シブヤ大学

授業レポート

2007/10/15 UP

                     

「ワンガリ・マータイさんが、国際会議において『もったいない』を国際語にしよう、と演説しました。」

2年前、私の元に届いたニュースは、おそらくそんなものでした。

環境問題に取り組むマータイさんは、ある日、日本の環境政策について調べていた。そのときある論文で、たまたま「もったいない」の概念に出会った。それに感動したマータイさんが、ぜひそれを環境政策の国際語にしよう、なんて盛り上がってくれた。MOTTAINAI運動は、そんなマータイさんの、『自然発生的な感動』から生まれたのだった。

…と、私は、想像していました。
遠くケニアの地にて、『もったいない』のすばらしさに、マータイさんが打ち震えた瞬間を。

しかし実は、この運動には非常に『戦略的なプロセス』が存在したのです。仕掛人は、毎日新聞MOTTAINAIキャンペーン事務局長、真田和義さん。この方、2000年に、日本史の教科書を書き換えるまでに至った「旧石器発掘ねつ造」のスクープを報道した、ものスゴイお方。

一方マータイさんは、ケニアにおいて、貧困に苦しむ女性を中心に、植林をはじめとする環境保護活動(グリーンベルト運動)を展開した、これまたものスゴイお方。ケニア前環境副大臣にして、アフリカ人女性として初のノーベル平和賞を2004年に受賞しました。

この受賞に感動し、「マータイさんの活動と魅力は、日本の人々に伝えなくてはならない。」と、彼女の来日を強く推薦し、それを実現させたのが真田さんでした。但し、このとき真田さんはまだ、MOTTAINAIキャンペーンを思い描いていたわけではありませんでした。MOTTAINAIとマータイさんを結びつけるきっかけとなったのは、前環境省副大臣の高野博さんがこぼしたこんなつぶやきでした。

「『もったいない』を3R(リデュース・リユース・リサイクル)を推進する言葉として広めたいんだけどねぇ。」

このつぶやきに共感した真田さん。
このとき「MOTTAINAIをマータイさんに使ってもらおう!」と思いついたのです。

そんないきさつはまったく知らないまま来日したマータイさん。さっそく真田さんは、「もったいない」の存在と言葉の意味を、マータイさんに説明しました。

ものへの愛着心をあらわし、命を尊び、ものを大切にする気持ちのこめられた美しい言葉、「MOTTAINAI」。
この言葉を理解して、共感したならばぜひ公の場で使ってください、
真田さんはマータイさんにそう伝えました。

それ以来、みなさまもご存知のように、マータイさんは、もったいないを世界へ広める活動に大きく貢献してくれています。
たとえば、国連女性地位向上委員会での、「もったいない」の唱和。
これは、ニュースにもなりましたね。だから私も、冒頭で述べたように、少なからずこのことを知っていたのです。
新聞の一記事などで「もったいないを広めよう!」と訴えるよりも、保護活動の末に、ノーベル平和賞をとったマータイさん本人がこの言葉を使ってくれたら、否がおうにも話題になるという真田さんのもくろみは見事に達成されていたことがわかります。

このようにして始まったMOTTAINAIプロジェクトが成功するためには、三つの「○○ン」がキーワードとなっている、と真田さんはいいます。

まずは「ロマン」。「20世紀の問題は、21世紀に持っていかない。」これが、真田さんの志。これまでの活動からも強く感じること。そもそもこのロマンがあるからこそ下の2つがあるのです。

次に「ガマン」。この大きなロマンを実現するために、わからないことをわかるために、いろいろなものを見て、聞いて、勉強する、…志をかなえるための準備が必要なのです。

それから「ソロバン」。ガマンの末に、ロマンを形にするための、経済的な基盤。真田さんをはじめとして、風とロックの箭内道彦さんや、映画監督の紀里谷和明さんなど、幅広い研究員を抱えるMOTTAINAI Labは、もったいないブランドビジネスによる広告収入などを元に展開しています。利益が出るシステムを構築しなければ、持続していけません。これが、ロマンをかなえるための長期的な戦略を立てるのに必要な基盤なのです。

「MOTTAINAIを世界の合言葉に!」
アメリカ大統領選挙を控えたあの候補にも直訴した真田さん。

「MOTTAINAIを世界の合言葉に!」
来夏の洞爺湖サミットもにらんでいる真田さん。

「MOTTAINAIを世界の合言葉に!」
可能性は0じゃない。
「0じゃない」と「0」はまったく違うのです。

「MOTTAINAI」と「マータイさん」がであったのは偶然ではなかった。
だけどマータイさんがこの言葉に共鳴してくれたのは事実で、
そのおかげで、この言葉の意味をさらに広めたいと思う人が、世界にも、日本の国内にも、増えてきたのは事実。

「MOTTAINAIを世界の合言葉に!」
少しずつでもいい。

MOTTAINAIが、日本人にとっても、そうじゃない人にとっても、
今よりももっと、大きな意味をもつ言葉になればいいなと思いました。

でも、国際語になるってことももちろん大事だけど、最近、日本人がそもそもこの言葉を忘れがちなんじゃないかな?(自分も含めて。)と、個人的には思っています。
もっと、もっとこの言葉を大切にしながら生活していきたいですね。
MOTTAINAIの国NIPPON、の国民として。

そのためにも、自分にできること、もう少し本気で考えようと思いました。
まずは、ふるさと清掃運動会なんかも楽しそう。

(ボランティアスタッフ 天野咲耶)