授業レポート
2021/7/27 UP
【オンライン開催】【参加枠】
"これからの時代の"サードプレイス
「あなたにとっての〝サードプレイス〟はどこですか?」
この問いを聞いて、すぐさまフッ、と思い浮かんだ方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。
“サードプレイス”とは、家庭・職場に続く“第3の場所”のこと。コロナ禍によって住む場所を見直したり、職場以外での働き方が増えたり、オンラインの繋がりも生まれたり。そんな時代になって、サードプレイスが持つ意味も進化しているのではないか?…という問いから生まれた授業です。
今回は、サブカルな沿線と名高い中央線の高円寺で昭和8年から創業の銭湯「小杉湯」で三代目を務める平松佑介さんと、オシャレなイメージの強い東急東横線・学芸大学駅から徒歩3分のところにある「路地裏文化会館C/NE」の館長・上田太一さんを講師にお迎えし、おふたりが作られてきた「場」の“サードプレイスとしての在り方”についてお話を伺いました。
【小杉湯って、どんなとこ?】
外観は88年前のそのままに、待合室にはギャラリーがあったりと新しい試みとのギャップが魅力的な町のお風呂屋さん。時に浴室を使ってイベントをしたり、待合室に本屋のようなスペースが生まれたり。「作り手の顔の見えるお風呂」「気持ちのいいお風呂に入ってもらいたい」との思いから、各地の生産者や高円寺の飲食店から譲って頂いた規格外の果物や酒粕、米糠などを再利用した「もったいない風呂」を日替わりで展開など、様々なモノ・コトとの面白いコラボレーションも盛んです。
そして、2020年3月には「銭湯のあるくらし」をコンセプトに、小杉湯のとなりに新施設『小杉湯となり』がオープン。この施設は、解体予定だった風呂無しアパートを「銭湯付きアパートメント」と新たに価値づけ、クリエイターを中心とした様々な小杉湯の利用者たちが皆で住みながら1年かけて作り上げてきたそうです。現在は会員制スペースとして、仕事や料理や読書などのそれぞれの時間を、銭湯と併せて過ごせる場所になっています。
地域のおじいちゃんおばあちゃんから高円寺に住む若者まで幅広い層の方が利用し、日々のちょっとした会話から〝中距離のご近所関係〟が編み出される場。この街で生まれ、この街で地域の人と共に作り上げてきた中で、この場所の“サードプレイス”としての意味がより深まっていると感じます。
【C/NEって、どんなとこ?】
学芸大学から徒歩3分という好立地ながらも、路地裏にある為、館長の上田さん曰く「中々見つけづらい場所にある」という隠れ家のような場所、C/NE(シーネ)。映画と食を中心としたお店で、週末はポップアップレストランとして、カレー、シュウマイ、台湾料理などなど、様々なテーマのイベントも開催する。月に1回開催される映画上映会の後には、そこで知り合った人たちがバーで感想を話し合ったりテーマを決めてディスカッションをしたりなど、交流は様々。
場所(ハード)から始まる場作りではなく、何かをしたいという人や、そこに集まる人の思い、体験や物語(ソフト)から企画が生まれるような、そんな場作りを大切にしているというのがとても印象的でした。「利害関係ではなく、好きなことを楽しむことで、自然に人と人が交わっていく場所」。コロナ禍になってから、地元・学芸大学に住む方々による貸し切り利用などの様々な使い方も増えたのだそう。
後半では、「コロナ禍とサードプレイス」「街とサードプレイス」「サードプレイスにおける空間/運営」「<場所>以外のサードプレイスはありうるのか」の4つのテーマでディスカッション。ZOOM枠の参加者には更に講師のお二人への質問タイムも設けられ、白熱した語らいが交わされました。
おふたりのお話を聞いていて印象的だったのが、「はじめから人との交流(コミュニティ形成)を目的にはしていない」というお話。「コミュニティは作るものではなく、生まれるもの」という考えのもとに、「好き」や「楽しい」をやっていくうちに、いつの間にか出会い、つながり、関係性が紡がれていく。
銭湯では、名前も肩書きも年齢も知らない人同士が、会話をしなくても裸の付き合いをしていく。番頭の大学生と地域の高齢者がお互いを見守る関係性を築く。高円寺でも学大でも、好きや楽しいをキッカケに繋がった人たちが街ですれ違い、「これから出勤?いってらっしゃい」なんて会話をしながら、街に溶け込み馴染んでいく。その中から生まれた新たなチャレンジや可能性を目にする機会などがある時に、この場をつくった喜びを噛み締めると、C/NEの上田さんはお話してくださいました。
小杉湯でも、利用者さんのプロジェクトとして始まったことが、「銭湯の新しい可能性を事業としても展開していきたい」という思いへつながり、株式会社銭湯ぐらしに発展。そこには平松さんも小杉湯も、役員などといった形では一切関わっていないそうです。みんなが集まり、つながったことで、結果として会社になったというお話が個人的にとてもいいなぁと思いました。まさに偶然の出会いが重なってできた「つながり」だと感じました。目的にしていなくても自然と出来上がっていく関係性。ひとつの「場」や「機会」をきっかけに生まれる縁って、いいな。って、思いました。
そして、もうひとつ私がとても印象的だったのは、「小杉湯となり」でも大事にされ、C/NE上田さんもお話しされていた、「お一人で来ている人、初めての人にも〝わたし、ここにいていいんだ〟と安心してもらえる目配り」を心がけているというお話です。
おふたりは小杉湯やC/NEを運営し始めて、そしてコロナ禍となって、より地域のことを考えるようになったと言います。自分の住んでいる街に「知っている顔」がある。お互いに気遣える人がいる。
銭湯は、実はお湯を分け合う、〝シェアリングエコノミー〟。だれかとなにかを分けあって、分かち合って共有し合う。それはお湯のように広い意味での〝モノ〟でもいいし、モノでなくてもいい。なにかを通じて、くつろげて。そこで出逢った人たちと一緒にいることが、『私』を〝本来の私〟に戻してくれる。
そんなやさしくてあったかくて、ホッ、と心落ち着けるような。
素の自分に戻れる場所が、これからの時代のサードプレイスなのだと思いました。
そして最後に。
「私にとってのサードプレイスってどこだろう?」
そう考えた時、真っ先に頭に浮かんだのが、ココ、シブヤ大学でした。
お互いがどんな意見や発言をしても笑わない。
互いを当たり前に尊重し合う空気がある。
それが今日の授業の空気と、シブヤ大学のカルチャーに共通する点なのかな?と思いました。
(授業レポート:芳賀久仁子)
この問いを聞いて、すぐさまフッ、と思い浮かんだ方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。
“サードプレイス”とは、家庭・職場に続く“第3の場所”のこと。コロナ禍によって住む場所を見直したり、職場以外での働き方が増えたり、オンラインの繋がりも生まれたり。そんな時代になって、サードプレイスが持つ意味も進化しているのではないか?…という問いから生まれた授業です。
今回は、サブカルな沿線と名高い中央線の高円寺で昭和8年から創業の銭湯「小杉湯」で三代目を務める平松佑介さんと、オシャレなイメージの強い東急東横線・学芸大学駅から徒歩3分のところにある「路地裏文化会館C/NE」の館長・上田太一さんを講師にお迎えし、おふたりが作られてきた「場」の“サードプレイスとしての在り方”についてお話を伺いました。
【小杉湯って、どんなとこ?】
外観は88年前のそのままに、待合室にはギャラリーがあったりと新しい試みとのギャップが魅力的な町のお風呂屋さん。時に浴室を使ってイベントをしたり、待合室に本屋のようなスペースが生まれたり。「作り手の顔の見えるお風呂」「気持ちのいいお風呂に入ってもらいたい」との思いから、各地の生産者や高円寺の飲食店から譲って頂いた規格外の果物や酒粕、米糠などを再利用した「もったいない風呂」を日替わりで展開など、様々なモノ・コトとの面白いコラボレーションも盛んです。
そして、2020年3月には「銭湯のあるくらし」をコンセプトに、小杉湯のとなりに新施設『小杉湯となり』がオープン。この施設は、解体予定だった風呂無しアパートを「銭湯付きアパートメント」と新たに価値づけ、クリエイターを中心とした様々な小杉湯の利用者たちが皆で住みながら1年かけて作り上げてきたそうです。現在は会員制スペースとして、仕事や料理や読書などのそれぞれの時間を、銭湯と併せて過ごせる場所になっています。
地域のおじいちゃんおばあちゃんから高円寺に住む若者まで幅広い層の方が利用し、日々のちょっとした会話から〝中距離のご近所関係〟が編み出される場。この街で生まれ、この街で地域の人と共に作り上げてきた中で、この場所の“サードプレイス”としての意味がより深まっていると感じます。
【C/NEって、どんなとこ?】
学芸大学から徒歩3分という好立地ながらも、路地裏にある為、館長の上田さん曰く「中々見つけづらい場所にある」という隠れ家のような場所、C/NE(シーネ)。映画と食を中心としたお店で、週末はポップアップレストランとして、カレー、シュウマイ、台湾料理などなど、様々なテーマのイベントも開催する。月に1回開催される映画上映会の後には、そこで知り合った人たちがバーで感想を話し合ったりテーマを決めてディスカッションをしたりなど、交流は様々。
場所(ハード)から始まる場作りではなく、何かをしたいという人や、そこに集まる人の思い、体験や物語(ソフト)から企画が生まれるような、そんな場作りを大切にしているというのがとても印象的でした。「利害関係ではなく、好きなことを楽しむことで、自然に人と人が交わっていく場所」。コロナ禍になってから、地元・学芸大学に住む方々による貸し切り利用などの様々な使い方も増えたのだそう。
後半では、「コロナ禍とサードプレイス」「街とサードプレイス」「サードプレイスにおける空間/運営」「<場所>以外のサードプレイスはありうるのか」の4つのテーマでディスカッション。ZOOM枠の参加者には更に講師のお二人への質問タイムも設けられ、白熱した語らいが交わされました。
おふたりのお話を聞いていて印象的だったのが、「はじめから人との交流(コミュニティ形成)を目的にはしていない」というお話。「コミュニティは作るものではなく、生まれるもの」という考えのもとに、「好き」や「楽しい」をやっていくうちに、いつの間にか出会い、つながり、関係性が紡がれていく。
銭湯では、名前も肩書きも年齢も知らない人同士が、会話をしなくても裸の付き合いをしていく。番頭の大学生と地域の高齢者がお互いを見守る関係性を築く。高円寺でも学大でも、好きや楽しいをキッカケに繋がった人たちが街ですれ違い、「これから出勤?いってらっしゃい」なんて会話をしながら、街に溶け込み馴染んでいく。その中から生まれた新たなチャレンジや可能性を目にする機会などがある時に、この場をつくった喜びを噛み締めると、C/NEの上田さんはお話してくださいました。
小杉湯でも、利用者さんのプロジェクトとして始まったことが、「銭湯の新しい可能性を事業としても展開していきたい」という思いへつながり、株式会社銭湯ぐらしに発展。そこには平松さんも小杉湯も、役員などといった形では一切関わっていないそうです。みんなが集まり、つながったことで、結果として会社になったというお話が個人的にとてもいいなぁと思いました。まさに偶然の出会いが重なってできた「つながり」だと感じました。目的にしていなくても自然と出来上がっていく関係性。ひとつの「場」や「機会」をきっかけに生まれる縁って、いいな。って、思いました。
そして、もうひとつ私がとても印象的だったのは、「小杉湯となり」でも大事にされ、C/NE上田さんもお話しされていた、「お一人で来ている人、初めての人にも〝わたし、ここにいていいんだ〟と安心してもらえる目配り」を心がけているというお話です。
おふたりは小杉湯やC/NEを運営し始めて、そしてコロナ禍となって、より地域のことを考えるようになったと言います。自分の住んでいる街に「知っている顔」がある。お互いに気遣える人がいる。
銭湯は、実はお湯を分け合う、〝シェアリングエコノミー〟。だれかとなにかを分けあって、分かち合って共有し合う。それはお湯のように広い意味での〝モノ〟でもいいし、モノでなくてもいい。なにかを通じて、くつろげて。そこで出逢った人たちと一緒にいることが、『私』を〝本来の私〟に戻してくれる。
そんなやさしくてあったかくて、ホッ、と心落ち着けるような。
素の自分に戻れる場所が、これからの時代のサードプレイスなのだと思いました。
そして最後に。
「私にとってのサードプレイスってどこだろう?」
そう考えた時、真っ先に頭に浮かんだのが、ココ、シブヤ大学でした。
お互いがどんな意見や発言をしても笑わない。
互いを当たり前に尊重し合う空気がある。
それが今日の授業の空気と、シブヤ大学のカルチャーに共通する点なのかな?と思いました。
(授業レポート:芳賀久仁子)