シブヤ大学

授業レポート

2013/2/20 UP

塩尻の匠に学ぶ ~木曽漆器・沈金ワークショップ~

「塩尻市を知ってる人?」
こんな言葉から、今回の授業は始まりました。
会場は、長野県塩尻市のアンテナショップでもある富ヶ谷のワインバー「ダルーヴァ」(塩尻市はワインの名産地!)。

先生は、石本則男さん。
木曽平沢で長年お仕事をされている木曽漆器の匠です。
まずは匠から、漆や沈金についてのお話を伺います。
伝統工芸の匠といえば頑固・怖そう…
といったイメージを持っていましたが、
匠はとってもユーモアあふれるお人柄で、
冗談を交えつつ丁寧に説明してくださいました。

お話をお聞きした後はさっそく作業開始。
まずは鉛筆でトレーシングペーパーに下絵を描きます。
初心者向けにデザインされた見本をもとに、紅葉や松葉、蝶などを描く生徒さんが多い中、果敢にオリジナルの絵を描く方も。
その後、黄粉を細筆にとり、鉛筆の線を丁寧になぞります。

次に、沈金刀と呼ばれる細長いノミで溝を彫る練習です。
長さ15センチほどのノミを鉛筆のように持ち、
練習用の板に細い溝を彫ります。

これがなかなか難しく…
深く彫りすぎたり、逆に浅すぎたり、苦戦する生徒さんたち。
練習を重ね、徐々にノミの扱いに慣れてきたら、
先ほど下絵を描いたトレーシングペーパーを板に密着させて絵を転写し、本番さながらに下絵に沿って溝を彫っていきます。

ある程度上手に彫れるようになると、
匠から「じゃあ本番いってみようか」の声。
声がかかった生徒さんから、
練習用の板を黒く美しく光る漆塗りのお皿にチェンジ。
練習用の板と同様に下絵を転写し、彫っていきます。
生徒さんはみなさん真剣そのもの。会場はとても静かでした…。
その間、匠は絶えず各生徒さんのテーブルを回り、
丁寧にアドバイスしてくださっていました。

彫り終わると、ついに漆の登場です。
漆独特のにおいが会場内に広がります。
生徒さんは両手にゴム手袋をはめ、
先ほど彫った絵柄にヘラで漆を塗りこみます。
その後、表面の余分な漆をふきとり、
綿で金粉や顔料をポンポンとのせていくと、徐々に美しい蝶や紅葉が浮かび上がってきました。
少々ゆがんでいるのもご愛敬。
美しい仕上がりに、生徒さんたちからも笑顔がこぼれていました。
(ちなみに、作品は各自で持ち帰った後、湿気のある暖かなところで乾燥させ、完成となります。)

 最後に、各自の作品を披露し、感想をシェアしました。
「難しかったけど楽しかった」
「またこのような授業をしてほしい」と生徒さん。
シブヤの街で、塩尻の伝統工芸の技とユーモアあふれる匠の素敵なお人柄に触れることができました。
 
 なお、今回の授業は、
塩尻のまちゼミ「シリゼミ」とのコラボレーション企画ということで、
会場には商工会議所の方々や塩尻市の職員の方々もいらっしゃっていました。
今後も、シブヤ大学×シリゼミとのコラボレーション授業に期待大です。

(ボランティアスタッフ  柏 菜穂子)