シブヤ大学

授業レポート

2021/6/4 UP

【オンライン開催】【実践編】
超参加型読書会アクティブ・ブック・ダイアローグで読む
『人新世の「資本論」』

5月15日土曜日、オンラインで【実践編】超参加型読書会アクティブ・ブック・ダイアローグで読む   『人新世の「資本論」』が開催されました。当日の様子をレポートします。

アクティブ・ブック・ダイアローグ(ABD)とは、一つの本を複数人で
分担して読む→まとめる→発表・共有する→気づきを深める対話をする
という新しい読書法です。

今回読んだのは経済思想家・斎藤幸平さんのベストセラー『人新世の「資本論」』。
3月13日に【導入編】として、本書の「はじめに」を題材にABDを体験する授業を開催しましたが、
今回は【実践編】として384ページにわたる本編でABDを実践していきました。
講師は導入編に引き続き、アクティブ・ブック・ダイアローグ協会スタッフで合同会社10 decades共同代表の荒川崇志さんです。

当初は対面での開催を計画していましたが、緊急事態宣言を受けてオンライン開催へ変更したこともあり、東京に限らず全国各地から15名の方にお集まりいただきました。 

荒川さんの軽快な進行によるオリエンテーションと、グループに分かれての自己紹介を行なった後、授業は早速ABDの実践へ移ります。

まずは、各自の担当ページを読み要約する「サマライズ」の作業。
40分間という制限時間内に一人平均20ページ強を読み、手元の紙(4枚以内)に「サマリー」として内容を要約しなければならないということで、皆さん一度カメラをオフにして、黙々と各自の作業に打ち込みます。
オンラインでありながらも、皆さんがPCの前でサマライズに集中している様が浮かんできて、自然と緊張感が漂っていました。
この「制限時間内に読んでまとめる」という強制力が、一人での読書にはない「ABDのミソ」でしょうか。

サマライズの時間はあっという間に過ぎ、再びカメラをオンにして、各自のサマリーを発表していく「リレー・プレゼン」へ移ります。
対面であれば各自作ったサマリーを最初の章から順番に壁に貼り出してプレゼンしていくのですが、オンラインということで、画面を順に切り替えながら、皆さんがまとめたサマリーを紙芝居形式で発表していきます。
無限の価値増殖を目指すこれまでの資本主義を抜本的に見直し、「脱成長コミュニズム」を実現する方法を見出すことを軸に、プレゼンが進んでいきます。
各自サマリーを作る段階ではつかみきれなかった内容も、順番に発表していくことで理解がつながってく、これはABDならではの感覚かもしれません。
この時点で、参加者の皆さんは本書を分担して「読んだ」ことになります。

そして最後はリレー・プレゼンを見る中で、各自が印象に残ったり疑問に思ったことを共有する「ダイアローグ」の時間。
4名ずつのグループに分かれ、PDFでつなぎ合わされた50ページほどのサマリーを眺めながら、気づいたこと、疑問に思ったことなどことを共有していきます。
「もっともっと、と価値を求めすぎる資本主義のあり方を見つめなおさなくてはいけない」「本書で主張されているキーワードはスケールが大きく感じるけれど、それを自分の生活にどう落とし込んでいけば良いのだろう?」と、一人の読書では自分の中でなんとなく納得してしまいそうな問いをグループの中で共有することで、一人では気付けなかったであろう考え方を知ることができます。
ダイアローグを通して、読書をより「アクティブ」なものにできたのではないでしょうか。

あっという間の3時間でした。
参加者の皆さんからは「一人で読むよりも違う広がりがある」「ちゃんと自分で通読しようという気持ちになった」「他の人のサマリーで気になったところがあり、その部分をさらに深掘りしたくなった」といった声もあり、ABDの体験はそれぞれの読書観に対して何かしらの刺激となったのではないでしょうか。
この授業ができたきっかけは「興味はあったものの一人で読みきるのが難しそうで積ん読状態にあった本書を、みんなで読んで対話してみたかった」というところにあります。
今後はまた違う本を題材に、ABDの授業を企画する予定ですので、読書を愛する仲間と一緒に、いつもとは一味違った読書体験をしたい方、お待ちしています。