シブヤ大学

授業レポート

2006/9/20 UP

ランの知性と屈強ランハンターの生計が気になる授業

 果たしてランに知性はあるのか。それ以前に、「ラン植物の知性」と言われても想像が出来ない。いったいどんな授業になるのか期待は大きかった。
 もっとも進化した植物「ラン」。その知性を通して、人間の持つすごい能力を見いだすのがこの講義の裏テーマ。まずはその知性の一端を知るべく、「幻のラン」のビデオ放映のはじまり。
 発見から50年経っても5個しか見つからなかったという幻のラン、アンダーグラウンドオーキット(地下ラン)。それもそのはず、やつらが住むのは土の下。その、地中に生息する謎のランを探すべく、オーストラリアの乾燥地帯に集った腕利きのランハンター(なんて奥ゆかしい肩書きでしょう)。極めて屈強なオージーたちによる意外に繊細な穴掘り。その甲斐あり、案外あっさり見つかった。
 花の時点ですでに土の中。白い茎と根は地中に20cmも伸ばし、途中には葉の退化した突起。通常、発芽の際だけにランが栄養とするラン菌を、ひたすら地中で培養して生きていくという知性ぶり。「これはもう人間で言う牧畜だよね!」銅金先生のテンションはすこぶる上昇。本当にランが好きなんだなと思える。
何故コイツは地中なんぞに住むのか? かつてこの乾燥地帯(ほぼ岩石砂漠)が熱帯雨林だった頃、背の高い木々に光を遮られ、光合成を切り捨てていっそ地中にもぐったというのが定説。本当に思い切りのいいやつだ、ランは。でも、そのおかげで乾燥地帯に変わってからも、さまざまな木々が死滅していく中、地中でヒッソリ生き残った奇跡のラン。まだまだなぞの多い地下ラン。
 さらに、キノコと似た匂いを出してキノコバエをおびき寄せて受粉するらしい。出来ることは何でもして生き残ろうとするその知性を銅金先生は「人間のよう」と言う。確かにランには脳でもあるんじゃないかと思えてくる。
 さらに、「僕は、このランを見つけた人は偶然見つけたんじゃなくて、そういう地下にもぐるランがいるはずってイメージしたんだと思うんだ」と銅金先生。自分のメシのことのみならず、他の動物の生き様まで想像できるイマジネーションは人間だけが持つものなのだ。
 ここから講義は「ランの知性」から「人間の知性」にシフト。嗜好品として知られるバニラ。実はこれもランの一種。初めて知りました。
 しかし、ただの種では匂いがほとんどない。それを茹でて昼は天日干し、夜は地中に埋めて発酵。そうした過程を繰り返して、あの薫り高いバニラビーンズは出来上がるという。うむ、なんともトリビア。でも問題は、そんな過程を施すと香りが強まるって考え出したヤツ。人間の凄まじきイマジネーションに。そうした人間の何度もの失敗と成功の果てに編み出した製造法を思うと、何百年もかけて自由自在に発達していくランもまた、脳だけでは解明できない共通した「知性」を持っているように感じられる、そんな講義でした。          
(参加者: 吉田 大悟さん)