シブヤ大学

授業レポート

2007/4/2 UP

        

 地球と「私」の環境問題。講師は旭化成ホームズ、村松先生・菅野先生。すまいのスペシャリストによる住環境の授業です。
シブヤ大学の授業カテゴリーは「環境」ですが、クイズあり実験ありでまるで「理科」の授業でした。

さて授業の始まりです。授業は大きく分けて3つのパートで進みました。
1、 菅野先生による「体と環境」
2、 村松先生による「住まいと環境」
3、 実験。熱と遊ぼう!
まずは、「私」の体と環境についてです。
昨今の住宅は「高気密高断熱、24時間換気」などのシステムが付いていることが快適であるという考えでセールスされています。しかしそれは本当に、体にとって快適なのでしょうか?というのがこのパートのテーマです。
菅野先生の昔の生活はエアコンの効いた家から、エアコンの効いた電車で、エアコンの効いた会社へ通う生活だったそうです。そんな空調の効いた中で汗をかかない生活を続けていたら、体の節々に湿疹ができ、体力は低下し、汗もくさくなったそうです。このままではいけないと思い、エアコンを過度に浴びず適度な運動をし、汗をかく生活に切り替えたそうです。すると体調は回復し、汗の臭いも通常にも戻ったそう。このことで先生は汗をかくことの大切さを実感したとおっしゃっていました。
このように恒温動物である人間には過度な空調は悪影響があり、自然に近い生活が健康で快適な生活に繋がるのです。
続いては村松先生による「住まいと環境」。住宅作りの視点から自然との共生を考えます。住まいに緑を取り入れのことを、多くの人が望みますが土地や庭が広くなければとあきらめてしまう場合が多い。村松先生は、このような悩みを解決する緑化を考えています。
例えば壁面緑化。これは道路と家のわずかなスペースに樹木を植え、壁に沿って伸ばしていく手法。そして最近は一般的になってきた屋上緑化。先生は野菜を育てることを薦めていました。見るだけの花よりも育てて食べる野菜のほうが、長続きするそうです。「野菜の花もきれいなんだよ。」と白菜やズッキーニなどの花もスライドで紹介してくれました。
さらに植物は住まいの快適さにも影響を与えます。例えば家の南側に落葉樹を植えると夏は日光をさえぎり、冬は日差しを取り込む役割を果たします。
前のパートで空調設備に頼らない自然に近い生活の大切さを感じた皆さんは、緑を活かした空調を自宅に取り入れたいと思ったはずです。
さて、続いては実験です。今回は4つの実験を行ないました。
器具は壁や物などに光を当てるだけで温度をはかれる放射温度計。カメラに映った物の温度を色でモニターできるサーモカメラを使いました。最初の実験では、太陽に見立てたライトに当て続けた「すだれ」の温度を測りました。放射温度計で測った温度は45℃。夏の日差しをさえぎってくれる「すだれ」も光を浴び続けると高温になってしまいます。その「すだれ」に水を吹きかけると温度は一気に23℃まで下がりました。水分を含むと温度は急激に低下する、つまり水分を含む植物がこの効果の代用を果たせるということです。
次の実験は、コルクの板と金属の板を手で触って、どちらの温度が高いか考える実験。金属のほうがひんやりして、温度が低いと誰もが思いました。しかしサーモカメラで温度をはかるとどちらも同じでした。これは物体の性質によって、熱を奪いやすいものとそうでないものがあるということを示しています。例えば冬寒いフローリングにじゅうたんをひくことで暖かくなるのはこれと同じ原理だそうです。
続いては、風の実験。生徒の代表者が協力しこの実験を行ないました。一人が腕をまくり、もう一人がその腕に団扇で風を送る。風に当たると腕は涼しくなりますが、サーモカメラで計ってみると風には温度がありません。エアコンのような冷たい風を放出しなくても、風の流れさえあれば夏も涼しくすごせそうです。
最後の実験は、太陽に見立てたライトと家に見立てたペットボトルを使った実験。ペットボトルには全てを壁にして遮断してしまったものと、窓をつけたものがありました。窓のあるものは太陽の光を吸収し、室内の温度は高くなっていました。そして太陽がなくなった後にこの窓を遮断すると中の温度は逃げずに暖かいままでした。日が沈んだ時にカーテン閉めることで得られる効果です。実験の結果はどれも家庭での応用が可能なものばかりでした。

管理された温度や環境で暮らすことが快適だと言われてきた近年。しかし自然の中で生きるために作られている人間の体は、管理された中では本来の能力を発揮できなくなってしまうことがある。本当に快適な生活は、時には我慢もしながら工夫をして自然に近い環境で暮らすことで得られるのではないでしょうか。
今日の授業を受けた生徒さんは、小さなことから改善し本当に快適な住環境を求めたいと思ったのではないでしょうか。地球と「私」の環境問題。これにて終了です。

(ボランティアスタッフ 竹田芳幸)