シブヤ大学

授業レポート

2007/7/6 UP

                               

今回で9回目となる戸栗美術館でのやきものの授業。
戸栗美術館では7月から新しい展示になり、『戸栗美術館名品展Ⅱ-中国・朝鮮陶磁』が始まりました。その展示に合わせて、今月の授業から中国のやきものをテーマに、その歴史や背景を学びました。連続授業で常連の生徒さんも多い中、今月から授業が抽選になったこともあり、今まで早めに申し込んで来ていた方が来られにくくなったり、初めて参加される方もいたり、授業の進め方も難しそう、と思いながら当日を迎えました。
でもさすがは中島先生。とっても分かりやすいご説明で、初心者の人でも常連の方にも楽しんでいただける様な授業の進め方をして下さいました。

「中国のやきものとはどんなものか知っていますか?」先生からの質問に半数以上の生徒さんの手が挙がりました。「では、実際に美術館などに行って中国のやきものを見たことがありますか?」その質問には数名しか手が挙がりません。それを予測していたかの様に、「では今日は実際に、普段あまり見ることのない中国のやきものにふれてみましょう。」と言う先生の挨拶により授業が始まりました。

“やきもの”と聞くとほとんどの人が日本の漆器や土器などを思い出すのではないでしょうか。実はやきものは日本より中国の方が歴史が長いのです。辞書で“JAPAN”と引くと“漆器”という意味が出てくるほど日本と漆器は関係深いもの。それと同時に“CHINA”と引くと“やきもの(陶器)”と出てくる。それほど中国とやきものは世界が認めるほど関係の深いもので、中国のやきものさえ理解すればやきものの全てが分かる!というくらい、内容も濃くて歴史も長いのだそうです。
それではこれからその中国のやきものについて一緒に学んでいきましょう。

①講義。まずは講義室にてプリントを見ながら先生のお話を伺う。

●中国最古の土器は今から8千年ほど前に遡ります。やきもののはじまりは、中国でも日本でも土器からはじまりました。それから2千年、徐々に土器に模様や色を描くようになる。これが彩陶(さいとう)・彩文土器と呼ばれるものです。その頃から、ものをキレイに見せる文化が広まるわけですが、ではキレイの基準とはどこからくるのでしょうか?当時は、“~に似ていてキレイ”という感覚で、~とは青銅器など金属への憧れから、焼き物に金属に似た色をつけて再現していたのだとか。そしてその色や模様の付け方も昔の人の知恵と工夫によりさまざま。

●低火度釉である緑釉陶(りょくゆうとう)は、銅を呈色剤とした鉛釉であり、その美しい色釉は青銅器に似た輝きを持つ。1200度以上で燃成される高火度釉である灰釉陶(かいゆうとう)は青磁(せいじ)や白磁(はくじ)へと発展。灰釉陶とはその名の通り灰で色をつけるもので、唐三彩(とうさんさい)とは白・緑・黄・茶・藍などの色釉(いろぐすり)で彩ったもの。

●元時代には白磁青花(はくじせいか)が誕生し、海外にも盛んに輸出されました。青花とは日本でいう染付けの意。白磁にコバルトで絵付けをした(つまり白地にブルー文字)磁器のことです。

キレイなものへの憧れが、器に色として表現されているのでしょうか。そんな風にやきものを見ると、徐々に色付く器の変化に興味津々になってきます。

②器を見る。~講義の後は実際に器を見て、触れる~
中国の器を見る前にまずは日本の伊万里焼に触れます。器に触れる際には指輪等の金属類のアクセサリーの着用や、器を高く持ち上げる事は厳禁という先生からの説明を受け、みなさん慎重に一人ずつ器を鑑賞します。

日本の伊万里焼。でも描かれている模様には日本には存在しない動物や植物が描かれているものも中にはあります。そんなところからもやきものが海外から伝わってきたものだとうかがえるポイントです。

③器を見ながら質問。

「初心者なのですが、器の違いを見分けるポイントはありますか?」
→「ではどこに一番目がいきますか?自分が目を惹かれた部分からでいいんです。模様が気になるのであればその模様はいったい何の模様だろう?その色は?など、徐々に勉強していけば違いも分かるようになりますよ。」

「土器とやきものの違いは何でしょう?」
→「土器とは800℃くらいで作ったもので、模様や色がなく、焼き閉まっていないものを言います。水を入れておくと吸収してしまいます。やきものはそれと反対でしっかり焼きしまってあるもの。それをガラスで覆えば陶器になります。更にガラスにうんと近いものは磁器になります。」

「灰にも違いがありますか?」
→「基本は松やイスという植物系の灰を使用し、溶けやすくする性質を持ちます。でも藁灰だけは溶けにくくしてしまいます。最近ではメロンやみかんなどを使っている人もいて、何ででもできるんですよ!」

と、何人かの生徒さんから質問があがり、先生が丁寧に答えてくれました。

④展示室に移動。中国の器を鑑賞。

展示室にあるたくさんの器を前に、先生がポイントを絞って説明をしながら器を鑑賞しました。模様のないやきものから徐々に色や模様が増えていく過程を見ることができました。先生の、自分の話は忘れてもいいから器をしっかりみて目に焼き付けて下さいと言ったコメントが印象的でした。

◆ポイント用語集
彩陶(さいとう)・緑釉陶(りょくゆうとう)・灰釉陶(かいゆうとう)・唐三彩(とうさんさい)・青磁(せいじ)・白磁(はくじ)・青花(せいか)・五彩(ごさい)・景徳鎮窯(けいとくちんよう)・天目茶碗(てんもくちゃわん)

(ボランティアスタッフ 室木花絵)

【参加者インタビュー】
1. キノシタヒロコさん(女性)
感想:「シブヤ大学はTVで見て、今回が初参加です。普段から美術館を巡るのが好きで、やきものの事は分からないけど興味を持ったので参加しました。初心者でも分かりやすく、濃い話を聞けたのでよかったです。」

2. ハセガワさん(女性)
感想:「今回で3度目の受講ですが、先生の説明がとても分かりやすく、実際にやきものを見るだけではなく、先生の解説付きで鑑賞できるので、毎回新しい発見があってとても楽しいです。」