シブヤ大学

授業レポート

2012/11/27 UP

避難所リアル 〜72時間後の被災生活シミュレーション〜

渋谷ヒカリエにて、今年9月より実施されている「防災」をテーマとした授業。
今回はその第3弾として、
「避難所生活」を通じて防災について学びました。

3.11以降、私たちはテレビ越しに何度も避難所の風景を目にしました。
被災された方々のインタビュー。
炊き出しやお風呂の支援を行う自衛隊の方々。
体育館に物資が運ばれる光景。
私たちはあの映像を見て、ひどく胸を痛めました。

しかし、東日本大震災で被災されなかった人たちにも
今後、災害のリスクは常に付きまといます。
首都圏直下型地震が近いうちに発生するとされているなかで、
私たちには何が出来るのでしょうか。
それは想定「外」を想定「内」にすることです。

そこで、本日の授業は避難所を運営する立場になって、
被災した後の生活についてリアルな視点で考えました。
授業は2部構成。

■第1部 H(避難所)U(運営)G(ゲーム)
 シブヤ大学理事・伊藤さんのご指導の下、HUGというゲームに4、5人1組となって挑戦しました。各テーブルにはとある小学校の図面が用意されており、
どの部屋をどういう風に使うべきかを話し合いながら決めていくシミュレーションゲームです。

例えば、更衣室はどの部屋におくのか?
トイレは臭いの充満という観点からどこに置くべきか?
立ち入り禁止の部屋をどこにするのか?

避難所では老若男女問わず、
地域住民のほとんどが生活を共にするため、
部屋割りを決めるにあたって、問題が山積します。

洗濯する頻度をどのように決めるのか。
起床・消灯時間を何時にするのか。
お風呂の順番はどうするのか。
物資はどうやって分配するのか。
避難所生活は運営するにあたってルールを作ることも必要です。

さらに、こんなトラブルが発生する可能性があります。
・観光客や外国人が避難所に押しかけてきました。
・隣の高齢者施設の方が100人来ました。

助けを求めに来た人たちに限られたスペースを提供できるのか。
他国の人たちと日本人が同じ施設で共存していけるのか。

生徒さんたちは、真剣な眼差しでゲームに取り組んでいました。
「赤ちゃんが泣く可能性があるから、母子専用のお部屋を作ったらどうか?」
などと自分なりの目線で積極的に提案する方が多く、
防災と真剣に向き合う良い機会となりました。

■第2部 ピースボード災害ボランティアセンター 山本さんのお話
 阪神淡路大震災の発生以来、国内外問わず災害支援を行っている山本隆さんを先生としてお招きして、避難所生活の実情についてお話しして頂きました。山本さんは東日本大震災発生直後にいち早く岩手県石巻市に足を運び、被災者支援を行いました。
 
その中で感じたこととして、
「阪神淡路大震災では沢山のボランティアが「避難所」での支援を行っていたそうですが、東日本大震災ではほとんどなかった」とおっしゃっていました。
その理由として石巻市において、震災前から元々強固としたコミュニティが形成されており、万が一災害が起こった時にどのような組織体制でどのように動くべきか地域内で話し合いが行われていたそうです。
一方で神戸の場合、都市部であるという土地柄からコミュニティの繋がりが弱く、
避難所を運営するにあたってボランティアの援助がなければ共同生活を送っていけないというような状況でした。

さらに山本さんは、避難所生活の長期化における深刻な現実について話していました。
「避難所生活が長期化するということは、その学校が学校としての機能を失う可能性があるということ。教室を被災地の居住スペースにするということは、子どもたちの学ぶ場がなくなってしまうということです。」
実際に廃校になった学校もあったそうです。

また、避難所を運営する組織についても言及していました。
避難所の運営は、自治体の職員、自治防災組織や学校の先生が中心となって行っていて、
その中で誰がリーダーの役割を担うのか、どんな役割を果たすのか、
曖昧な部分もあると言います。

避難所を「運営」する立場に立つということは、そこに住む人たちが皆、仮説住宅や実際の家に移動できるまで見守らなければならず、避難所生活が人一倍長期化します。
そのため、進んでやりたがらないそうです。

沢山の問題と向き合いながら、生活していく避難所生活。
防災の業界では、震災発生後72時間の行動次第で生死が決まると言われていますが、
避難所生活を想定してもっと長いスパンで「防災」を考えていくべきではないでしょうか。
東日本大震災の避難所生活において、住民同士のトラブルが絶えなかったそうです。
ルールをどうやって守らせるのか。
ストレスをどうやって軽減するのか。
今後首都圏直下型地震が起こると想定されている中で、
自分も今後避難所に入るという前提の元に、現実的に「防災」を捉えるべきではないでしょうか。
生徒さんたちの想定「外」がひとつ減った授業となりました。

(ボランティアスタッフ・矢永奈穂)