シブヤ大学

授業レポート

2016/4/6 UP

創造的な「学びの場づくり」に大切なこと
~子どもの主体性を育む学習塾の現場から~

創造的な「学びの場づくり」に大切なこと~子どもの主体性を育む学習塾の現場から~


 


子供たちの「学ぶ意欲」を育む創造・探究型学習塾 a.school(エイスクール[http://aschool.co.jp/])代表の岩田拓真さんを先生に迎え、今回のThink Collegeが開催されました。


授業のテーマである創造的な「学びの場づくり」に大切なことについて、先生のお話を聞きながら、創造的とは?場をつくるとは?どのようなことなのか、何が大切なのかを改めて考えるきっかけとなる授業でした。


授業の前半は、岩田さんが現在活動されているa.schoolについて、後半は今回のテーマについて考えていることを話してくださいました。


 


◆a.schoolのイワタクです


a.schoolでは先生の呼び名は禁止なので、子供たちからはイワタクと呼ばれていますと自己紹介してくれた岩田さん。


小学校高学年から中学生を中心に、知識を教えるだけの勉強ではなく、子供たち自身の自ら学ぶ意欲を育てる教育を目指して活動されています。


イワタクさんは子供時代、好奇心旺盛で好きなものにはとことん夢中になるタイプでした。当時は自然が大好きで、石にハマっていた時期もあったそうです。なぜ石?不思議です。


 


大学進学後、自分のやりたいことが自由に学べる環境の中で、学ぶことの面白さに気がついたイワタクさんは、大学院でイノベーション(創造)について研究しつつ、教育関係のボランティア活動に参加したり、自ら創造性を育む教育プロジェクトを始めます。その経験を通じて、子供たちの中にある好奇心や創造性を育てることの重要性を感じ、大学卒業後に勤めていたコンサルタント会社を離れ、自ら起業。0から1を切り開く若者に始まりのきっかけをという意味を込めて、0と1が合わさってできたaの文字をつけたa.schoolが2013年に誕生しました。


 


◆モチベーションを大切に楽しくアクティブラーニング


a.schoolでは科目型と総合型の2つのスクールが開かれています。


特に総合型の探究・創造ラボでは、子供たちが興味を持ったテーマについて科目の垣根を飛び越えて様々な角度から研究することでより広い視野で思考する力を身につけることができるようになっています。


1.考える


2.実践する


3.振りかえる


この3つの要素を繰り返すことで子供たちの論理的思考力や試行錯誤力が鍛えられ、また様々な切り口の「知(研究)」に触れて、自分なりに発想を広げていけるようになるそうです。


同時に、楽しく学ぶことも大切で、ゲーム形式にして、堅苦しい雰囲気にせずに楽しく学べる場づくりを心掛けているそうです。


 


◆子供たちの知りたいギモン


ここで、実際に通っている子供たちが取り組んだテーマについて一部ご紹介。


小学生の男の子…メタボについて、お父さんから動物まで調べてみたら…


中学生の女の子…思春期について、男女50人に聞いてみたら…


中学生の男の子…美について、美人の顔のパーツ配分比から考えてみたら…


それぞれ自分の興味から始まって、ひとつの分野にとらわれずに様々な角度から研究していて興味深かったです。


特に思春期についての研究は、思春期を過ぎたであろう参加者全員が、過去の何か思い出してしまったような、複雑な反応が見られました。


 


少しのアイスブレイクを挟んで後半へ…


 


◆創造的な場づくりに大切なこと


後半は今回のテーマでもある創造的な学びの場づくりについて、探究・創造ラボのしくみを通して探っていきます。


ラボの場づくりでは、「伝えたいこと→プロセス→ファシリテーション」という流れを基本としています。


中でも最も重要なのが「伝えたいこと」です。ここが全ての原点でありその後の学びの源となる部分です。子供たちに伝えたいことは?子供たちが学びたいことは?その軸が決まったら、子供たちの学びの種を成長させるためのプロセスを設計し、ファシリテーションしていきます。


ファシリテーターの心得としてイワタクさんが大切にしているのは、自分が本気で楽しんで取り組む姿を、面と向かってではなく、後ろ姿や横顔で子供に見せることです。また、観察を重視して子供の個性をしっかりと見ることや、ほかの人と協力し合うこと、時には関わらずに放っておくことでうまくいくこともあるといいます。子供だけでは学びの芽は十分には伸びることはできません。


子供を一人ひとり見つめるファシリテーターのサポートによって、子供の好奇心は伸び伸びと枝葉を伸ばすことができるのでしょう。


 


最後に、学びの場づくりについて心掛けているポイントを教えてくださいました。


1.いつも着ている服をぬがす


2.好奇心の芽が生まれそうなモノを置く


3.様々な生き方をしている大人を呼びこむ


家庭でも学校でもない第3の場所で、日ごろのプレッシャーから解放されてリラックスした状態で、学校では出会えない人との出会いや新しい知の世界との出会いを通して、子供たちが成長するところ、それがイワタクさんのつくるa.schoolなのです。


 


授業のなかでイワタクさんは、子供の間に自分なりに生きる力を身につけて人生の大海原へ進んでいってほしいという想いを話していました。


あるスクール参加者の子供の声で、ここは身内に相談するような気持になれるところ、という言葉もありました。


 


イワタクさんが作ろうとする学びの場は、これから人生という大航海を始める子供たちの、家族ではないもうひとつの自分の居場所、時々立ち寄っては元気をもらう入り江のような存在になっていくのではないでしょうか。


伝えたい想いを大切にすること、そこから学びが始まるのです。


(レポート:木村芙佐子 写真:田中健太)