シブヤ大学

授業レポート

2010/10/8 UP

ジョエル・ロブション! 憧れの三つ星レストランの舞台裏へ

恵比寿ガーデンプレイスに行くと、まず目に飛び込んでくるシャトーレストラン「ジョエル・ロブション」。
そこが今回の授業の舞台です。

朝10時半。いつものシブヤ大学の雰囲気とはちょっと違い、みなジャケットやワンピース、アクセサリーで着飾った生徒さんたちが集まり始めました。通されるのは、長いテーブルにシワ一つないテーブルクロスが眩しい、優雅なダイニングルーム。古き良きフランスらしいクラシックな雰囲気で、かつゴージャスなお部屋です。テーブルには、ピシっと整えられたワイングラスや飾り皿が。今日はここで、三ッ星レストランのコース料理を味わいながら、総支配人の山地誠氏とエグゼクティブシェフの渡辺雄一郎氏からそれぞれお話を伺うという、贅沢な授業なのです。

まずは、レストランのランチのサービスが始まる前に、シャトーの中を見学させていただくことに。山地さんが「まずはキッチンからお見せします」と言った瞬間、全員が「おお~!」と歓声をあげました。まさかキッチンまで入れるとは思っていなかったので、一気にテンションが上がります。

キッチンは、この広いレストランにお料理を送り出す心臓部。そこは、本家フランスで培われたノウハウをもとに設計されている、とシェフの渡辺さんが丁寧に説明をしてくれました。台の高さや位置、備品の場所や照明などもお料理が最善の状況で作れるように全て計算されているそうです。そこでは、ランチのサービスに向けてたくさんの料理人の方がキビキビと野菜やお肉を調理していました。

次は、二階の広いダイニングルームへ。三階とは違い黒を基調としたモダンな空間にバカラのシャンデリアがきらめき、一同ためいき。その後は、めったに公開されることがないという地下のワインカーブへ。ワインの劣化を防ぐために、常に一定の温度と湿度に保たれているというカーブは文字通り、足元から天井までずらりとワイン。フランスの地方やドメーヌごとに管理されているそうですが、素人目にはどれがどのワインなのかさっぱりわかりません。というわけで、まったく素人な質問、「この中で一番高いワインはどれですか?」と聞いてみたところ、「ロマネ・コンティです」とのことでした。気になるお値段は百万円以上!他にも、色々な質問が飛び出し、和気藹々としたところで再び元のダイニングルームに戻りました。

ランチタイムになり、みんなでお食事を頂きます。その日に用意されていたのは、7皿のコース料理。そこで、シェフの渡辺さんがお料理の説明に来てくださいました。
「フランス料理は、マリアージュを楽しむもの。フランス語で“結婚”という意味です。つまり、食材と食材の組み合わせを楽しんでください」
そんな、渡辺さんのお料理に対する情熱がビシビシと伝わってくるお話を聞いたあと、さっそく実際のお料理を頂きます。最初の一品目は、オレンジ色の美しい器に入った宝石のようなお料理。それは、なめらかなカリフラワーのクリームに雲丹が入ったものだそうで。一口食べるなり、あちこちから「美味しい~!」「すごい食感~!」と歓声があがりました。それは、まさしくマリアージュ!雲丹ってこんな味にもなるんですね。お料理と言うものの無限の可能性を感じさせる一品でした。

そうして、フォワグラに五穀米のリゾット、イサキのポワレ、ハーブ豚のグリエと続く中、山地さんからフランス料理のマナーについてお話を伺います。マナーというとちょっと堅苦しいイメージですが、山地さんのふんわりとしたお人柄と、優しい語り口で、色々な質問が飛び出し、和気藹々とした雰囲気で進みます。カトラリーの扱い方やお食事中の姿勢といった基本的なことから始まり、ワインの試飲の仕方、パンの頂き方などなど。その間に出てきた各種パンの美味しさ、そのバラエティにも驚かされました。ちなみにパンは「どのタイミングで、どれだけ食べてもよい」とのことでした。

さらには、三ッ星レストランならではの「思い出に残る晩餐会」、ミシュランの三ッ星獲得までの苦労、そしてこのレストランの総シェフであるジョエルロブション氏のお人柄といった、まさしく「秘話」も続出。本当にここまで聞いてしまってよいのでしょうか、という充実した内容に、みんな時間を忘れて聞き入ってしまいました。もちろんお料理が出てくるたびに、味わったことのない食感や味の組み合わせに、誰もが幸せそうな表情です。

そうして、最後のデザートに時間には、再びシェフの渡辺さんが登場。
「メニューにないものをリクエストされたら?」
「料理人として大事にしていることは?」
など次々と質問が飛び出しました。渡辺さんは全ての質問に丁寧に答え、その後「でも一番大切なのは、お客さまに楽しんで、喜んでもらうことです。雰囲気を作り上げるのはみなさんなんですよ」としめくくられました。確かに、お料理を作ってくれるシェフと、すばらしいサービスをしてくれるレストランのスタッフの方々、そしてお客さまが三位一体になり、初めて思い出に残るお食事の場が生まれるんですよね。

お料理やサービスもさることながら、一番印象に残ったのは、やはり総支配人とシェフのお二人の、仕事人としてのプロフェッショナリズム、そして仕事という枠組みを超越したお人柄や人間としての姿勢でした。最高のサービスのためには、仕事人ではなく一人の人間としてのあり方が試されるのだなあと感じました。

「敷居が高いと思っていたけど、思いきってきてよかった」
「これからは、記念日はこのレストランで迎えたいです」
「フランス料理をもっと知りたくなりました」
「二度とない体験ができました~!」
とさまざまな嬉しい感想を頂き、夢のような数時間は幕を閉じました。ジョエル・ロブションの皆さま、本当にどうもありがとうございました。

(授業コーディネーター 川内敦子)