シブヤ大学

授業レポート

2015/7/6 UP

企業の中で応援やサポートを得る
~社会貢献活動の新しい進め方~

・毎日、目の前の仕事だけに取り組む生活、味気ない!
・何か、社会貢献になるような活動をしたいけど、仕事が忙しくて。。
・社会貢献したい気持ちはあるけど、特別なスキルを持っているわけではないし。。

そんな日頃のモヤモヤ感を吹き飛ばす、今回のテーマはこれ。


 「企業の中で応援やサポートを得る~社会貢献活動の新しい進め方~」

先生を務めてくださるのは、全日本空輸株式会社 BLUE WINGプロジェクトを立ち上げた深堀昂さんです。


 


深堀さんは、(パイロットではない)総合職でありながら、小型飛行機の操縦資格を持っているほど根っからの飛行機好き。その飛行機好きが高じて入社したのですが、初めから社会貢献のプロジェクトに携わっていたわけではありませんでした。


入社当初は技術関係の業務だったそうで、現在のようなマーケティングの業務に携わった当初は、いいアイデアが思い浮かばなかったそうです。いろいろなお客の声を聞く中で、「実際に乗ってみれば良さが分かるよ」と言われたのがヒントとなり実現したのが、ウェアラブルカメラを使って国際線ビジネスクラスの機内の様子を紹介した斬新なテレビCMです。ご存知の方も多いかと思います。いろんな人の意見を率直に聴くという、深堀さんの姿勢が現れているように感じます。


さて、そもそもBLUE WINGプロジェクトとはどういったものなのでしょう?


これは世界で活躍する社会起業家の航空移動をサポートし、その代わりに広いネットワークと知名度を持つ彼ら(彼女ら)にPRしてもらって、航空会社の認知度・ブランド力を高めるというものです。


そう聞くと、「なるほど、そういう仕組みか」と思われるかもしれませんが、BLUE WINGプロジェクトは、深堀さんの4年にもわたる長い社内外における奮闘の結果、実現したものでした。



◇BLUE WINGプロジェクト


きっかけは入社3年目の2010年、パイロットの操作手順マニュアル作成などの業務に就いていた深堀さんは、ある日、街で見かけた一つのポスターに目を留めます。グローバル人材養成のための約1年間の外部セミナーだったのですが、会社の経営理念を実現するためには、自らが向上する必要があると考え、すぐに申し込みました。

そして、そのプログラムで出会ったのが世界的に有名なNGOの代表をつとめるジョン・ウッド氏であり、同氏との会話がきっかけとなってBLUE WINGにつながるアイデアが生まれたのです。


このアイデアについて、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、世界自然保護基金(WWF)といった国際機関やNGOで話を聞くと、いずれも航空移動へのニーズはあるとの回答。自信を深めることが出来ました。


しかし、ここからが苦難の連続。


持ち前のガッツで社内の様々な幹部にプレゼンをするも、「面白くない」といって突き返されることもしばしば。
うまくいかない状況が続きましたが、グローバル人材養成のためのセミナーの主催者で、それまでサポートしてくれていた一橋大学名誉教授の石倉洋子さんから「9回失敗したって、11回目で成功したらいい!」(10回目は?笑)と励まされ力をもらうなど、多くの方の支援も得ながら、着実に歩を進めていきました。


社内公募で集まった様々な職種・国籍・年齢の社員27名によるプロジェクトチームを立ち上げ、2014年2月、念願のプロジェクトスタート。



◇企業での社会貢献


プロジェクトのアイデアが面白くても、企業として取り組むには、様々なカベがあります。
なぜ、ANAがそのプロジェクトに取り組むのか?といった点は大きなカベでした。


しかし、欧米では社会貢献に積極的な企業の商品を選ぶ消費者が多く、そうした層へのアプローチ方法として効果的だということを、しっかりと伝えました。


また、社会貢献といっても、寄付やCSRとは違うビジネスなのであり、企業戦略の一部として重要な意義をもつのだということも粘り強く訴えることによって、カベを乗り越えたのです。

プロジェクトが軌道に乗るまでは、苦しい思いをしてこられたそうですが、4年間、粘り強く続けてこられた原動力は、仲間の励ましや支援にあったと言います。


当日、会場の参加者からは、「どうやったら素晴らしい仲間の助けが得られるのですか?」といった質問がありました。


深堀さんからは、熱意に尽きる、真剣に取り組んでいれば誰かが助けてくれる、との答え。深堀さんの場合は、「飛行機が好き!」「CHANGE MAKERS(社会起業家)カッコイイ!」という想いがプロジェクトを進め続けたのだと思います。


お話を聞いていて、企業の側も、相当に、社会貢献の土壌作りに取り組んでいる印象を受けました。企業の枠を中から拡げる『企業にとってのメンター(指導者・助言者)』として、企業の中の社会活動家が、今後いっそう求められるように感じました。

■先生の「ことば」


○BLUE WINGプロジェクトは、ビジネス。寄付ではない。
○支えてくれる仲間は大切。
○社会を堂々と変えていくCHANGEMAKERSカッコイイ!


(レポート:渡辺 岳夫)