授業レポート
2015/10/28 UP
旅から学んだ「場所や時間にとらわれない新しい働き方」
(働き方#かくめい)
「自分が望む働き方ができているか?」
この授業はそんな何気ない疑問から生まれました。
インターネットの普及やビジネスのグローバル化が進み、私たちの働き方は大きく変わりました。パソコン1台で世界中を自分の仕事場にする。24時間365日世界が動いている中で、自分に合った仲間と活動する。そんな場所や時間を自由に選択できる「自分に合った働き方」を見つけることは、毎日の仕事の充実度や楽しさとは違った意味があると思うのです。
そこで今回の授業ではメキシコを拠点に世界各地でコミュニティづくりをしている鯉谷ヨシヒロさんを先生としてお迎えして、世界各国を旅する中で見つけた「ライフスタイル」や「これから世界で求められる新しい働き方」について紹介して頂くことにしました。
「今日は少し風変わりな話もしますが、世界の反対側で変なことをしている兄ちゃんがいるな…という気分で聞いてください(笑)」そんな鯉谷さんの一言から授業はスタートしました。
メキシコやグアテマラ、タイ、日本などの各国を旅しながら、投資家や建築家、写真家、かくめいか(世界に広がるオープンな居場所とコミュニティ「ファイナルランド」の運営活動)としてマルチに活躍されている鯉谷さんですが、ご本人は特定の職業を意識したことはありません。
大学の就職活動の時、それまで異なった価値観を持った仲間がスーツやマニュアルを手にして同じ入り口に向かっていくことに違和感を感じていた頃、ロバートハリスさんの書籍「エグザイルス 〜すべての旅は自分へとつながっている〜」に出会ったのがキッカケでした。自分の現状と本の内容のギャップに大きな衝撃を受けた鯉谷さんは、就職活動を止めてそのまま旅に出ることを決意しました。
そして、東南アジア各国での出会いや体験から2つのことを学びます。
・誰もが自分の働き方を「普通」と思っているが、実はそうではない
・仕事は「人に与えられるもの」や「探すもの」ではなくて「自分で作るもの」
これらは、この後の鯉谷さんの活動に大きな影響を与える大切な心の柱となります。
約1年間タイで過ごした後に帰国。その後、日本各地の旅を終えた鯉谷さんはメキシコへ旅立ちます。もともと「ヒッピー」のコミュニティに属しながら旅を続けていた鯉谷さんは現地で偶然「レインボーギャザリング」に出会いました。
レインボーギャザリングとは、大自然にヒッピー達が集まり、何もない所から共同生活を作り上げていく社会実験的な活動のことで、コミュニティ内では自分ができることを自発的に提供して助け合いながら生活していきます。 また、馬に乗りながら各地を巡り、現地の環境活動などに取り組む「ホースキャラバン」を経験することで、「旅と仕事を両立すること」「お金や時間にとらわれない生活」の素晴らしさや可能性を実感しました。
「ヒッピー」と聞くとサブカルチャーやアンダーグラウンドなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、鯉谷さんは「都市のライフスタイルとの接点」を感じることが多くあります。 もともとヒッピー達はアクセサリーなどを作って旅をしながら生活をしている人達が多いのですが、その中で重要なことが「口コミでの情報交換」です。自分達にとって魅力的で有効な情報が、彼ら自身の旅のネットワークやコミュニティを介して世界中でつながっているんですね。まさに友達の友達の友達の関係。これって私たちが普段利用しているインターネットやソーシャルメディアの世界と似ていませんか?
現代のヒッピー達にとってもソーシャルメディアは有効なツールのようで、鯉谷さんのオフィスにも口コミで突然訪問(今晩泊めてください)してくる人がいるそうです(笑)
時間や場所にとらわれずに仕事と生活を両立しているヒッピー達と都市生活に身をおく私達。ソーシャルメディアを接点に考えると、意外と身近に思えてくるから不思議ですね。
現在はどこかに所属することで雇用や金銭を得ている「ピラミッド型」の働き方が資本主義社会の中心となっていて、どこか自由が失われていると感じている鯉谷さん。 そんな鯉谷さんには「これからの新しい働き方」を考える上での重要な環境の変化がハッキリと見えているそうです。
・現在、約50%の人達が「リピートできる単純作業」に従事しているというデータがある
・ニューラルネットワーク等、複雑な思考ができる人工知能が近い将来登場する
・単純作業は人工知能やロボットが行い、10年後には多くの仕事がなくなっていく
・これからの10年は「移動の世紀」となり、遠距離を格安で移動できるようになる
・インターネットやソーシャルメディアにより、時間や場所に限定しない仕事が増えていく
・人の手をかける仕事はクリエイティブな分野が中心となっていく
ヒッピー達は誰にも雇われておらず、仕事に対してコレクティブであり、時間や場所に捕われずに毎日を暮らしている。彼らが実践してきた「フラット型」の社会はソーシャルメディア等のバーチャルな世界へもつながり、そして今、都市のライフスタイルといったリアルな世界に広がり始めている。「そのバーチャルからリアルへの過渡期に私達はいるのです」と鯉谷さんは話してくれました。
シェアオフィスやコワーキングスペースなど、「新しい働き方」は私たちの周りで少しずつ形となってきています。これからみなさんには「働くことを前提に仕事に所属する」のではなく、「自分のライフスタイルに適した働き方」を見つけて欲しいという鯉谷さんの言葉が印象的でした。
(レポート:奥住健一)
この授業はそんな何気ない疑問から生まれました。
インターネットの普及やビジネスのグローバル化が進み、私たちの働き方は大きく変わりました。パソコン1台で世界中を自分の仕事場にする。24時間365日世界が動いている中で、自分に合った仲間と活動する。そんな場所や時間を自由に選択できる「自分に合った働き方」を見つけることは、毎日の仕事の充実度や楽しさとは違った意味があると思うのです。
そこで今回の授業ではメキシコを拠点に世界各地でコミュニティづくりをしている鯉谷ヨシヒロさんを先生としてお迎えして、世界各国を旅する中で見つけた「ライフスタイル」や「これから世界で求められる新しい働き方」について紹介して頂くことにしました。
■ 誰もが自分の働き方を「普通」と思っている
「今日は少し風変わりな話もしますが、世界の反対側で変なことをしている兄ちゃんがいるな…という気分で聞いてください(笑)」そんな鯉谷さんの一言から授業はスタートしました。
メキシコやグアテマラ、タイ、日本などの各国を旅しながら、投資家や建築家、写真家、かくめいか(世界に広がるオープンな居場所とコミュニティ「ファイナルランド」の運営活動)としてマルチに活躍されている鯉谷さんですが、ご本人は特定の職業を意識したことはありません。
大学の就職活動の時、それまで異なった価値観を持った仲間がスーツやマニュアルを手にして同じ入り口に向かっていくことに違和感を感じていた頃、ロバートハリスさんの書籍「エグザイルス 〜すべての旅は自分へとつながっている〜」に出会ったのがキッカケでした。自分の現状と本の内容のギャップに大きな衝撃を受けた鯉谷さんは、就職活動を止めてそのまま旅に出ることを決意しました。
そして、東南アジア各国での出会いや体験から2つのことを学びます。
・誰もが自分の働き方を「普通」と思っているが、実はそうではない
・仕事は「人に与えられるもの」や「探すもの」ではなくて「自分で作るもの」
これらは、この後の鯉谷さんの活動に大きな影響を与える大切な心の柱となります。
■ 60年代のヒッピー・カルチャーとソーシャルメディア
約1年間タイで過ごした後に帰国。その後、日本各地の旅を終えた鯉谷さんはメキシコへ旅立ちます。もともと「ヒッピー」のコミュニティに属しながら旅を続けていた鯉谷さんは現地で偶然「レインボーギャザリング」に出会いました。
レインボーギャザリングとは、大自然にヒッピー達が集まり、何もない所から共同生活を作り上げていく社会実験的な活動のことで、コミュニティ内では自分ができることを自発的に提供して助け合いながら生活していきます。 また、馬に乗りながら各地を巡り、現地の環境活動などに取り組む「ホースキャラバン」を経験することで、「旅と仕事を両立すること」「お金や時間にとらわれない生活」の素晴らしさや可能性を実感しました。
「ヒッピー」と聞くとサブカルチャーやアンダーグラウンドなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、鯉谷さんは「都市のライフスタイルとの接点」を感じることが多くあります。 もともとヒッピー達はアクセサリーなどを作って旅をしながら生活をしている人達が多いのですが、その中で重要なことが「口コミでの情報交換」です。自分達にとって魅力的で有効な情報が、彼ら自身の旅のネットワークやコミュニティを介して世界中でつながっているんですね。まさに友達の友達の友達の関係。これって私たちが普段利用しているインターネットやソーシャルメディアの世界と似ていませんか?
現代のヒッピー達にとってもソーシャルメディアは有効なツールのようで、鯉谷さんのオフィスにも口コミで突然訪問(今晩泊めてください)してくる人がいるそうです(笑)
時間や場所にとらわれずに仕事と生活を両立しているヒッピー達と都市生活に身をおく私達。ソーシャルメディアを接点に考えると、意外と身近に思えてくるから不思議ですね。
■ 人工知能。フラット社会。そして、新しい働き方。
現在はどこかに所属することで雇用や金銭を得ている「ピラミッド型」の働き方が資本主義社会の中心となっていて、どこか自由が失われていると感じている鯉谷さん。 そんな鯉谷さんには「これからの新しい働き方」を考える上での重要な環境の変化がハッキリと見えているそうです。
・現在、約50%の人達が「リピートできる単純作業」に従事しているというデータがある
・ニューラルネットワーク等、複雑な思考ができる人工知能が近い将来登場する
・単純作業は人工知能やロボットが行い、10年後には多くの仕事がなくなっていく
・これからの10年は「移動の世紀」となり、遠距離を格安で移動できるようになる
・インターネットやソーシャルメディアにより、時間や場所に限定しない仕事が増えていく
・人の手をかける仕事はクリエイティブな分野が中心となっていく
ヒッピー達は誰にも雇われておらず、仕事に対してコレクティブであり、時間や場所に捕われずに毎日を暮らしている。彼らが実践してきた「フラット型」の社会はソーシャルメディア等のバーチャルな世界へもつながり、そして今、都市のライフスタイルといったリアルな世界に広がり始めている。「そのバーチャルからリアルへの過渡期に私達はいるのです」と鯉谷さんは話してくれました。
シェアオフィスやコワーキングスペースなど、「新しい働き方」は私たちの周りで少しずつ形となってきています。これからみなさんには「働くことを前提に仕事に所属する」のではなく、「自分のライフスタイルに適した働き方」を見つけて欲しいという鯉谷さんの言葉が印象的でした。
(レポート:奥住健一)