シブヤ大学

授業レポート

2016/2/29 UP

人に会いに行く旅をしよう。@群馬県 高崎市/みなかみ町


08:00 渋谷発 参加者18名を乗せて、高崎に向けて出発


バスの中ではコーディネーターの山口和也さん(以下ぐっさん)のキャニオニングガイドらしいノリで、参加者を盛り上げてくれます。車中は自己紹介や、高崎にまつわるクイズ。正解者には、上毛かるた。懇親会で枚数に応じて豪華賞品がプレゼント。
高崎へは最短何分で行けるでしょう?
A:49分  B:59分  C:109分
正解は…後ほど。
関越道の渋滞で、東北道から迂回していきましたが、あっという間に高崎へ着きました。

10:30 高崎着


群馬音楽センター横に着けて、群馬県庁職員、反町恭一郎さんのお出迎え。反町さんは、この日夜まで一緒に旅に同行して頂きました。群馬音楽センター内は、使用中のため残念ながら中の見学は出来ませんでしたが、高崎の音楽のある街のシンボルとして1961年に建てられました。上から見ると蟹に見えます。入ると空間の威力みたいな、びりびりしたものがあるので是非入ってみてくださいとの事です。


10:45 coco.izumi 合同会社シクスアローズ 亀田慎也さん


高崎を散策してcoco.izumに着いて、最初の会いに行った人は、高崎市で5人の子供を育てるイクメン代表の亀田慎也さん。高崎と言う街が大好きで、屋台通りなど色々な仕掛けを取り組んで、地域の文化を大切にしながら、様々な人を繋げる活動をされています。この、coco.izumは、元々音楽教室だったビルをリノベーションして運営。防音設備を利用していて音楽、ダンスなどお互いが共感、共鳴できる貸しスタジオ・ホールとして、沢山の人が想いを持ち寄る場所になっています。




2階に移動して、金曜セッション・特別編 
金曜セッションは、上手な人が、うまいだろうって戦いが勿体ないなとおもって、うまい下手ではなくて、楽しいを競う、どんな人でも楽しめるセッションです。
打楽器等で参加者全員の特別セッションが早速はじまりました。それまで見ず知らずの人が、音楽で一体感をつくる。その一体感が、本当に心地よくて、楽しい。笑顔の人もいれば、真剣に叩く人も。充実感たっぷりの時間でした。



その後に、なんで音楽のある街なのかを、歴史とこれからの課題を、反町さんにお話し頂きました。


なんで音楽の街になったのか? 1945年 高崎市民オーケストラ。一つのバンドから始まっているそうです。戦争間もないころ、発起人は井上房一郎。「これからの日本人は、一人ひとりの質を高めて世界のどこに行っても人間として歓迎され尊敬されなければならない」と、音楽は物が無くても、心を復興させるものとして、2年後に、群馬交響楽団という全国でも2番目に古いプロになったそうです。子どもたちにチェロとか楽器の経験、山に背負って普及活動、音楽を届けた事が高崎市民の音楽好きのDNAにかなり響いていると思っているそうです。


反町さんは音楽センターに高い価値を感じていて、自分たちの文化を自分たちが作ったという形にした事が、自分の人生の器となる物語を自分が選択して高崎に住んでいるとの事。逆に、ここ以上にもっと魅力がある物語があれば、他に移動するといった言葉が印象に残りました。自分の住んでいる街に、それだけの気持ちがある事が羨ましかったです。


今後の課題は埼玉スーパーアリーナ級のハードを作り拠点を新しい建物に移そうとの計画があるそうです。その描いている未来に音楽センターが無いのが勿体ないと反町さんは言います。そこで、3年前から始まったのが高崎civic vision runという街作り活動。市民が描く未来。音楽センターに限らず、未来について利害をもたらすことは? 大きいハードがあれば、良くも悪くも未来に影響するから一緒に考えて行動しようという活動です。共に未来を描く、やりたいことを選択する。どういう未来なら一緒に居たいかを考える、こんな近づきやすい県庁職員がいたらいいなって気持ちになりました。


12:30 昼食 


グループに分かれる予定していましたが、各々食べたい場所へ。高崎名物タレカツ丼のお店、ぐっさんおススメの、元祖鶏料理の「登利平」等それぞれが高崎のグルメを堪能しました。


14:00 株式会社BIO-hof Sakurai 桜井正喜さん


バスで15分程移動して、オーガニック食材店 BIOSK(ビオスク)へ。
さつまいもや、ごま、きなこ、味噌。レモンココナッツ。三角形のスコーンは生姜を使った一切、砂糖を使っていないスコーン等を頂きました。砂糖を使ってないとは思えなく位あまく、とても美味しかったです。




そのオーナー桜井正喜さんに就農からオーガニックの事をお話し頂きました。生まれは高崎、埼玉の大宮で30年。就農したいと埼玉で土地を紹介してもらったものの、自信を持って届けるイメージが湧かず、ドイツで1年有機農業の修行をしたのちに群馬へ。自分たちで種取出来る野菜の生産はしているけれど、規模は広げず農家さんの野菜を集めて加工しています。高崎という立地は生産者に近いそうで、本当に色々な出会いに恵まれて今があるそうです。




お店のコンセプトはオーガニック専門の直売店。賞味期限が短い野菜のケーキ等は店頭でも出しているものの、長く沢山の人に楽しんでもらえるようにビン詰商品などを作っています。ビオスクとは、BIOとキヨスクの造語で、将来的には、コンビニのように街にぽつぽつ出来て欲しいという理想がありました。オーガニックと無農薬はイコールではない事。BIOとついているのはそれなりにオーガニックで、ある程度分解される項目は、使用してもいいという考え方もあり、本当の意味、価値を伝えていければいいなとの願いもあるそうです。


14:50 山名八幡宮 神主 高井俊一郎さん


バスで少し移動して、山名八幡神社へ。鳥居の真ん中は神様が通る道なので、左右どちらかに遠慮して進みます。境内で、お話頂いたのは、まず、この恰好から謝らせて下さいと思いっきり私服の高井俊一郎さん。神主らしい神主ではなく話す内容を考えたら普通の方がいいのかな?と言う、考えあっての私服でした。




高井さんは、山名は生まれ育ちではないものの、後継ぎがいなかったので17歳の時に養子に入り、28代目となりましたが、うすうす神主には合ってないと気が付いたそうです。いろいろな事をやりたいなっと、海外や東京に行き6年近く神社を閉めていました。普通の会社では潰れていたところからの、立て直し。高井さんが思ったのは、神社としてのスキルより地域に開いて、関わってもらう事が大切なんじゃないか、機能性がないと神社の将来がないと感じて色々な事をされているそうです。


安産と子育ての神社なので、文脈と地域にコミットするのが大切で4年前に巫女カフェを作りました。萌え系じゃなくて「キッズマタニティ」をテーマにしたらいいかなって始めました。また、石段から上は神聖な場所で、お寺のカウンター越しなのを変えて、妊婦さんや病気のお婆ちゃんが来ても座ってお茶しながらお守りを出す。付加価値ではないが、お守りを受ける事で楽になってもらいたい場所づくりをやっているそうです。


時代によって神社の役割が違います。今の時代にあった神社、天然酵母のパン屋も作っていて、日常から来てもらう作る事が、これから目指すところと仰っていました。



15:30【ふるチャットカフェ・特別編:子育てしやすい街をつくるチャレンジ】
一般社団法人ママプロぐんま 都丸一昭さん
株式会社中広『ままえーる』編集長 結城奈津美さん


人に会う盛りだくさんの本日のラストは、ふるチャットカフェという番組の収録をしながら、都丸一昭さん、結城奈津美さんの二人のゲストを招いての高崎の街作り、高崎の子育て状況の談話でした。


都丸さんは沼田市出身で、高崎に事務所があり8割は東京からの仕事で、2つの拠点があって旅人のようなお仕事をされています。何かあれば東京までは、新幹線だと49分(行きのバスの答えはAでした)で移動出来るし東京のオフィスは半額以下に小さくすればトータル経費もちょっとは安くなり、高崎のオフィスと随時遠隔接続で、顔と顔が見えるようなインフラ整理をして子育て支援活動の環境を作っています。


結城さんに子育ての状況をお聞きすると、待機児童問題もないし、自分の教育方針にあった保育園・幼稚園に入れる事が出来るそうで比較的子育てしやすい環境との事。働く人間として高崎は商業都市なのでそこに住む場所も構えられ、生活と仕事が同じエリアは大きなメリットで、また、少し郊外に出ると田舎があり遊びに自然があります。適度に都会で買い物もしやすいと高崎の魅力をあげて頂きました。


群馬市区町村からの転入が多く、県外だと転入と転出が半々位。中山道の宿場町だった歴史もあり、外からの移住者が溶け込みやすく、言葉の壁(訛り)もないとの事で移住もしやすそうという印象を受けました。課題としては、会社は整っているけれど中小企業が99%なので風土がない事や、働き続ける女性が少ない、男性の育休取得率が1%未満と低いなど、前例がない事がやりにくく感じる事もあると言います。そこで「生みやすくて、育てやすい街」を情報発信して支援活動。ママ目線の旬な情報は、他の市区町村でも、きっとヒントになるような、貴重なお話でした。





17:30 高崎の夜「セレンディピティ・ツアー」オリエン&チーム分け
18:00 夕食(各チーム、地元の人の待つ”行きつけのお店”へ)
19:30 宿併設の「萬嵐」にて二次会(地域の方々も交えて懇親会)


宿に着いた後は、セレンディピティーツアーと称して、3人~4人のチームに分かれて、行きつけのお店へ連れて行ってもらい、食事をしました。自分は、現高崎市議会委員の、清水明夫さんに地元の居酒屋(三月兎)に行きました。ほっこりとした炬燵で、日本酒と美味しいつまみに、ディープな会話。懇親会では、上毛かるたの枚数に応じた、プレゼント等、楽しい時間を過ごしました。


 


~2日目~


07:00 出発 〜 朝食(ピッコリーノのパン)@バス内で
08:30 みなかみ着
株式会社キャニオンズ マイク・ハリスさん


2日目は、高崎から1時間で大自然へ行けるという実体験をしに、水上へ。スノーシュー体験前に、マイク・ハリスさんの日本に来てから今までの講演して頂きました。



ニュージーランド出身のマイクさんは、高校で日本語を勉強していて、忍者映画に嵌り面白そうだなと、大卒後に最初は白馬に行きました。東京に憧れ都会に住んでみた事もあったけれど、向いてないと気が付いて水上で働き始めました。利根川凄い、楽しいと水上を拠点に夏はラフティング、オフシーズンは他国へ行き、世界一のラフティングガイドになりたいと思ったそうです。夏は水上、冬は白馬に手伝い等して3年ほど働いた後、キャニオニングというスポーツに出会ったそうです。利根川は、春先は雪解けで水が増してハイウォーター、ワールドクラスの激流を楽しめますが、夏は水位が下がってスリリングに欠けるため、そこで新しくキャニオニング。2000年に、1人目の子供が出来るから株式会社にしてもっと大きくしないといけないと、キャニオニングだけで独立し、今のキャニオンズという会社が出来ました。


迫力のある映像が目に留まり、メディアやお笑い芸人が来て、どんどんキャニオニングが話題になったそうです。ガイドの仕事をしていると、30歳近づくと、いつまで出来るのかな?いつちゃんと仕事をするの?と、言われるけれど、ニュージーランドではガイドは国家資格のプロ。辞めていくのはもったいないから、皆が残れる会社を作りたい。他の会社のように、夏だけ稼いで、冬は雇えないではなくて、通年雇用するために、冬のビジネス、スノーシューとかスキースクールを始めたそうです。日本の雪山が素晴らしいから、いつかビジネスになってくると、12年位やって、ようやく安定収入になったそうです。


インターナショナルスクールに目を向けて、実際、その日はタイからのインターナショナルスクールでした。呼べば水上の知名度が上がる。インターナショナルスクールで来る人は富裕層が多いから、水上の素晴らしさを体験させれば親になり口コミなどで10年前の子供が戻ってくる。ようやくポツポツと10年前の生徒が遊びに来るようになったそうです。


キャニオンズでは、リフレッシュの提供を目指しています。東京はコンクリートジャングルなので、思いっきり遊んで、楽しくリフレッシュしてほしい。自然に繋がる事が成長の機会、やった事のない達成感。それはお客さんだけではなく、水上の人もリフレッシュ出来ると言います。他の地域が高齢化しているけれど、若い人が集まり、エネルギーになります。キャンドルナイトや観光地という事を作って、今はキャニオンズ6割、街の仕事4割でされているそうです。良いレストランを作っておもてなしの精神。水上のビジョン作りで、マイクさん自身が1,2年で面白い事が出来るとワクワクしています。


日本人以上に、水上、そして日本の将来を考えているマイクさん。母国の山もすごいけれど、4seasons mountainでは水上は一番。そう言って貰えるのは日本人として嬉しく思います。[world-class][refresh]マイクさんの生の声を聴きに、ぜひ水上へ行ってみて下さい。


[事業体験] スノーシューツアー 〜 雪上にて昼食


ウェットスーツに着替えて、スノーシューツアー。雨の予報で昼食での雪上は無理でしたが、願いが通じて雨が止み、時折日が差す場面も。スノーシューを履いて雪山を歩いて、時に滑り落ちる。キャニオニングのように激しさはないけれど、ワールドクラスの大自然の中を散策します。大自然にできた大滝を見て、枝からは春を感じさせる匂い、普段見逃すような発見がありました。激しくないけれど、意外とハードで、一ノ倉沢の中腹まで行きました。大自然の中で30秒間目を瞑って、大自然を感じる。自然と一体となった感覚になりました。



13:00 振り返りワークショップ


キャニオンズのベースに戻って、カレーを食べて振り返り。高崎は、都心にも近くて、自然にも近くい、いいとこ取りという意見が多く出ました。県外からの移民を受け入れやすい、都心に近く商業が発展している。子育てもしやすく、近くに自然がある。そして、音楽のある街。普段、なんとなく都会で生活をしていても、高崎線の終着駅「高崎」を目にしますが、なかなか知らなかった高崎を知る事が出来ました。




渋滞を予測していたものの、全く渋滞がなく、17時には帰路。この近さも水上の魅力の一つです。帰りのバスは、皆ぐっすり。人に会いに行く旅で最も静かな車内でした。


人に会う旅の醍醐味は、その地の人に会って、その地の事を知れる事。観光へ行くだけでは分からない発見がありました。そして、その地を愛する人の話を聞いて、高崎も水上も、この先発展をして新しい街に生まれ変わりそうな予感がしました。これから進化していく過程を、また見に行きたい。そう感じる事が出来たのは、旅の目的が「人」だったから。


皆さんも是非、人に会いに行く旅をしてみてください。もしかしたら、そのままそこに移住したいと思えるような出会いがあるかもしれません。


(レポート&写真:田中健太)