シブヤ大学

授業レポート

2007/5/2 UP

【映画研究ゼミ オーディション合格者の皆様】    

大内結さん
清水陽一さん
関若奈さん
関口咲穂さん
田中知美さん
中村謙吾さん
中村強志さん
古野沙織さん
細田奈保美さん
細田楓月さん
(計10名)

【廣末先生からのコメント】
残って頂いた皆さんには本当に感謝しております。出来れば残って頂いた方全員に参加して貰いたかったのですが、我々の撮影スタイルからどうしても人数を限定せざるをえませんでした。申し訳ありません。今回は完全な独断と直感で選ばせて頂きました。それも合わせてご了承下さい。

【今後のゼミ活動について】
事前告知の通り、今後は群青いろのお二人と合格者の皆様とで自主的に開催して頂くこととなります。開催日時や場所等詳細については、群青いろから合格者の方々へ授業申込み時にご登録頂いたメールアドレス宛にお知らせ致します。


【授業レポート】
PFF(ぴあフィルムフェスティバル)という自主映画の登竜門とも言われる映画祭で、グランプリと準グランプリを同時受賞した映像ユニット・群青いろの高橋先生と廣末先生の授業が渋谷にあるケアコミュニティ・美竹の丘で行われました。

今回はなんと!「映画研究ゼミ」の発足と、新しい映画を撮影するためのスタッフとキャストのオーディションをまとめてやってしまうというシブヤ大学初だらけの授業。しかも、完成した作品は将来シブヤ大学で上映される(予定)という、一大プロジェクトの幕開けです。

授業の始まり30分前、ぽつりぽつりと人が受付に集まるもののあまり多くはない様子。やっぱりオーディションということで緊張して帰ってしまうという人続出!?と心配しつつ、せっせこ会場の準備を進めていると、どんどんどんどん人が増えて、いつの間にか受付を待つ生徒さんの列が階段まで伸びていました。蓋を開けてみれば、映画の上映&オーディションの会場となる美竹の丘・多目的ホールはほぼ満員御礼。そして、オーディションということを意識していたら、なんだかみんな俳優や女優さんの卵に見えてきて勝手に緊張。

そして授業開始のチャイムがいつもの通り鳴り響き、少しスタッフから授業の流れの説明があり、まだ先生2人の姿は見られないまま、映画『鼻唄泥棒』の上映が開始されました。今回の映画はまだ映画祭以外の場所では上映されてない非常に貴重なものだそうです。ということであまり内容には触れられませんが、ポトッと私生活に残像を残すようなそんな映画でした。主演の男の人が発した「自分で選べ!」というセリフが、自分に向かって言わているようで、心にグサッと刺さりました。

そして映画を約1時間半たっぷり見た後に、ついに高橋先生と廣末先生の登場。「あっ、さっき映画にいた人だ!」と思わず心の声で叫んでいました。というのも、『鼻唄泥棒』にお二人とも出演されていて、しかもかなり重要な人物を演じているのです。映画に出演していた2人が突然目の前に出てくるというのは、とても不思議な感覚。お二人は殺人犯と、その親友で被害者の彼氏という複雑な関係。なんだか二人がまだその設定のままに見えてきて、ドキドキしました。

基本的に、司会の方が質問をし、それにお二人が答えるという形式でトークショーが進みました。その一部を紹介します。

群青いろのお二人は商業映画とは相反する自主映画というものを撮り続けているそうです。そして、自主映画の商業映画との違いを高橋さんは以下のように言っていました。

・プロデューサーがいない
・お金を出資する人が存在しないので、自分の好きなものを撮れる為、作品の純度が高い。
・利益を目的としていないので、キャストのしばりがない
・基本的には役者兼スタッフの少数精鋭

ます高橋先生が2、3週間で台本を書き、その2週間後からお二人で撮影をスタートし、1ヶ月後にはほぼ全て撮り終えているというかなり激しいスケジュールで映画を作っているそうです。すごく短い撮影期間と予算にプラスして、監督と出演を同時にこなすなんてことはとても苦労がいるように思ったけど、お二人とも自主映画のほうが性にあっているということを言っていました。

PFFのグランプリを獲得し、ぴあからスカラシップを得て制作した映画『14歳』(5月19日より渋谷・ユーロスペースにてロードショー!)についても、「とても色々なことを勉強できたし吸収するものも多かったけど、やはりうちらには自主映画という形が向いているのでは、と思います。やはり、大規模の映画はスタッフが多いぶん、照明ひとつとってもリーダーがいて、それぞれのスタッフにそれぞれの“感覚”と“思い”があるから、どうしても“純度100%”の自分の作品が作れない。」と語っていました。その辺りは、『鼻歌泥棒』の中で強く込められていた“自分で決めろ!”というメッセージにリンクするものがあったのでは、と思いました。

そしてその後、生徒さんとの質疑応答がスタート。先生2人の興味深い話に導かれるように、質問が続出。「なぜ鼻歌泥棒というタイトルにしたのですか?」という質問には、「実はタイトルが気に入っていて、そのタイトルの映画を作りたいという思いが先行してあった。」という驚きの発言も。それと、この映画のメッセージ性について聞かれると、「最近は簡単に答えを出す映画が多い中で、“何か”を得て、その映画がこの場だけで終わらずに脳裏に何かを残るような作品を作りたいと思っている。」と話していて、確かに『鼻歌泥棒』は脳裏に残る作品だったと改めて感じました。

『鼻歌泥棒』を観て、何か暗いとか哀しいという印象を受けたのですが、他の作品に関しても、そういう作品を取ることが多いのでしょうか?」という質問に、高橋さんが、「心の闇とか言われるけど、人間は常に痛みとか悲しみがあって、そこに幸せがちょこんと乗っかっているようなイメージがある。楽しい商業映画というのは必ず人間に“キャラクター”をつけていて、普通の人間を描こうとするとどうしても悲しいとか暗い映画になるし、日本人にはそういう映画があっているんじゃないかな。」と語ってくれました。

そして質疑応答の後15分の休憩があり、ついにキャスト、スタッフのオーディションがスタートしました。会場には約50人の参加者が残り、それまでとは打って変わって、とても緊張した空気が流れていて、それがこちらにもピリピリと伝わってきました。ただ、オーディションといっても、今回はお二人の意向により、一人ひとりにまず名前、年齢、職業、住所、そしてキャストもしくはスタッフどちらが希望かを答えてもらい、その後お二人から簡単な質問をするだけのシンプルな形で進められました。

約50人の応募者には名札がくばられ、オーディションがスタート!廣末先生は参加者の緊張をほぐすように、ハイテンションで質問を繰り返し、たまに高橋さんがぼそっと質問をするという感じで、お二人はそれぞれの個性というか分担がとてもはっきりしていて、二人共同で映画製作することの才能が見え隠れしているように思えました。そして個々への質問では、「高橋さんにあだ名をつけてください。」とか「恋愛はどう?」とか「野球のポジションは?」と質問し笑いを誘ったりし、かなり楽しい雰囲気でのオーディションになりました。参加者は、実際に俳優をやっている人や、大学で映画を撮っている人、こっそり親子でオーディションに望んでいる人、脱げます!と宣言する人など、ほんとに色々な種類の人がいました。結局、オーディションは盛り上がりも影響して、時間を押しに押し、会場の片付け時間になってしまい、まだ話していない参加者に対しては急遽ロビーでオーディションを続行しました。オーディションが終わっても監督に話しに行く人が多かったり、さっき答えられなかった質問にわざわざ授業後に答える廣末監督の姿があったりと、全体的にかなり素敵な授業になった気がしました。そして、この雰囲気が「映画研究ゼミ」での映画製作にも継続すればかならず素敵な作品ができるのではと期待が膨らみました。

(ボランティアスタッフ 齊藤淳一)


【参加者インタビュー】

①お名前:リリーさん
いつも学長のブログを確認しています。シブヤ大学の授業を受けるのは3回目で、今回はゼミの発足というところに惹かれて申し込みました。シブヤ大学は、普段普通に暮らしていたら会えないような人たちに出会えるのがとても素敵だと思います。

②お名前:フランキーさん
シブヤ大学は前から友達に誘われていて、2回目の挑戦でやっと来られました。普段平日に働いているので、シブヤ大学のような“学校”の雰囲気を体験できるのは、とても刺激になります!今回は撮影スタッフのオーディションも触発されて受けてしまいました。