シブヤ大学
コラム

(前半)【co-ba×シブヤ大学】"公開振り返り会〜渋谷で場づくりをしてきた僕らが、オンラインで挑戦してみた!〜"を開催しました。


新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、オンラインの場づくりをスタートさせた「co-ba」と「シブヤ大学」。先日、その試行錯誤の数か月を共有&深掘りすべく、co-baとシブヤ大学共催で「公開振り返り会」を開催しました。

これまでリアルな場づくりをしてきたからこそ互いに共感し合う部分も多く、オンラインでの実践から企画設計のプロセスや工夫、新たな発見、更には今だからこそ語れる裏話など...予定時間をたっぷりオーバーしてしまったほど、次々とトークが展開されました!

今回はその様子を前半後半に分けてご紹介します。オンラインで繋がるためのコツや居心地の良い空気感を作るためのヒントが見つかるかもしれません。皆さんもぜひ、ここからそれぞれの"学び"を発見してみてください!

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co-baとは:

株式会社ツクルバが運営しているシェアードワークプレイス。2011年、渋谷にco-ba shibuyaが誕生。「あらゆるチャレンジを応援する」というテーマのもと、多くのコラボレーションを生む。その後、全国各地からオーナーの声がけがありフランチャイズ展開。現在は全国22拠点。2019年には「働き方解放区」をコンセプトにした「co-ba ebisu」をオープン。1階がコワーキングフロア、2階がレジデンスフロアとなっており、職住近接が実践されている。


シブヤ大学とは:

まちのあらゆる場所を教室に、多様な授業を開催しているNPO法人。2006年にスタートし、今年で14周年を迎える。年間約100講座ほど授業を開催しており、参加者は10代~60代まで様々。「誰もが参加できる場」にするため授業を無料で提供している。今年度4月にリニューアルを迎え、事務局スタッフも20代を中心とした新体制に。新たにミッション・ビジョンを掲げ活動中。



吉田めぐみさん(以下グミ):今回ファシリテーター務めますco-baコミュニティマネージャーの吉田めぐみです。"グミ"って呼ばれてます。現在、co-ba jinnanのコミュニティマネージャーとco-ba ebisuや全国に広げるネットワークの企画、コミュニティ運営に携わっています。今回は、リアルな場づくりをしてきた私たちがオンラインでどういう風にやってきたのか、「自由研究」だと思って聞いてもらえると嬉しいです(笑)

荻野高弘さん(以下おぎー):周りからは"おぎー"って呼ばれてるので、そう気軽に呼んでもらえたら嬉しいです。企画担当として、co-ba jinnanやco-ba ebisu の立ち上げを担当しておりました。コワーキングやコミュニティがもともと好きなので、そういう所のディスカッションも共有できたらいいなあ、と思っております。

大澤悠季(以下大澤):シブヤ大学の大澤です。昨年の4月にシブヤ大学にジョインしまして、今年度の4月からは、シブヤ大学リニューアルに伴って学長をしております。

深澤まどか(以下深澤):シブヤ大学の深澤です。大学生の頃に都市計画、コミュニティデザインを専攻していました。その時にシブヤ大学にインターンしたのがきっかけで、現在職員として働いています。今日は、リアルな場づくりを大切にしてきた組織同士色々と話せるのが楽しみです。

グミ:以前、シブヤ大学さんのイベントに出させてもらったり、活動するフィールドが一緒だったということもあって、お互いもともと知り合いではあったんですよね。だから今回の企画も飲みの席で一発で決まったんです(笑)そんな仲良しのところも見せながら進めていけたらと思います。

大澤:変なことを言わないように気をつけます。

グミ:残りますよ、アーカイブで(笑)


シブヤ大学の取り組みを振り返る

―オンラインでも自由に学べる時間を届けたい


大澤:
3月から6月までのすべての授業が中止になり、初のオンライン授業をスタートさせました。正直、最初からオンラインに乗り気だったわけでは全然無くて。ただ、リアルで集まれないからといって授業をやらないのはどうなんだろうと。こんな状況でも今までと同じように、大人も自由に学べる時間を届けていこうとオンラインで授業を始めました。

シブヤ大学では、「zoomでがっつり参加型」「zoom+YouTubeで視聴型」の2つの形式でオンライン授業を開催しました。今回はいくつかピックアップしながら、「どんな想いで授業を実施してきたのか」、「やってみての感想」、「感じている課題」について共有していきたいと思います。

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1.zoomでがっつり参加型

リアルの授業での「シブ大らしさ」を大切にしようと、オンラインでも「対話」が生まれるような仕組みをつくりました。全部で15個ほど開催しまして、忍者が先生の授業から民主主義について考える授業まで、内容は様々です。ピックアップしていくつかやってみての発見を話していきたいと思います。

●デンマークとつないだ連続授業「ともに学び、生きる」

まず一つ目は、デンマークにあるフォルケホイスコーレという教育機関の先生や学生さんとシブヤ大学の参加者が一緒に授業を受ける形の授業です。授業のなかで1時間弱のグループワークを取り入れて、対話メインの授業の実験、という気持ちで臨みました。

授業詳細:ともに学び、生きる

学生・先生・スタッフがごちゃまぜになってる感じは、意外とオンラインの方が作りやすいのかもしれない、と感じました。みんなが均一に並んでる感じというか、「あれ、先生どこ?」みたいな感じがすごく良かった気がします。リアルよりもクローズドな雰囲気がでて、グループ毎の一体感が生まれやすいな、と思います。


●対話メインで授業後もゆるやかにつながった授業「
自然(じねん)に生きる~循環型の社会創造

5回連続授業として開催しました。ここでは、スタッフが入らずに参加者のみの対話の時間をとってみたり、授業後に参加者同士でその後の近況報告をする会を開きました。

授業詳細:自然(じねん)に生きる〜循環型の社会創造〜vol.01

自宅から画面越しで話すことでリアルの場より自己開示がしやすいのか、普段なかなか話せないことも、家でリラックスしながらぽろっと喋っちゃう、みたいなことが結構起きていて。プライベートな話とかキャリアの話だとオンラインの方が話しやすい、という傾向もあるのかもしれないな、と思いました。あと、オンラインだと耳からの情報に集中できるので、専門的な話も抽象的な話も頭に入ってきやすい、という発見もありました。

2.zoom+YouTubeで視聴型
前から、授業よりも気軽にアクセスできるコンテンツが欲しいな、と考えていたこともあって、"ながら参加"できる形式として作りました。参加型の授業に比べると、暮らしの中の学びが多いかな、と思います。


●「シブ大ラジオ―世界のみんな、なにしてる?」

オンラインの特性を活かして、海外3か国の方とつないで生中継する、という形で行いました。専門的な知識ではなく、ゲストが暮らしのなかで感じた気づきに焦点を当てて、授業になるほどではないけど何か発見がある、みたいな、ゆるい場をつくりたいな、と思って開催しました。

授業詳細:シブ大ラジオ―世界のみんな、なにしてる?

リアルなコロナ事情が盗み聞きできる、公開zoo女子飲み会みたいな雰囲気になって(笑)それが好評だったかな、と思います。
視聴型授業のニーズが顕在化された気がします。家事をしながら聞いてくれてる人が多かったですね。


●「ジャズピアニストと遊ぼう」

個人的に、オンライン授業ってリアルの授業より場の設計をしちゃいがちなんですけど、この授業はジャズがテーマの授業ということもあって、その場で起きたこと全部学びにするつもりで、あえて場の設計をしませんでした。

授業詳細:ジャズピアニストと遊ぼう

反省点でもあるんですけど、やっぱりピアノの音色はリアルには勝てないな、と感じました。実際、「続きをリアルでやって欲しい」という声もすごくたくさんありました。いい意味で言えば、リアルな場も持っているからこそオンラインをやる意味とか、両方の場を持つ良さを確認できた気がします。また、YouTube視聴の参加者とzoomの参加者、両方への配慮の難しさも感じました。

― オンライン"なのに"良かったこと、オンライン"だからこそ"できたこと

大澤:シブヤ大学では授業後に参加者に向けてアンケートに答えていただいているのですが、そこからも色々と発見がありました。

まずは「対話を通した学び合い」について。オンラインでも良かった、と声が多く、話を聞くだけのセミナー形式じゃないものも需要があることが分かりました。次に「疲れない」ということ。オンラインなのにゆったりしていて心地よかった、という声がありました。個人的に"仕事帰りに来ても疲れない場"をつくりたいな、と思っているので、オンラインでそれを実現できたのは良かったです。そして「遠方でも参加できる」こと。東京外でも参加できて嬉しかった、という声もありました。

― 確立したいのは"シブヤ大学
流 対話型オンライン授業"

大澤:授業での発見、参加者からの声を踏まえて大事だと感じたことが3つあります。


1つ目は、学生・先生・スタッフ全員の「前提意識の統一」
リアルだとその場の雰囲気で感じられても、オンラインだと伝わらないことが多いように思います。例えば、シブヤ大学の授業が参加型だということ。他のセミナーと違いがっつり喋ってもらいます、ということを最初に言葉にして伝えることは、オンラインでは重要だと感じます。あとは、この授業で大切にしたいことを明確化すること。ワークに移る前に、共通の知識をインプットするための時間として"トークの時間"を取るようにしました。


2つ目に「リピーターを巻き込んだ文化づくり」
授業に複数参加してくれているリピーターの皆さんが、授業のなかで大きな役割を果たしてくれていて。たとえば、チャットでどんどん呟いてくれたりとか、グループワークの時に色んな人に話を振ってくれたりとか。ある意味、"文化"のようなものをつくってくれたように感じています。すごく助けられました。


3つ目に「スタッフ用メッセージグループ」
精神安定剤的役割です(笑)裏でのスタッフ間コミュニケーションツールとして、授業中何かあったらここでやり取りしてます。そうして反応を確かめておくのは、大事だなあ、と。

― 今後に向けて

大澤:雑談や出会いから生まれる"偶然の学び"がオンラインでは設定しにくいので、そこをどうつくるかを考えたいですね。あとは、今後、リアルな授業とオンライン授業の両方を進めていくことになると思うので、参加型・視聴型両方をそれぞれどうケアしていくかが重要だと考えています。


co-baの取り組みを振り返る

おぎー:4月に発令された緊急事態宣言を受けて、シェアードワークプレイスのco-baも運営を一部縮小しなければならなくなりました。今までオフラインを中心に活動してきたので、オンラインで何をやれば良いのか分からなかった。その中で始まったのが、オンラインのコミュニケーション実験「Hello!co-ba Project(ハロコバ)」です。4月上旬から7月末までの期間で、全13コンテンツ、29本のnoteをリリースしました。noteのフォロワー数は10倍の1,030人ほどに増加、閲覧数も月平均200ビューだったのが2,100ビューまで増加しました。具体的なコンテンツとしては、オンラインランチ会、公開企画会議、zoom背景の展開などいろいろと実験しました。

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今回は「どういう考え方で取り組んできたのか」、「やってみての学びと発見」の2点を共有したいと思っています。やっていくなかで少しずつ目的やテーマが変わっていったので、season1・2・3としてそれぞれ話していきたいと思います。


season1(4/13~:緊急事態宣言の発令時期

オフライン中心だったイベントやコンテンツをクイックにオンラインで実施してみました。オフラインの思考でオンラインのコンテンツに取り組んだ形です。


まず行ったのが、オンラインランチ会「hello lunch」です。各回テーマを決めて30分間、参加者は5~10名程度でした。毎日やることで、運営課題を高速で改善できたのが良かったです。また「参加はしないけど、聞いていたい」耳だけの参加に需要があることに気がつきました。オンラインで良質なコミュニケーションを取るためには、5,6人くらいの少人数が良いことにも気づきました。


そして同時に、オフラインで毎月実施していた「入居者交流会」を「co-ba RE-MIX」と題して、オンラインでやってみたらどうなるか実験してみました。オンラインでは最初から最後までいなくても良く、短時間の参加が可能になることは、大きな気づきでしたね。一方で、オフラインでは普通にできる名刺交換ができないので、連絡先の交換が難しいことにも気づきました。ただ、この経験を経て、co-baの会員さんが「HELLO!my name is...」という新サービスを創りまして。バーチャル背景にすることで名刺代わりになるサービスです。


season2(5/7~:緊急事態宣言の延長

season1を通して、オンラインの可能性ってあるよね、ということに気がつきました。そこでseason2ではオンラインの可能性を追求してみる企画を考え始めました。


一つは、60分で会員さんにインタビューして、それを3セットお届けするラジオイベント「Hello co-ba Radio」。会員限定でライブ配信し、後日アーカイブとして発信しました。ライブで聞いているメンバーは20~30人でも、アーカイブで発信することで200回、300回聞かれたりとか、アーカイブの可能性と、裾野が広がりました。あとは、実際に話している人だけでなく、チャットで視聴者とインタラクティブなやり取りが可能だと感じました。

交流会も「co-ba RE-MIX vol.2」と称して、新しくプレゼンタイムを準備したり、コンテンツを仕込んだりと、少しアップデートした形で実施しました。多目的(交流、プレゼン、雑談など)になると、オフライン以上に参加者の目線合わせが難しいんですよね。例えばオフラインでプレゼンする場合は、前で聞いている人もいれば、奥の方で一対一で話していたり、グループで話していたりする人もいる。自分の居場所を作れると思うんですよね。でもオフラインだと参加者が均一に見えてしまうので、同じコンテンツを聞く必要があり、その分目線合わせが難しくなる。最初に「どういう目的できているのか」絞ることがすごく大事なんだな、と気づきました。


season3(6/15~:休業要請緩和

社会的にオフラインが徐々に復活してきたこともあり、オフラインとオンラインをミックスしたらどうなるのか実験しました。

オンライン・オフラインフュージョン企画として、これまでやってたラジオ企画を、co-baの館内、リアルな場で案内してみました。実際にco-baにいる人から「何を流しているんですか?」と聞かれて、コミュニケーションのタネになりましたね。あとは、パブリックビューイングのように特定のコンテンツをリアルな場で共に視聴することで、新しい共通体験になるんじゃないかな、と妄想したり、オフラインとオンラインのミックスは可能性が広がるなと感じています。

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― 今後に向けて

おぎー:season1ではオフラインの思考で考えました。n対nでそれぞれに繋がるのがオフラインの理想形だと思っているのですが、これをオンラインでつくるのは難易度が高いと感じています。今後どうやっていくのか、まだまだ課題があるところです。
season2を経て可能性があると感じたのは、ラジオ企画のように、ひとつのコンテンツをつくって配信する形。オンラインの特性を活かせるスタイルだと思います。
season3では、オンラインとオフラインを融合させました。オンラインだけでなくオフラインでも共通のコンテンツを視聴することで、共通体験が生まれ、新しいつながりに発展する可能性があると感じました。
それぞれ特性の違いはあるんですけど、今後はその違いを活かしてコンテンツづくりを進められたら良いんじゃないかな、と思います。

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後半クロストーク編に続きます。

▼当日の様子
https://www.youtube.com/watch?v=4ciMo-bMJ3k&t=2946s