シブヤ大学

授業レポート

2017/6/23 UP

SHIBUYA CAMP 2017

「SHIBUYA CAMP」は、普段はキャンプできない大都会東京のど真ん中、代々木公園で本当にキャンプをしながら、自分を助ける力、について学ぶプログラムです。
私たちは、重要な意味を持つ3月11日の、15時に、代々木公園の原宿駅側、モザイク広場に集合しました。

授業は、ミッショントレーナー浅野竜一さんからのプログラムの概要説明、自助初級講座でスタート。そして、黙祷。このキャンプの意味を、また目的を再確認させられました。 簡単な自己紹介の後、5 - 6 名ずつに4 班に分かれ、第1 回目のフィールドワークへ。
この第1 回目のフィールドワークでは、班ごとに、青山、原宿、渋谷駅、八幡のいずれかへ向かい、発災後に起こりうるその地域特有の危険ポイントを調査しながら、安全に代々木公園まで向かうルートを考えました。

約1時間半の調査の後、代々木公園に戻ると、まず明るいうちにテント張り。テントを張るのももちろん訓練です。持っていても張り方が分からなければ、テントになりません。
『使えない道具は持たない』
この言葉も浅野さんが繰り返し伝えている言葉の一つです。

AAR (After Action Report) では、各班代表者から、各地域の危険箇所等がシェアされました。 例えば、人の多さというポイントでは、土曜日の昼間渋谷ということもあり、人出が多かったと報告される地域が多かったのですが、住宅が多い八幡では、それほどではなかった、という違いがありました。

各班の報告後、浅野さんから「発災後、移動せずにそこに留まるという選択肢も持つべきだ」という説明がありました。 その場が安全であり、体温保持、体力温存という点で問題無いと「自分が」判断できるのであれば、その場に留まってもよいのです。 私たちは、これまで避難訓練というものを受け続け、発災後は移動しなければならない、という考えが染み込んでいます。 しかし、これまで私達が受け続けていた「避難訓練」は、避難させる側の訓練だったのです。 これは、本当に目からウロコでした。

ここで重要なのは、「自分が」決めるということです。 発災後その場所が危険かどうかを判断し、移動すべきか否か、向かうべき場所、またそこへの経路は自分で決めなければなりません。
もちろん、その判断に必要な情報を集めるのも自分です。
大勢の人の流れに呑まれずに、間違ったあるいは不明瞭な情報に惑わされずに、安全な場所へ自らを導かなければなりません。
さらに、浅野さんは、発災後は携帯電話の電源を切ってしまうくらいでいいとも仰っています。 その理由には、「バッテリーを残しておくため」、もありますが、「信頼性の低い情報に惑わされないため」でもあります。 また発災後、自助のために必要な情報は半径300 m のものだけでよい、とも補足されていました。
(伊東詩織)



テント設営は、アウトドアブランドのLOGOSさんからレクチャーを受けました。
使用するテントは、なんとポール1本で立つシンプルな構造!小さい頃にキャンプに行った思い出が…など話しながら早速自分たちでたててみます。テントが並ぶと、「代々木公園に泊まる」ことに自然とわくわくしてしまいます。みんなで一緒にテントを立てることでさらに交流が深まっていきました。

フィールドワークを行ってきた各チームで、どんなところが危ないか、地震が起きたらどうか?といった視点で見えてきたことや分かったことをまとめ、全体に共有します。普段歩いているような街も、視点を変えてみると違う世界が見えてきます。
4つのエリア(センター街/竹下通り/青山/代々木八幡)に分かれたので、他のエリアの結果も前のめりに聞く参加者のみなさん。浅野さんからは、project72のパンフレットを使って、非常時の考え方についてもレクチャーがありました。

私が印象に残ったのは、例えば大きな地震が来たとき、自然と「逃げる」という感覚になっていないか?という話です。浅野さんによると、「体力・体温・水」の確保ができるかどうかが重要で、耐震構造のしっかりした建物の中にいるなら時にはとどまる判断も必要になるとのことでした。
第1回目のAARは、発見も驚きもある内容になりました。
(菅井玲奈)



食事は、「かまどベンチ」で作っていただいたパエリア(夜)、豚汁(朝)でした。
かまどベンチは座るところを災害時に外すことで、かまどとして使用できるベンチです。
なぜ、被災訓練でパエリアなのか?疑問に思いましたが、パエリアの本場では屋外で薪を使用して作っており、頂いたパエリアも代々木公園の間伐材の薪を使って作っていること。しかも、お米は非常食となるアルファ化米を使用していることを聞き、納得しました。調理されていたからかもしれませんが、初めて食べたアルファ化米は普段、食べているお米と変わりがなく、美味しく頂きました。
そして、朝に頂いた豚汁は温かくて、なかなか冷めません。その秘密は、ごま油でした。ごま油が表面に膜を作ることで熱が逃げにくくなる。いつまでも温かい豚汁を頂けたことおかげで、体の芯から温まることができました。
寒い環境だったので、尚更、温かいご飯が食べられることに有難みと感謝を感じることができた時間でした。
(野原邦彦)



夕飯の後は、毎年恒例のゲストトーク。
今年のゲストは、様々な災害支援活動を行っているスマートサバイバープロジェクト(SSPJ)の外所一石さん。とにかくかっこいい災害支援コンセプトトラックとともに登場です。
SSPJは、3つの活動を行っている団体。必要な人に必要な物を必要な分だけ届けるウェブサービス「スマートサプライ」、防災教育のプログラムを行っている「スマートアクション」、そして、防災用品をポップにかっこよく作り変える「スマートプロテクター」の3つです。
この「スマートプロテクター」をたくさん積んだ車がコンセプトトラックです。
とかく見た目が残念な製品が多い防災グッズ。人に見せたくないから部屋やオフィスの奥の方に隠され、肝心な時に使えないということがよくあります。それを解決するのが「スマートプロテクター」。アーティストとコラボした「消化器アート」や、普段着としても使える「燃えないダウン」「リフレクターブルゾン」「防災頭巾にもなるトート」など、いつもそばに置いておきたい防災グッズの数々を紹介していただきました。
防災という、必要だけど難しいジャンルをポップに親しみやすくしているSSPJの活動は、シブヤキャンプと同じ思想が流れている。そんな風に感じたゲストトークでした。
(竹田芳幸)



「なるべく好きなものを食べる」
被災したとき、少しでもストレスを和らげるためになるべく好きなものを食べることが大切。
実際、自衛隊の訓練の中でも同じように教えており、可能な限り自分の好きなものを食べることで 過酷な環境でもPTSD(心的外傷後ストレス障害)などのリスクを軽減できるそうです。

「温かいものは身体を安心させる」
温かいものを摂ることは身体を安心させる効果がある。
そのため、安全ではない場所から移動する必要がある際はなるべく控え、 安全が確保できた状態で摂ることが望ましいようです。

「転ばないことが大事」
狭い場所や暗い場所で被災した場合、慌てて動かないことが大切。
出血することで生き残る可能性が格段に下がってしまうので、転ばないことが鉄則なんだそうです。
ただ、人の流れができてしまった場合、逆らうことで転ぶ危険があるので、 動かないよりも転ばないよう流れに乗ることも必要とのことでした。

「オープンストリートマップで被災地の情報をいち早く共有」
青山学院大学の古橋教授らが普及、推進に努めている「オープンストリートマップ(OSM)」という地図があります。
これは、誰でも書き込むことができ、災害が起きた場合なるべく早い段階で現場の情報を映像で共有できるツールになります。
目標としては1時間でドローンを飛ばし、さらに1時間で情報を処理。 災害発生2時間後には誰もが情報を共有できるようにしたいとのことでした。

僕自身、たくさんの気づきがありました。
日本に住んでる以上地震のリスクは絶対で、3.11を経験したにもかかわらず、まだ他人事だと思っていました。まずは自助。助かる人になる備えをし、助ける人になれるよう積極的に学んでいきます。
(稲本真也)



朝5時、寒さに震えながら起床。
「お出かけ途中の被災」をテーマにしていた私は寝袋なく、エマージェンジーブランケット2枚と来ていたコートで臨んだため、なかなか寝つくことが出来なかった。体温の保持がいかに大切か身をもって学んだ一夜となった。辛い夜ではあったが、何人かの参加者の方々も言われていたように、人間、実際に体験しないとなかなか行動に移せない、のだ。この経験が、「日ごろからエマージェンシーシートを鞄の中に入れておこう」というアクションに結びついた瞬間だった。

さて朝のフィールドワークは渋谷駅、丸山町、渋谷センター街、竹下通りの4つ。AARでは新たな発見がたくさんあった。
竹下通りチームが地下にもぐってみて気付いたことは、非常口の表示が下のほうに多く分かりにくかったとのこと。浅野トレーナーへ「地下に非難するのは安全ですか」と質問があったが、地下が安全とは限らず、また出入り口が少ないが故に中での混乱を招きやすくあまりお勧めしないとのこと。
実際3.11の際地下にいた参加者の方からも、出口に通じる階段が斜めになっており「ここにはいられない」と思ったとの経験談も。
丸山町チームは、いきなり酔っ払いと外国人の喧嘩に遭遇。建物よりも、早朝の時間帯にいる「人」に恐怖を感じたようだ。また道玄坂で被災してしまった場合は「転ぶ」危険性が高まるため注意したい、との声も。
渋谷駅周辺は夜に比べると人が少ないものの、酔っ払いの反吐や血痕などの汚物が散見された。またセンター街チームからは、酔っ払った若者がタクシーを挑発していた、道に飲食店のごみが置かれていたため歩きづらかったという気付きの報告。

浅野トレーナーからは、この時間帯に渋谷を歩いている人々は、注意力散漫となり視野が狭まりがちという指摘が。早朝に渋谷の街を歩くという経験はほとんどの人が初めてで、建物はもちろん、時間帯による人や雰囲気などの環境の変化にも十分気をつける必要があると強く実感した実査となった。
(鈴木麻美)



(レポート:伊東詩織、菅井玲奈、野原邦彦、竹田芳幸、稲本真也、鈴木麻美、写真:吉川真以)