シブヤ大学

授業レポート

2012/6/22 UP

人生を豊かにする働き方のヒント

梅雨真っ只中の6月の土曜日。
「これからの働き方」や「新しい働き方」……働き方に関する話題があちこちで絶えない中、千駄ヶ谷の社会教育館でも、「新しい働き方」へそっと背中を押してくれるような、今よりちょっと人生を豊かにする考え方のヒントのような授業が開かれました。
この授業には、定員の2倍以上の応募があるなど、「働き方」は今、多くの人にとって、とっても大切なテーマになっている気がします。

今回の授業の先生は、個人レベルで始められる、生活に密着した小さな仕事「ナリワイ」を複数つくり、仕事と生活の境界線を曖昧にした生き方を研究・実践・伝授している伊藤洋志さんです。

伊藤さんは、もともと会社員として働いましたが、1年ほど経った頃、体を壊して会社を辞めます。
「世の中の仕事を見ていると、ひとつの仕事だけで生きていくのは、とても大変で体を壊す原因にもなります。
もともと、ヒトは、生活にとても近いところで、生活に密着した仕事をしていました。けれども、この50年くらいで、生活と仕事は距離も内容も離れてしまうことが多くなったように感じます。
そこで、自分ひとりでも始められる、生活に密着した小さい仕事を5つくらいつくってみる。それを自分の『ナリワイ』にしていけば、無理のない働き方が出来ると思います。」

伊藤さんは、今、モンゴル武者修行ツアー、熊野のパン屋修行ワークショップ、群馬の廃校ウェディング、床張りや机作り等のDIYサポート、京都の一棟貸し宿、など様々な「ナリワイ」を持っています。

「これをどれかひとつだけに絞って仕事をするとなると、自分のやりたくないツアーやプランを企画したりしなければならないし、うまくいかなくなったりすれば、体を壊す原因にもなりかねます」
それぞれを自分の手が届く、ほどよい大きさで細く長くやっていくこと。これが、「ナリワイ」をつくるには大切なポイントとなるようです。

◎自分の「ナリワイ」をつくるキホン作戦!!(考え方編)
・自分の自給能力を上げる

衣食住などの固定費を下げ、そんなに稼がなくても生きている基盤をつくる日本は今や13%が空き家。田舎に行くと、安く借りられる家はたくさんありますよ!

支出をおもしろくカットする
おもしろくカットできたものは、「ナリワイ」につながります。

ひとつの仕事の単位は小さくする
専業バリバリでやるとつらくなるので注意!

・自分にとってちょうどよいサイズの仕事をつくる。
小額の元手で個人で始められ、自分の生活を充実させられる内容がベスト。

プロはたいしたことない!(・・・かもしれない)
プロに頼むまでもないけれど、ちょっと上手な人、得意な人がいたら頼みたいと思われる仕事は世の中にたくさんあります。自分が得意で好きなことならば、「ナリワイ」になる可能性はたくさんあります。

専業の歪みにアタック
専業でやっている会社には出来ないことを探しましょう。世の中、意外とパッ
ケージされすぎて使いにくいものが多いです。その歪んだ部分に対し、自分が
おもしろい解決策やアイデアを持っていたら、それは自分の「ナリワイ」にな
ります。

・まわりの人のチカラを結びつけ、価値にする
自分の周りの人がそれぞれできること、得意としていることを知ることで、何
かをカタチにしていく際、「この人とこの人を呼べばできる!」という状態をつくりやすくなります。また、自分にも、周りにも「ナリワイ」をつくるきっかけになります。

「ナリワイ」のつくりかた・探しかた(実践編)
けれども、伊藤さんのように「ナリワイ」をつくるにはどうしたら良いのでしょうか。授業の後半は、「ナリワイ」づくりの実践に移ります。
参加者は、5班に分かれ、「ナリワイ」のつくり方を体験しました。
今回は、宿題としてそれぞれが持参した「身の回りでつまらないな、おかしいな、改善したいなと思うこと」を出し合いました。
その課題から解決策を検討し、班ごとに“課題解決策”=「ナリワイ」の種を掘り下げ、発表しました。

その解決策を考える際に以下の整理方法を行いました。
→ナリワイの名前は?
→ナリワイの内容は?
→そのナリワイにはどういう価値・意味がある?
→ナリワイの対象者は?(来なくても良い人は除く努力も必要。本当に喜んでくれる人にホームランを打つことを考えることが大切。)
→値段は?

<各班のナリワイ>
・おしゃべり工房(みんなが話をしながら仕事が出来る場所と、そこで出来たものを売れる場をつくる)
・ONE DAY 社長室(オフィスビルを借り切って、コワーキングスペースのような場をつくる)
・メトロ大学(先生と生徒をマッチングし、駅や電車の移動時間を利用して授業ができるサービスをつくる)
・じゃない家(空き家に不要になった家具を集め、入居者が身軽に入居できるような仕組みをつくる)
・投げ銭上映会(ミニシアター系の映画をもっと身近に見られる機会をつくる)

◎まとめ
・自分に出来ることは意外とたくさんある!
今までお金を払ってやっていたことの中で「こうだったらいいのに!」と思うことを探し、楽しく出来そうなことはお金をかけずに自分で少しずつやってみる。
「これ、いけるかも」と思ったら、すぐに身近な人に提供してみる。
その過程で、いろいろなケースを考えて修正を重ねていくと、自分の「ナリワイ」ができあがってくる。
そうすることで、今までバラバラになっていた仕事と生活は少しずつ曖昧になり、仕事が自分のものになっていく。

伊藤さんのように、たくさんの「ナリワイ」をつくり、それだけで生きていけたらとっても素敵ですが、会社で働きながらでも、自分の「ナリワイ」をひとつ持てれば、人生がより豊かになる、そんなヒントをもらえた授業でした。
あなたは、何を「ナリワイ」にしますか?

(ボランティアスタッフ:伊藤恵梨)