シブヤ大学

授業レポート

2014/5/30 UP

繭(コクーン)から生まれる熱いドラマ

舞台の熱を感じ、熱を発したシアターコクーン。今回の授業ではまさにそれを強く感じた。まずコクーンとは「繭」という意味である。シアターコクーンでは変形自在の「やわらかい劇場」という1つの繭からBunnkamuraが企画からチケット販売まで行なう自主制作作品を初めとした多くの革新的な作品を活発に上演している。今回の授業ではシアターコクーンへの理解を深める座学を行い、生徒の方全員で舞台裏、楽屋、奈落などの見学を行なった。そして最後には実際に舞台上でカーテンコールを体験する3部構成に分かれていた。

 まず第一部ではシアターコクーンの成り立ちから過去に上映された作品のダイジェスト映像を中心に3つの特徴を学んだ。①変化する劇場(例:演目により舞台と客席の位置を変える)②表現する舞台(例:舞台を水や土で覆う)③挑戦する作品(例:10時間以上上演した作品)である。特に印象的だったのが制作側が自主制作作品に強く重きを置いていたところだ。企画制作をご担当されている松井室長が「よいものを若い世代にも伝えて受け継ぎたい」とおっしゃっていたがまさに劇場こそはライブであり予測不可能である。ドラマや映画と違い撮り直しがきかないので一回勝負である。だからこそそこに、その時に、その場にしかない唯一の瞬間が味わえる。その作品作りには役者からの熱が不可欠だ。作品は全て役者ありきであり役者の熱をいかに増幅するかを考え、そのためには様々な工夫を凝らして作品を盛り上げる。その制作への姿勢を聞いて、役者と製作スタッフが「熱」をお互いにインスパイアしていると感じた。

 そして第二部では舞台裏の装置の説明から楽屋や神棚、奈落の見学など実施し最後には二階席を見学した。特に印象的だったのが楽屋の見学だ。役者が楽屋に入る際には必ず、自分の名前が書かれた着到板という札を引っくり返すのがルールである。今回、参加者全員分の着到板を用意頂き、楽屋に入る際には引っくり返すという貴重な体験をさせていただいた。生徒全員が役者の普段使用している楽屋を見学でき、非日常の役者の日常を垣間見ることができた。

 第三部はクライマックスだった。生徒全員でカーテンコールを実際に体験したのである。その経験は生涯忘れえぬ記憶になるであろう。無数のスポットライトと歓声を浴びることの高揚感は何にも変えがたい。私を含め殆どの生徒の方がその体験に感動したであろう。その瞬間のために役者は日夜ハードな稽古を行い、スタッフはいかにして良い作品を作るか頭を悩ませる。そんなBunnkamuraの「熱」を感じ、最後にはその「熱」を追体験することができた。この「熱」こそがBunnkamuraのもつ良い作品作りの軸なのだと強く感じた。 
(ボランティアスタッフ 大貫晴美)