シブヤ大学リニューアルに込めた思い(第2回)
2020年春、シブヤ大学がリニューアルしました。新たな学長のもと、ミッションに基づいて様々な企画がスタートします。
新たなミッションには、事務局メンバー3名の経験が大きく影響しています。
せっかくなのでリニューアルを機に、シブヤ大学に関わることになったきっかけやミッションへの思い、そしてこれから目指したいことについて、ゆるやかに話してみたいと思いました。
新学長の大澤悠季、事務局の深澤まどか、田中佳祐による対話形式で全3回に分けてご紹介していきます。
●第1回はこちら
※この記事は、3月上旬に話した内容をまとめたものです。新型コロナウイルス感染拡大による社会の変化に対して、今後の取り組みも変わってくる可能性がありますが、シブヤ大学としてどのように考え対応していくかなど、別の記事を通じてお伝えしていく予定です。
「渋谷」にある大学として
田中:シブヤ大学がスタートした2006年と今とでは、SNSが当たり前になって個人で気軽に発信できるようになったり、インターネットで学べるコンテンツが増えたりしたこともそうですが、「渋谷」に対してのイメージも大きく変わったよね。
深澤:「渋谷」ってオフィスも多いし、人が多くて、ビジネス感がある。全体的に、忙しい街、少し気合いを入れて行く場所というイメージがありますね。元々はストリートカルチャーとかファッションのイメージが強かったのかもしれないですが、今はサブカル感はあまり感じない。
大澤:だからこそ、渋谷という街にシブヤ大学がある意味や、あえて渋谷の街に足を運んでリアルな場で学びたいことって何?ということを考えて、シブヤ大学も時代に合った形にしていきたいね、と。
田中:そもそもシブヤ大学が必要なのか、あえてやる意味はなにか?というとこから考えましたよね。やるからにはやっぱり自分たちが行きたい場所をつくりたいってところから。
一人だけでは考えにくいことを、考えたり学べる場があったらいい
大澤:そういうところから話をしていく中で、自分一人では考えられない社会のことや身のまわりのことを、対話を通して自分のこととして考えていく場があったらいいなという思いにたどり着いて。
もしかしたらそれは、SNSでは話しにくいことだったり、飲み会とかでも真面目だねと言われちゃうことだったりするかもしれない。だけど、ニュースや世の中で起きていることに感じているちょっとした違和感や、普段なかなか話す場所がないけど、本当は考えてみたいことついて考えて共有できる場がほしいなと思ったんだよね。
2020年2月開催 「都市型工房と考える小さな一歩」
深澤:そうだね。個人のやりたいことや趣味を実践する場、というだけでいいんだっけ?という議論もしましたよね。
田中:個人の趣味や習い事の場は、シブヤ大学としてあえてやらなくてもすでにたくさん機会があるんじゃないかと思うんですよね。僕は趣味的に本屋でボランティアをしていたり、大澤さんもまどかさんもすでにそれぞれ趣味や活動の場を持っているし、自分で行動したり発信したりすることは、気軽にできる気がする。
深澤:個人のやりたいことを表現する機会はすでにあるね、となった時に、あえて渋谷に集まって誰かと一緒に考えたいことって何だろうと思うと、社会で起こっていることや変化に対して、自分はどう感じるかとか、正解がないことをみんなで考える場所があったら良いよね、と。
大澤:例えば、社会のことに関心はあるけれど、自分で行動するまではなかなか難しかったり、続かなかったりする人は結構いるんじゃないかと思うんだよね。私自身もその一人で、本当は話してみたい未来のことや社会のことを安心して話せる機会が少ない自分みたいな人のための場に、シブヤ大学がなったらいいなと思ったらわくわくしてきて。
自分の意志を持って行動すること、それが周りに影響を及ぼすことができると信じて、行動に移したいと思う人たちにとっての学び場をつくりたいと思って、新しいミッションを掲げました。
シブヤ大学の魅力は、大都会に残る田舎っぽさ
深澤:ミッションは新しくしたものの、今のシブヤ大学の雰囲気を変えたいかというとそうではなくて。一人一人が学びたい気持ちを大事にしていて、ゆるくて自由で楽しそう。これまでシブヤ大学が培ってきたものをがらりと変えるというわけでなく、今あるいいところを維持したまま、時代に合わせて必要な部分を変えていけたらと思っていて。そんな器用にはいかないんですけど(笑)。
これまで大事にしてきたことの中には、一人の"わたし"として参加できる場所だということがあって。所属や職業、年齢で分けることなく、一人の"わたし"の関心や意見を持ち寄って授業を受けたり、授業をつくったりできる。すごくフラットな、個に寄り添うプラットホームだなという感覚があったので、そこの部分はこれからも大事にしたいです。特に渋谷みたいなさまざまな人や企業が集まってきている場所では、個に戻れるプラットフォーム的な場所って、そんなにないんじゃないかと思うので。
大澤:"大都会だけど田舎っぽい"、人と人の心地よいつながりがある感じ。
2019年11月開催 「渋谷のまちから、地図感覚をみがく」
深澤:そんな安心感のある空間だからこそ話せることとして、「個人と社会」というキーワードが出てきましたね。
田中:今個人が社会的なことを発信したりして、ネットで炎上しているのを見たりすると、ネットでの個々の発信はどんどん窮屈になっているかもしれない。
社会のことを話すには、ネットだけではなく直接集まる場所があった方がいいかもしれないし、職場や学校だと自分の立場や属性に囚われてしまって話せないことがある。だったらそういうものと離れたシブヤ大学のような場所でなら話せるんじゃないかな。
毎月開催しているボランティアスタッフ説明会の様子
大澤:そういう意味で、私の中にある目指したい光景の1つが、留学していた学校の雰囲気なんですよね。授業中や休み時間に、政治的なことや、社会的なトピックについて、「あのニュースどう思った?」とか「あの政策ってどうなんだろう?」という会話が普通になされているのを体験して、羨ましいなと思ったんです。英語という言語の特徴もあるかもしれないですけど、世界中から集まった国籍も年齢も違う人たちが、「私はこう思う」と個人の意見を堂々と言っていて。
日本でどうやったらこういう場が生まれるのかなと考えたときに、シブヤ大学のような誰もがフラットな「学びの場」では、個人の考えを話したり、自分と違う意見を聞いたりする機会を作れる可能性があるのでは、と思いました。
シブヤ大学の実際の授業でも、そういう光景に出会うことがあって。フラットで誰もが安心して話せる雰囲気はこれからも大切にしていきたいし、そんな対話が活発に起きるような授業を作っていきたいと思っています。
---------------------------
3回目は、これから目指したいことを中心にお届けします。