踏み出せた授業でした。