シブヤ大学

授業レポート

2014/7/9 UP

「非日常」の体験お届けします
~ 魅惑の果樹園(オーチャード)へようこそ ~

◇鮮やかで、色とりどりの芸術が実る"果樹園"。
人間が織りなす様々な芸術をすぐそばで目の当たりにし、
人間とはこれ程までに美しくなれるものなのか、と感じた。
不思議としゃんとした気持ちになる、そんな授業だった。

Bunkamuraオープン!ヴィレッジ3限目の教室は、オーチャードホール。
オーチャードとは"果樹園"という意味である。
その名の通り、ここでは日々様々な芸術が実り、観客を魅了している。

キーンコーンカーンコーン、

懐かしいチャイムと共に、授業が始まった。
今回の進行役は、企画制作を行っている長谷川室長。
学生は、文化村に携わるようになって10年の室長と共に、オーチャードホールに実る芸術を体験していく。

◇オーチャードホールとは
オーチャードは、総客席数2150の国内最大規模のホール。
天井はとても高く、3階席まである客席を見渡すと圧倒されてしまいそう。


◇「今日はみなさんに3つの媚薬を飲んでいただきます」
3つの媚薬とは、
オーケストラ、バレエ、オペラ。

長谷川室長のこの言葉を皮切りに、
授業はこの3つの媚薬を1つ1つ飲みながら、3部構成で進んだ。

◇1つ目の薬は、オーケストラ。
なんとここで学生はオーケストラピットへと移動。
実は本日の本当の教室は、客席ではなかったのだ。

東京フィルハーモニー交響楽団が実際に使用している楽譜が置いてある譜面台の前に座った。

ここでは、東京フィルのステージマネージャー大田さんにステージマネージャーのお仕事を聞いた。
楽器運搬・スタッフとの打ち合わせ・練習時間の調整など様々な仕事があるが、
全ては舞台上のプレイヤーの一番良い演奏のために、考えられている。

例えば、オーケストラピットの高さ。
通常は舞台から198cm下になっていることが多い。これは2mより深いと音がくすんでしまうためだ。
しかしこの高さも、指揮者・演奏者の好みや会場の様子から、
どんな音が出せる環境が求められているか、ということを想像しながら調整している。

と突然、照明が落ち、あたりが真っ暗に。

すると、手元の譜面台のオレンジ色のあかりが灯り、まわりがやわらかな雰囲気に包まれる。
実際にオペラやバレエを上演する本番時の、オーケストラピット体験だったのだ。
(目の前の譜面をめくると、「お休み」「もっとのばす」など、演奏者の手書きで色々なことが書いてあり、演奏者を少し身近に感じることができた。)

学生のほとんどにとって人生初のオーケストラピット体験。
みな自然と笑顔になっていたのが印象的であった。

◇次、2つ目の薬は、バレエ。
オーケストラピットを出たあとは、奈落(舞台の床下)を通ってなんと普段見ている舞台の上へ移動。
(奈落を見て学生からは"秘密基地みたい"との声が。たしかに。)

なんとここでは華やかなでクールな舞台衣装をまとったプロのバレエダンサーが登場。
本日の2人目のゲスト講師、K バレエ カンパニーの益子さんである。

すると突然、開演5分前を知らせるベルの音が。
続いてオーケストラのチューニング音、観客の拍手。

照明が、落ちる。
あたりが薄暗くなった、

次の瞬間、
舞台に青いスポットを浴びて立っている益子さんの姿。

なんと学生の目の前で本物のバレエがはじまったのです。

学生はみな魅了され、その眼は益子さんに惹きつけられながら、どこかわくわくしているような。
(私は鳥肌が出て、涙が出そうになりました。とっても美しかったです。)

ターンやジャンプを繰り返しながら、舞台上で"躍動"している人間が、1mもない、まさに目の前にいる。
人間ってこんなにも高く、力強く跳べるものなのか、とその迫力にその場にいた全員が圧倒された。ブラボー!!

◇そして3つ目の薬は、オペラ。
興奮覚めやらぬ会場に突如響き渡るピアノの音。

なんと今度は目の前にオペラ歌手が登場。
広い広い会場に響き渡る心地よい低音の声に、学生もみなうっとりした表情。

オペラ「椿姫」の曲とともに現れたのは、
3人目のゲスト講師、プロのテノール歌手である土崎さん。

ここでは、オペラ「椿姫」の乾杯の歌をみんなで合唱した。
初のオペラ、かつあまり慣れないイタリア語の歌詞に苦戦しながらも、
回数を重ねるごとに歌声がどんどん大きくなっていく。

最後には観客席にいる関係者に向けて、みなで乾杯の歌を披露。
本物のオペラ歌手の歌声にも支えられ、学生による華やかで一体感のあるステージとなった。

◇3つの媚薬、愛の妙薬、惚れ薬。
学生たちによる「椿姫」への鳴り止まぬ拍手の中、長谷川室長が再び登場。
3人の講師とピアノ伴奏をしてくださった武田さんも舞台上に並び、今日の授業"3つの媚薬、愛の妙薬"を振り返る。

「芸術の持つ愛の力と、聴衆の持つ愛の力
 この2つの愛の力が相まって、1つの公演が出来上がっている。」

まさに今回の授業では、学生が3つの芸術の薬を飲み、恋に落ちた。
この恋が愛となって、果樹園に新たな芸術が実るのだろう。
(ボランティアスタッフ:五十嵐唯)