シブヤ大学

授業レポート

2016/3/16 UP

里山暮らしを考える。
〜愛知県三河山間地域をケーススタディに〜

このところ巷で、地方創生、地方移住、地域づくり、コミュニティなど、
“地方”や“地域”に関連したキーワードをよく聞きませんか?

そんななか行われた、
『里山暮らしを考える。~愛知県三河山間地域をケーススタディに~』の授業。

さて、今どきの地方暮らしとはどんなものなのか?
その真相を探るべく、いざ参加してきました!

来てくださったのは、地方にゆかりがありつつも、立場の違う3人の先生。

・各地で巻き起こる“地方ムーブメント”の全体の話
・愛知県の敷島自治区での具体的な活動例
・愛知県、奥三河のゲストハウス管理者の生の声

と、3つの異なる分野からたっぷり話を伺いました。

■  一人目の先生
月刊『ソトコト』編集長 指出一正さん



指出さんは、島根県「しまコトアカデミー」メイン講師、
広島県「ひろしま里山ウェーブ拡大プロジェクト」全体統括メンター、
高知県文化広報誌『とさぶし』編集委員、四万十市アドバイザーを務めるなど、
とにかく! 地方、移住関連に造詣の深いかた。

「2011年から“ローカルシフト”の動きが起こり、地方の中山間地に移住し、
起業するなどしておもしろいコトをはじめる若い人が増えてきましたね。
彼らは決して、出身地だから移住するというわけではありません。
そこに、都会ではできない魅力的な生き方、暮らし方があるからなんです」と指出さん。

たとえば、祖父母が住んでいた、その土地のお酒が好きなど、
何かしらのルーツを感じて移住する人を「Rターン」といい、
移住の新しいかたちとして増えているそう。

持続可能な地域社会を目指す島根県の企業「巡りの環(わ)」や、
福岡県糸市で狩りをして暮らす「狩猟女子」の畠山千春さん、
宮城県、唐桑(からくわ)半島に移住して街づくりに取り組む「ペンターン女子」、
広島県尾道市からはじまったセルフリノベーション集団「パーリー建築」など
日本各地で躍動する、熱~い人たちの話を聞かせてくれました。

さりとて、ここにあげたのは、ほんの一例だけ。
それほど人を引きつける、地方の魅力とは何なのでしょう?

移住したみなさんからは、こんな言葉が聞かれるのだといいます。
「地方は確かに、都会ほど便利ではありません。
でも、そこにはファンタジーがある。自分たちで未来をつくっていく手応え、
人とつながる豊かさ、仕事が直に生活に役立つことを実感できる喜びなど、
都心では得られないものがあるんです」。

地方での活動は、いわば小さな魚が群れになって大きな魚の形になる
“スイミー”に似ていると指出さん。
力を合わせて何かを成しとげる充実感が、ひとつの醍醐味になっているようです。

■  二人目の先生
敷島自治区、定住促進部長 安藤征夫さん



愛知県の豊田市役所を早期退職したのち、地元の空き家を紹介する活動をスタート。
平成21年に日本再開発プロジェクトを愛知県、敷島地区に誘致して以降、
I・U・Rターン者を巻き込んだ地域づくりを進めています。

いくら地方移住に憧れを抱いても、住む場所、仕事のことなど不安はつきもの。
安藤さんは、「空き家情報バンク」のシステムを立ち上げ
空き家ツアーを行うなどして、移住希望者の心強い味方になっています。

この地では、“敷島を愛するすべての人を、あたたかく迎え入れます”
というスローガンがあるそうです。

「最近の移住者のかたは、目的意識があってレベルが高いんです。
我々のような古くからの住人だと発想に限界がありますが
みなさんは、思いもつかないことを提案してくれます」と安藤さん。

地域によって取り組みはさまざまですが、地元住人だけで結託するのではなく、
移住者を柔軟に受け入れて、次世代のコミュニティを形成しようという
新しい動きがあるのだとわかりました。

■  三人目の先生
体験型ゲストハウス「danon(だのん)」運営管理者 金城愛さん



沖縄県那覇市出身の金城さん。
4カ月かけてヨーロッパを周遊するなど好奇心旺盛に生きるなかで
愛知県の事業「あいちの山里で暮らそう80日チャレンジ」を知り、
里山暮らしにはじめて触れて、魅力に感じたそう。

その後、「地域おこし協力隊」の制度で愛知県奥三河東栄町に暮らしをはじめ、
2015年に国の事業を活用し、築150年の古民家を使った
体験型ゲストハウス「danon」をオープンしました。

ゲストハウスは、“奥三河で暮らすように遊ぶ”がコンセプト。
観光パンフレットには載っていないようなところにみんなで遊びに行くなど
「~だよね」の意味の方言「だのん」からとった名の通り、
人々に親しまれ、交流が行われる場になっています。

金城さんの生き生きとした表情からは、
「とにかく来てみて! 楽しいから!」という思いがいっぱい。
この日、東栄町の役場から何人も応援するかたが駆けつけていて
その様子から、金城さんの充実した暮らしぶりが伝わってきました。

“今は新しい生き方、価値観が選べるいい時代”という言葉も聞かれた本日の授業。
クリエイティブに生きるために
地方で暮らすという選択肢が確実にあるのだな、と実感しました。

(レポート・星野真希子)