シブヤ大学

授業レポート

2006/9/20 UP

自分がこの世界の参加者になるために

「どうしたら東京で旅するように生きてゆけるだろうか?」伊藤編集長は、この問いを原点に抱えている。
“新しい時代のカタチを考える”がコンセプトのジャーナル・タブロイド誌『GENERATION TIMES』(以下、GT)ゼミナールの第1部は、創刊のきっかけとなった旅の話から始まった。学生時代に東南アジアや中東など至るところを旅した編集長は、バックパッカー仲間が、かわいい女の子の話をするように教育や政治についても堂々と発言することに驚き、自分が何も知らないことを実感したと言う。編集後記にあるように、『街ヲ想ウ』『roots』も、日々の生活の中のふとした疑問がきっかけ。何も知らないからこその疑問を、ひとつずつカタチにしていったのだ。
次に、10人ほどのグループを作ってゲーム開始。裏側を見せないように紙を半分に千切り、その半分を交換する。それを4回繰り返し、手元の紙の裏側の色を確認する。もともと1グループに1枚しかなかった黒い紙は、ほとんどの人の手に渡っていた。黒い紙はAIDS、交換は性行為を表す。『カレシの元カノの元カレを知っていますか?』という公共広告の体感。その確率の高さに会場はざわめいた。
旅のガイドブックで、通貨のレートや治安、歴史や流行のレストランを調べるように、“全部自分に関係のあること”として並列に向き合ってゆく。そして、それとの距離を縮めていく作業がGTであり、結果、社会的なのだ。
第2部は、フォトグラファー下道基行氏との対談。『戦争のカタチ』は、バイト中に見付けた廃墟をきっかけとする4年の遺跡記録。自ら作った調査票には、荒廃度や保存価値などびっちり書き込みがあった。今は、「鳥居」に興味を持ち、東南アジアを回っていると語る。ごく私的な疑問をきっかけとして、そっと友だちに伝えるように、タブロイドを作り、写真を撮るふたり。どちらも自分への誠実さを持っている。それは同時に“今、生きているということ”にとても敏感だ。
「自分は何も知らない」。その前提に立ち、行動を起こせたら、この世界の参加者。ゲームは、見るよりやる方が断然楽しい。私は、世界に参加できているだろうか?先を行く彼らを見て、そう自問した。

(GENERATION TIMES編集アシスタント 川村庸子)

<参加者インタビュー>
●小倉俊平
今回の機会で若い人と一緒に真剣に考えることができた。今後も継続していけたらいいと思う。

●室木優理(渋谷区 31歳・ミュージシャン)
来てよかった!自分の中の問題意識から行動して繋がりにしていくのには、すごい元気を頂いた。

●KTR(新宿区 21歳・大学生)
GTで感じたコンセプトと一緒で、身近に感じることを行動にしていく力を実感できた。

●田口ヤスミツ(神奈川県 22歳・大学生)
直接編集長の話を聴いて、2人とも堅いのではなく、等身大の人だと感じました。

●竹内靖郎(中野区 30歳・会社員)
テーマと比べてみて、若い人が多いなあと感じました。いい意味で、ジャーナリズムすぎず、身近な着眼点や発想があるから、GTの誌面がリアルなんだと思った。どうゆう人が作っているのか、直接会えてよかった。