シブヤ大学

授業レポート

2014/1/16 UP

e-Education ~途上国の教育課題を若者の力で解決する~

行動を起こせば、必ず次の道はひらける。
ワクワクすること、おもしろいと感じることに素直であること。
そして、仲間と一緒に進んでいくこと。

そんなメッセージを強く感じたお話でした。


お話ししていただいたのは、e-Educationプロジェクト代表の税所篤快さん。
教師不足になやむ途上国に映像授業を届けることで、教育格差の解消に取り組んでいます。
現在、24歳の大学生です。

会場は20代から30代の方が多く、中には高校生の参加もありました。


●一冊の本との出会いからバングラデシュへ

そもそも税所さんが行動にうつしたきっかけというのは
・・・彼女にフラれたから。

そんな人間味あふれる理由に、会場は笑いにつつまれます。

「一人前の男になる!世界に出て修行だ!」

そう強く思う税所さんは
『グラミン銀行を知っていますか?』という一冊の本との出会いをきっかけに
一ヶ月後には友人と一緒にバングラデシュに飛び
グラミン銀行のムハマド・ユヌス総裁に会いに行ったそうです。

現地で村人にインタビューを続けていると、一つのことに気がつきます。
“先生の数が足りない”
アジア最貧国の国であるバングラデシュでは、4万人の先生が不足していました。
そのため、農村部の高校生たちは満足な教育を受けることができず
大学進学の道をあきらめてしまいます。


●自分の原体験と映像授業

そこで税所さんが思い出したのは、落ちこぼれだった自分の高校時代。
一流の予備校講師の授業をDVD化した映像授業を受けることで
第一志望の早稲田大学に受かったという経験がありました。

この仕組みをそのまま活かして
バングラデシュの農村でDVDを使って映像授業を行おう!
というプロジェクトを始めたそうです。
バングラデシュの東大と言われている国立最難関ダッカ大学に
1年目にして村から合格者を誕生させ、4年目の現在は15名の合格者を出しています。

この仕組みを他国でも実現させようと、現在5大陸の途上国で挑戦中だということです。


●パートナーの存在

運用資金が足りない、停電の発生のためDVDが再生できない、
スコールが降るために学校に来ることができない、デモに阻まれ空港までたどり着けない、
腸チフスにかかる・・・・
これだけにとどまらない様々な困難にぶつかってきた税所さん。

どうして数多くの困難を乗り越えてプロジェクトを続けることができたのか?
その理由は

『パートナー、仲間がいたから』

現地で伴走してくれるパートナー、日本で支えてくれる仲間、
見守ってくれる大学教授の存在・・・
こういった方々のおかげで、プロジェクトを続けてこれている。

そう話す税所さんの言葉の端々から、
共にプロジェクトをやっている仲間、応援してくれる人を
とても大切にしているのが伝わってきました。


●参加者同士でシェア・質疑応答

ここで、近くの席の方々と5分ほど感想をシェアする時間。
人との出会いは大切だけれど、「本」というのも出会いになる、
“自分のため”ではなく、“誰かのため”に行動しているから、応援したくなるのでは
といった感想が聞こえ、どこの輪も盛り上がっていました。

そして、エネルギッシュなお話をしてくださった税所さんに
会場からは多くの質問が寄せられました。
その中より、一部抜粋します。

▶不安をこえていくために、気持ちの整理はどうやっている?
「人間なので、いつも元気な訳ではなく、弱い。だから不安も当然抱えると自覚している。
その時のために、チームとしてバックアップ体制を整えていたり、
アドバイザーのもとを訪れるなどしています。」

▶リスクはいつでも付き物だと思うが、どうして活動を続けていけるのか?
「やっていて面白いかどうか、わくわくするかどうかを大切にしています。
もしかしたら世界が変わるかもしれない。そんな風に思うとやめられないんですよね。」




自分がときには落ち込むこともある人間だということを自覚し
支えてくれる仲間を大切にしながら
わくわくすることに純粋にプロジェクトをすすめている税所さん。

世界を舞台に挑戦を続けていけるのは
自分の原体験や、支えてくれる身近な仲間があってこそ。
いつだって自分のエネルギーは自分の中や身近なところにあるのだということを
再確認させてくれたお話でした。


(ボランティアスタッフ:深澤 まどか)