シブヤ大学

授業レポート

2015/5/27 UP

東北の魅力を学び、伝える。
〜ものづくりを軸に、土地土地に根付いた暮らし方を見つめる〜

【私の「まなび」】


① 昔から受け継がれてきた伝統工芸と現代のデザインを組み合わせることで、
  新たな東北の魅力の発見につながっていく。
② 地方と東京: 両者がこれからどう関わっていくのか。東京が失いつつある魅力を地方が持っているのではないか。
③ 伝統工芸品に限らず、地方独自の文化や風習を見つめ直し新たな価値を見出すことで、
  様々な切り口から地方の良さを再発見できるのではないか。


【先生の「言葉」】


・東北をテーマにやるべきことがあるんじゃないか
・東北に伝わる価値は、人間が持ちうるスタンダードになりうる
・スタンダードとは暮らしを見つめる視点…そこには自分たちがより良く生きるヒントがある


【授業全体のレポート】


今回の先生は、東北のものづくりの魅力とその周辺を発信するプロジェクト「東北STANDARD」の代表金入健雄さんと、副代表でプロデューサーの唐津宏治さん。

最初に金入さんが活動を始めたきっかけを教えてくれました。

地元の八戸で7代続く家業の文具屋と本屋を何とかしたいと考えていた金入さん。
東京で修業した文具店伊東屋での経験をいかして、アートの視点を地方の場に取り入れることで地域の魅力を再発見できないかと考え、震災の1ヶ月前に八戸ポータルミュージアムはっちにカネイリミュージアムショップをオープンさせました。

3.11…東日本大震災を体験し、今こそ「東北をテーマにやるべきことがあるんじゃないか」そう思った金入さんは、伝統工芸の職人を1人1人訪ね歩き東北を一周。
手仕事に対する職人の思いとそれを取りまく背景を学ぶことで、それまでうまく言葉にできなかった東北の魅力に改めて気づき、東北のものづくりと暮らしを見つめる活動「東北STANDARD」を立ち上げます。

東北で大切に伝えられてきた伝統工芸の技と、その担い手達が見つめる未来を映像にまとめWebサイトで発信し始めます。
震災の半年後にはせんだいメディアテークにもカネイリミュージアムショップがオープン。活動の場を広げていきます。

東北STANDARDの商品は、職人とデザイナーのコラボ、職人と職人のコラボ、企業とのコラボなど形は様々。
従来のパッケージにとらわれず、その商品が身近な人の暮らしをより豊かに、そして商品のふるさとである自分の街を誇りに思えるような商品作りを目指しています。


閑話休題………日本全国津々浦々地域ごとのスタンダードについて考えるワークショップをはさんで後半へ!


後半は、東京生まれ東京育ちの唐津さんが、東北STANDARDのプロジェクトでは東京側からどのように地方に対してアプローチしていこうと考えているのかを教えてくれました。

日韓W杯や東京オリンピック招致の仕事を通じて東京の魅力や日本の良さを世界に伝えてきた唐津さん。
でも、東京が次第にアジアの他の都市と変わらない姿になり、個性が失われていく均質化の波に襲われるのではと危惧しています。
そこで、逆に地方にこそ均質化されていない価値があるのではないかと考え、地方のその土地だけが持つ価値に焦点を当てた活動「東北STANDARD」を金入さんと始めました。

地方の人が自分たちの言葉で自分達の魅力を発信していくことの重要性を踏まえた上で、唐津さんは、「東北に伝わる価値は、人間が持ちうるスタンダードになりうる」と言います。
これから始まる新たなスタンダードは、私達自身が自らのスタンダードを学び直す過程でそれぞれの生き方を見つめることなのかもしれません。

最後に、今後の東北STANDARDの展開を少し話してくれました。
更なるショップ展開に続いて、工芸の枠を超えた東北STANDARDが始まります。
地域に伝わる伝統芸能や地方発祥の文化、その地に伝わる風習などを丁寧に見つめ直していきます。様々な視点から東北を見つめることで、東北の良さを再発見できるのではないでしょうか。

金入さんと唐津さん。
八戸生まれと東京生まれ。
お2人の、東北らしい生き方を見つめ直そうとする活動は、
これからたくさんの光を浴びてますます枝葉を広げ、大きな樹に成長していくように思いました。

「スタンダードとは暮らしを見つめる視点…そこには自分たちがより良く生きるヒントがある」


(レポート:木村 芙佐子)