シブヤ大学

授業レポート

2013/1/9 UP

ちゃんと食べると、意識的な視点を持って選ぶことができる。そうすることで日常だって旅になる。

薄曇りの空から小雨が降り始めた午後、原宿の開放感あるオープンキッチンスタジオに女性15名が集合し、脚本家・小説家の筒井ともみさんをお迎えしました。
シブヤ大学スタッフも女性のみで図らずも女子会のようなスタイルになり、やわらかいムードの中、授業がスタートしました。

今回は「旅」「選ぶ」「ちゃんと食べる」というテーマが大きく3つ。
授業は、参加者各自の自己紹介と、上記のどこに興味を持ったのか・その理由、それらに関連し筒井さんに訊いてみたいことを発表し、それについて筒井さんにお答えいただくスタイルで進行しました。

参加者は、さまざまなきっかけで自分のライフスタイルや食生活の危うさを痛感して見直した経験のある人が多く、「ちゃんと食べる」というテーマに共感の頷きが多かったように思います。
時に告白のような問いかけにも、筒井さんは丁寧に答えてくださり(時には逆に質問で各々を理解しようとしてくださるのがわかり)、学ぶと同時に励まされるような時間になりました。

以下、筒井さんからのお話のポイントをまとめました。

●旅(毎日)は自分で決めていく:選んでいくことの連続。ちゃんと選ぶためには、ちゃんと食べて細胞からイキイキとした自分でないと!

「今の時代、一番大事なキーワードは『旅』だと思うんです。」
どこかへ旅行するという旅だけでなく、日常のありふれたように見える事柄も、自分の見方の違い次第で「旅」になる。

「旅」では、慣れた日常と違ってすべての細かい事を自分で決めなくてはならない。つまり、自分でいろんなものを感じて考えて判断していく、ということ。選んでいく、ということ。

いろいろなものを感じて判断していくためには、自分自身が細胞からイキイキとしていること:ちゃんと受容する素地、ができていないといけない。そのためには、ちゃんと食べる、ということが大事になってくる。

ちゃんと食べると、生きる気力も湧いてくる。またちゃんと食べようとすると、食べるものを選ぶようになるし、生活の他の部分にも、ちゃんと選んでみようとする気持ちが出てくる。つまり、いままで無意識になんとなくしていたものを意識的にすることになる。そうすると、なにかに気付いたり、何かを変えてみようと思ったり、今度はこうしてみようという、なんとなくではない自分の選択に基づいた自分になってくる。つまりイキイキしてくる。→ちゃんと選べるようになる→ループ!
――ちゃんと食べる、とは、豪華なもの・高価なもの・たくさんのもの、という意味ではなく、一皿でも簡単なものでも自分で選んだ素材で調理したものを食べる、ということ。筒井さんはほとんど外食せず、ほぼ毎食自宅で調理をされるそうです。食事の風景も頻出するブログ「おいしい庭」をぜひご覧あれ。

●「選ぶのは、ひとつじゃなくてもいいのよ。同時じゃなければ。」
ひとつひとつを丁寧に取り組んでいくことが大事。
コーディネータが事前に筒井さんからいただいた言葉『本当に大事だと思うなら、一個に選ばないとダメよ。』というのは、ひとつひとつをおろそかにしないためにということです。
――筒井さんは、脚本の仕事もかけもちはしないそうです。そして全力でいいものを作る、と。

●「かんたんなことと、むずかしいことがあるなら、むずかしい方を選んだほうがいい。」
理由は後からわかるから。その時はわからなくても。

●「howよりもwhyを大事にしています。」
(仕事は)どうやっていくか、の前に、どうしてそうしたいと思うのかを自問する。自然にhowはついてくる。

●「足ることを知る、というのが21世紀的な姿勢。」
本当に必要なもの・ことを見極めていくということ。つまり選ぶ力が必要。
――足ることを知る国・人柄として、筒井さんはポルトガルが大好きで、旅先の一つとしてお勧めしてくださいました。


個人的に思い返してみると、忙しくてもちゃんと食べること、日常の小さなことでもなんとなくではなく選ぶこと、実は出来ていないなぁ、ちゃんとしたいな、とじわじわと感じ入る時間でした。
もちろん、ちゃんと食べることや旅すること・選ぶことは、目的ではありません。
でもこれらを「ちゃんと」している筒井さんのような人に出会うと、周りを魅了する穏やかだけど力強いエネルギーを感じ、そうありたいと思わずにはいられません。「ちゃんと」しているからこそ自分軸がしっかりしていてブレが無いその人らしい魅力が伝わりやすいのだと感じました。
さぁ、気付いたからには、実践あるのみ。「ちゃんと」できたときの自分に少し期待して。

(シブヤ大学ボランティアスタッフ:岩渕美香)