シブヤ大学

授業レポート

2014/10/22 UP

動物と会話ができる「ペットサイン」
〜 外国語を学ぶように犬の言葉を理解しよう 〜



私が小さいとき、とあるアニメで「あらゆる外国語や宇宙人語、動物語まで理
解できるようになる食べ物」なんていう夢のような道具が出たことがありまし
た。
その道具を使って、トラブルや謎を解決したり、たくさんの動物の友達を作っ
たりするストーリーに、幼い頃のわたしはちょっと羨ましさを感じたり。

けれどそんな道具がなくても、動物たちの仕草や行動が物語る「ペットサイン」
という言語を学ぶことで、彼らの言葉や感情を感じ取り、理解することができ
るのだそうです。
今回の授業は、「ペットサイン」がどういうものか、そしてそれが目指すペット
との関係や未来について学びました。


■細かな観察から始まるペットサイン

ペットと人が取ることのできるコミュニケーション方法は以下の3 つがありま
す。

1.人が日本語で質問をし、犬がそれに対して「はい・いいえ」で答える方法
2.心を深く通わせることで、直感的なコミュニケーション(心同士の会話)をと
る方法
3.動物たちの表す言葉「ペットサイン」を用いる方法

1、2 は高度なトレーニングが必要となりますが、3 のペットサインは人が学ぶ
だけですぐに応用することができます。

ペットサインを扱う上で大事なのは、彼らの仕草や表情を細かく観察すること。
彼らの示すサインの一つに「顔の表情」があり、目の形や口角の上がり方など
で豊かな感情表現をしていることを知りました。

授業内では嬉しい時と嫌がっている時の写真が映し出され、「全然違うね」など
と納得する声が上がりました。
また、動物たちの「見つめる」という動作は「相手に伝えたいことがある」と
いうサイン。
目線に気づき反応してあげることで、動物はその相手に対してより信頼を寄せ
るのだとか。
こうした細やかなコミュニケーションは、動物たちに「共感性ホルモン(オキ
シトシン)」を分泌させ、これが彼らの愛情表現や深い絆をより深いものにした
り、子育てに向けるバイタリティーへと変化させたりするのだそうです。

とても繊細な彼らのハートにきちんと応えてあげられているか、という自問に
対してどきりとしてしまいました。


■尻尾の振り方だけでも多様な感情が表れている

ペットサインが用いる手段を知った次は、それが「何を示しているか」という
具体例です。
最も分かりやすいのは、尻尾の動き。
たとえば犬の場合は、尻尾の降る高さ、尻尾の振り方、尻尾の形状それぞれが
異なることを示しています。

尻尾の高さは、高いと「俺のほうが強いんだぞ」という優位・支配の感情を示
すのに対し、低いと「怖い」「ごめんなさい」といった服従・敗北の感情を示し
ます。
また高さはおよそ30 度ずつくらいで6 段階に分かれているそうで、とても細か
な感情メーターとして機能しているのだと知りました。


■ペットサインを学ぶことで、ペットと人のどちらもがもっと幸せになれる

ペットサインを学び、彼らに寄り添うことは飼い主である私たちにもより良い
効果を与えるといいます。
その一つとして上げられていたのが、ペットロスの軽減。
家族として、友人として大切な存在であったペットが亡くなり、飼い主が深い
ショックを受けてしまう「ペットロス」の原因に、生前ペット達が望むように
接してこれただろうか、という飼い主達の後悔があると田村さんは言います。

ペットサインを知り、彼らが何に対して喜びを感じるのかを理解することで、
最期の瞬間まで彼らの意思を尊重することができれば、飼い主たちの後悔も減
らしていくことが可能です。

ほかにも、ペットサインを通じてお互いが理解し合うことは、ペットの問題行
動を減らすことも可能とします。
これにより問題行動が手に負えず、ペットを捨ててしまう飼い主が減れば、捨
て犬・捨て猫増加や殺処分といった社会問題を解決することにも繋がるのだそ
うです。

そして、今回の学びの中で印象的だったのは「実はペットサインの考え方は、
人同士のコミュニケーションでも活用できる」ということ。

私たちはコミュニケーションはほとんどが「会話」を通じて行われている…と
考えがちですが、人間も動物の一。
実は言語によるコミュニケーションの効果はあまり高くなく、無意識の中で声
音や体の些細な動きや状態を読み取っている、という研究結果があり、ペット
サインを用いる動物たちの何ら変わりないということを表しています。

いわゆる日本人お得意と言われる「空気を読む」というのも、相手の表情やち
ょっとした仕草から見て取るものですね。
となると、上手なコミュニケーションの第一歩は、言語や言葉遣いのスキルで
はなく、自分の好意的な感情をどのように身体で表現するか、ということにな
るのかもしれません。

ペットも、人も、毎日の接し方をちょっとずつ振り返っていきたいな、と思い
ました。