シブヤ大学

授業レポート

2012/11/9 UP

けんちく体操 ~恵比寿編~

けんちく体操。
この新しい言葉に、みなさん何を連想するでしょうか?
その名の通り、建築を体操する、つまり建築物を体操で表現するという新しい身体表現です。
本を読んで以来、この体操のことがずっと気になっていましたが、今回の参加者の中にも、やはり本がきっかけで興味を持ったという人が何人もいました。

参加者は男性の方が多く、皆さん動きやすい服装で登場です。
本と同じチームけんちく体操の方々、博士とけんちく体操マン1号2号、ウーマン1号が、白いユニフォーム姿で現れ、テンションが上がります。

さっそくけんちく体操マンたちの得意技を見せてもらいました。
代々木体育館や丸ビル、国際展示場など。
人体で表現する美しいカーブや凛とした直線を、間近で見られて感激です。
考えすぎず、作り込みすぎずに、感覚に頼んでさっと表現する方がよいとのこと。
本当に、的確に建物の特徴をとらえられているなあと思います。

けんちく体操についての座学はすぐに終わり、実際にやってみることになりました。
まず最初は、東京タワー。
みんな、めいめいにタワーになりきります。
おおよそ誰もが同じ格好をしていましたが、
博士の目には、それでも少しずつ違って見えるらしく、模範的なタワーが紹介されました。
チームけんちく体操にとって、東京タワーとエッフェル塔は違う体操だと聞いて、みんなで「うーむ?」と首をひねりました。

東京都庁、浅草寺の雷門の後には、2人でペアになり、かちどき橋を模写します。
かつてはね橋だった頃の画像がモニターに映し出されたため、みんな寝っ転がりました。
さらに3人になり、パルテノン神殿とさざえ堂。
さらに5人になり、築地本願寺と、フジTV本社ビル。

メンバーが試行錯誤をして作り上げていく様子も、おもしろいものです。
人が増えることで、どんどん難しくなっていきますが、そのぶんオリジナリティが増していきます。

切り替え早くどんどん新しいけんちく体操をこなしていきますが、参加者の誰一人困ったり立ちつくしたりすることなく、新しいお題に果敢に取り組んでいきます。
「自分の好きなようにやる」というのが、体操の基本事項なので、それぞれにフリーダム。
博士の鋭くも丁寧な批評を受けますが、それもまた楽しです。
ひと通り大作をこなしたところで、これまでのプレイバックタイムになり、みんな先ほど一緒に組んだパートナーを探して、ワイワイと今までの復習を行いました。
いい空気に満ちたところで、3つにグループ分けし、恵比寿の街へと繰り出して、実際に模写する建築物の前で、けんちく体操をしてくることになりました。

会ったばかりのメンバーですが、すでに一緒にいくつか体操をこなしているため、まとまりもバッチリ。
私たちのグループは、ガーデンプレイス方面へと行くことにしました。
きょろきょろと建物を探しながら、まず見つけたのが日仏会館ビル。
コンクリ打ちの巨大なビルなので、かなり引きの写真になります。
みんなであれこれと意見を出し合い、何度か試行錯誤を重ねて、撮影となりました。
車道向こうなので、車や歩行者が通る中、恥ずかしさを越えて模写しているうちに、なんだかハイになってきます。

休日の人混みの中、ガーデンプレイス前の建物の体操にもチャレンジしました。
いい体操を生み出すために、恥ずかしさを捨てた私たち。
「一人じゃとてもできないし、せっかくのいい機会だから」と、外での撮影に前向きに取り組みます。
そう、思い切りの良さが大事。ピンと伸びた身体でないと、美しいフォームは仕上がりません。
さすがになんとなく人の目は集まりますが、都会人のクールさで、瞬時に見なかったことにされるようです。
獲物を探す狩人のように建物を探しながら、ガーデンプレイスを一周して、会場へと戻りました。

集合時間になり、発表会となりました。
3グループとも、ばらばらの方角に向かったようで、ほかのグループは、近場のお寺通りや、広尾方面に行ったそうです。
けんちく体操マンたちも外へと繰り出し、フランス大使館や天現寺、サッポロビールなど、クオリティの高い作品を作り上げていました。

私たちは女性が多いグループだったので、エレガンスを目指しましたが(笑)、男性グループや、男女ミックスグループはまた違う、それぞれの特徴を生かした作品を作り上げて、どちらも見甲斐がありました。
男女グループは、体格差がバラバラながらも、逆にそれを生かした作品を作り上げていました。
地下駐車場の模写には「着眼点が斬新だ」と博士もうなっていました。

男性グループは、アクロバティックな作品が目立ちました。
博士の微妙な修正で、見違えるように生き生きした仕上がりになっていく様子は、見ていて新鮮でした。

最後に8人グループ2つに分かれ、大ワザの名古屋城を作り上げました。
ここまで大人数になると、かなり迫力のあるものが表現できるようになります。
どちらのグループも甲乙つけがたいと、勝負は引き分けで終了しました。

チームけんちく体操は、これまでさまざまなワークショップを行ってきたそうですが、いつも室内のみで、受講者が実際に街へ出て体操を行うという試みは、今回が初めてだったそうです。
「いつも自分たちばかりで味わっていた、現場のライブ感(や疎外感?)を、共有できてうれしい」と語られていました。

わきあいあいのうちに終了した今回の授業。
最後には、みんなすっかり柔らかくなった身体でけんちくポーズをとり、集合写真を撮影しました。
パフォーマーとしてのシンパシーが生まれて、すっかりグループ同士で仲良くなり、皆さんなかなか立ち去り難かったようです。
帰り路では、(この建物はどうやったらそれっぽくなるかな)と考えながら歩くようになっていました。
とっても楽しかったです。これからもけんちく体操を、ひそかにユカイに続けていきたいです。


(ボランティアスタッフ:小野寺 理香)