シブヤ大学

授業レポート

2014/5/9 UP

はじめての能楽堂~序破急とグルーヴ感~

皆さんは「能楽」と聞いてどんなイメージですか?
私は・・・ちょっと敷居が高くて近づけないイメージです。
学校でも「能楽」なんて授業なかったし、今まで触れてこなかった日本文化です。
皆さんはどうでしょうか?
私は最近日本文化を体験する趣味に目覚めています。
相撲観戦や着物を体験してみると
「敷居が高い」と自分の勝手な思い込みだったと気づかされます。
能への敷居を下げるべく、今回シブ大の授業がきっかけで初めて能楽堂へ行きました。
参加者の皆さんは年齢層もバラバラ。
その中でも特に若い女性が多いイメージでした。

中へ入ると神聖な雰囲気で、背景に描かれている松の木が圧倒的な存在感でした。
松の絵に3分ほど見入ってしまう。
これを見に来るだけでも来て良かったと思ってしまうほどでした。

◇そもそも能楽とは?
能とはどうして生まれたか?そんな入門編から始まりました。
能の起源は室町時代にさかのぼります。
能はもともと、庶民の間で親しまれてきた歌舞音曲や、神への奉納の舞が、
洗練され、現在まで残っている無形文化遺産です。
舞台に佇む松の絵はいくつかの説があるようですが、
松には神様が宿るといわれており、「神と自然、空間、無限性」を象徴しているのだそうです。
(松にそんな深い意味があるとは。。)
650年の歴史で、無駄なものは削ぎ落とされ、今の舞台空間に行き着いたそうです。
一見シンプルな造りの能楽堂ですが沢山の工夫が凝らされています。
その1つで、舞台に傾斜がついていて 、ビー玉を置くと転がってしまうそうです。

◇そして本日の先生登場
能楽師シテ方喜多流の友枝雄人先生と、能楽師小鼓方幸流の成田達志先生です。
(*シテ方とは舞台の主役、小鼓方(こつづみかた)はお囃子を演奏する方です。)
お二人とも背筋がスッと伸びていて物腰がやわらかい印象でした。

◇今の能楽師の現状
能を観賞する人たちは少しずつ増えていますが、
稽古をする人たちが減ってきている実態もあるそうです。
今後はどう若い人たちを巻き込み、育てていくかという現状と今後のお話もしてくれました。

◇いざグルーヴ感を体感!
後半は『八島』(やしま)という演目の一節を披露してくれました。
能楽師が一対一で掛け合いを行うことを「一調」と言います。
(本物の「いよぉー」ポン!!と鼓を打つ音を初めて聞きました!)

マイクを通さずに会場全体に二人の音が響きます。
音楽ライヴのような迫力でした。気づいたら会場中の人達が2人に引き込まれていました。
(これが能のグルーヴ感か!!)
基本的に能にはリハーサルがないそうです。
その緊張感が迫力あるライヴを作っているのかもしれません。

◇能を観るポイント
能には起承転結ではなく序・破・急という考え方があります。
三つの構成を1つの流れとして見るのが大切です。
また、観るポイントの1つに一般的な「泣く」という表現でも、いかに「うまく泣くか」ではなく、
手のちょっとした動きに涙を表現するのだそうです。
それが能のもつ感情の出し方であり、「能のリアリティ」だそうです。
(手のわずかな仕草も見逃せない!)

◇すり足の所作を伝授
演目の解説後、会場から抽選で選ばれた6人が舞台に立って「すり足」を体験をしました。
西洋には美しさを見せる動きとしてバレエの跳躍がありますが、
日本の場合は農耕民族なので、地に足がついた回る動きに美しさを見い出したといいます。
(回る=舞うの語源でもあります。)
参加者一人ずつに歩き方の指導をしてくれました。
・膝を地面に押し付けるイメージで。
・背筋を伸ばすのではなく、お腹から伸ばす。すると和服は立ち方がきれいに見えます。
普段馴れない動きに参加者は試行錯誤。
会場はとても和やかな空気でした。
そしてあっという間に時間が経ち、講義は終了。質問タイムへ。

◇入門者におすすめの入り方は?
最後の質問タイムでは、初心者でも見やすい演目は何ですか?という質問があり、
「最初は平家物語が入りやすいかも」と教えてもらいました。
今回の会場(セルリアンタワー能楽堂)はビギナーにも
わかりやすい演目が多いようです。
「ちょっと来月あたり能でも見に行こうよ」と言える様に、
次回は少し物語を予習して足を運ぼうと思います。
能のもつライヴ感をまた体験したいステキな講義でした。
皆さんも能楽堂に足を運んでみてみませんか?
新しい五感が刺激されますよ!

(ボランティアスタッフ:伊集院一徹)